著者
柴田(田上) 明日香 西田 真寿美 浅井 さおり 沼本 教子 原 祥子 中根 薫
出版者
一般社団法人 日本老年看護学会
雑誌
老年看護学 (ISSN:13469665)
巻号頁・発行日
vol.7, no.2, pp.116-126, 2003-03-15 (Released:2017-08-01)
参考文献数
18
被引用文献数
12

本研究は施設ケアの実践を担う看護職・介護職における連携・協働に関する問題認識の異同を比較検討し,その課題を明らかにすることを目的とした.介護療養型医療施設,介護老人保健施設,特別養護老人ホームに所属する看護職,介護職の別に6名ずつの4グループを構成し,グループインタビューを実施した.その結果,各職種の認識は情報の伝達方向,業務分担,個人の職業意識の内容に分類された.(1)情報の伝達方向:看護職は介護職による情報の質と内容に個人差があることを指摘し,介護職は看護職には本音が言えないという相違があった.(2)業務分担:指示・命令型は明確な分業体制が意識されている反面,職種間の階層性に伴う不満もあった.相互・調整型はスタッフの力量とケアの質を基準として,柔軟に調整され円滑であった.独立・分業型は両職種ともに業務の責任範囲が不明瞭であるという認識であった.(3)個人の職業意識:介護職は看護職に個人的な親しみを求め,看護職は介護職に職業的成長を求めていた.管理職の方針が連携活動に強く影響するという認識は共通していた.
著者
沼本 教子 原 祥子 浅井 さおり 柴田 明日香
出版者
一般社団法人 日本老年看護学会
雑誌
老年看護学 (ISSN:13469665)
巻号頁・発行日
vol.9, no.1, pp.54-64, 2004
参考文献数
20

本研究は,高齢者が看護者からの支援を受けて「自分史」を記述することにより,どのような心理社会的発達を経験していくのかを明らかにし,老年期における心理社会的健康を維持していくための看護援助として,自分史の記述を支援する意義について検討することを目的とする.有料老人ホームに入居している協力の得られた65歳以上の4名の高齢者を対象に著者の考案した「自分史プログラム」を実施し,その介入前後で得られたインタビューデータと日本語版E.H.エリクソン発達課題達成尺度および日本版GHQ28を用いて,プログラム開始前と終了後の変化を検討した.プログラム介入前後の発達課題達成度,GHQ28でみた心理社会的健康状態はどちらも改善傾向を示していた.また,プログラムの面談を利用しながら人生の軌跡を振り返り記述することによって,終了後「重要他者の存在」に気づく,夫の死の悲嘆を克服し「人生のまとめ」を考え始める,家族に対する「赦(ゆる)す感情」を見出す,生きる限り「挑戦する」など,それぞれがこれまでの人生を再評価し,新しい人生の目標を見出しており,自分史を記述することの効果があったことを示唆していると考えられた.
著者
原 祥子 沼本 教子
出版者
日本老年看護学会
雑誌
老年看護学 : 日本老年看護学会誌 : journal of Japan Academy of Gerontological Nursing (ISSN:13469665)
巻号頁・発行日
vol.8, no.2, pp.35-43, 2004-03-15
参考文献数
27
被引用文献数
6

本研究の目的は,老いを生きる人が自己のライフストーリーをどのように語るのかを記述し,過去の体験と残された人生にどのように意味づけをしていくのかを明らかにすることである.対象は介護老人保健施設を利用している79歳の女性で,3回の非構造化面接を通じてデータ収集し,得られたデータは量的・質的な内容分析を行った.語られたライフストーリーについては,そのアウトラインを提示し,要約を記述した.そのライフストーリーは,他者との関係性のストーリーを語るという女性の発達の様相を呈し,残された人生に対しても,人とのつながりを通して自己の存在に意味づけをしていくことが示されていた.ライフストーリーの語られ方に関する分析結果では,過去の各人生時期の語りにかけられた時間には密度の濃淡があることや,ライフストーリーにおける空自の時間の存在が確認され,聞き手が空白の時間をも共有しながら聞くことの重要性が示唆された.
著者
原 祥子 小野 光美 沼本 教子 井下 訓見 河本 久美子
出版者
日本老年看護学会
雑誌
老年看護学 : 日本老年看護学会誌 : journal of Japan Academy of Gerontological Nursing (ISSN:13469665)
巻号頁・発行日
vol.11, no.1, pp.21-29, 2006-11-01
被引用文献数
2

本研究の目的は,介護老人保健施設における高齢者のライフストーリーをケアスタッフが聴き取ることを通して,ケアスタッフの高齢者およびケアに対する認識がどのように変化するのかを明らかにすることである.対象は,受け持ち高齢者とライフストーリー面談を実施したケアスタッフ8名で,非指示的インタビューによってデータ収集し,ケアスタッフの変化をあらわしている特徴的な発言内容をカテゴリー化し,カテゴリー間の関係性を検討した.ケアスタッフの変化は6つのカテゴリーに分類され, 《その人がよくわかる》ことによって,《その人への関心が高まる》という変化が生じていた.ライフストーリーを聴くという関係性が成立した体験はケアスタッフの《自信が深まる》という変化をもたらし,ケアが《丁寧な関わりになる》と認識され,《他の高齢者に対する認識が変わる》ことにもつながっていた.ライフストーリー面談を通して《関わることの楽しさ・喜びを実感する》ことは,これらの変化を生み出す基盤になっていると考えられた.
著者
中田 康夫 沼本 教子 片山 恵 片山 京子 吉永 喜久恵 中島 美繪子
出版者
日本老年看護学会
雑誌
老年看護学 : 日本老年看護学会誌 : journal of Japan Academy of Gerontological Nursing (ISSN:13469665)
巻号頁・発行日
vol.4, no.1, pp.120-128, 1999-11-01
参考文献数
10
被引用文献数
1

本研究は,仮設住宅入居2年後の住民の健康および生活実態を,青壮年期(20〜54歳),向老期(55〜64歳)および老年期(65歳以上)の3つの年齢層別に比較・検討し,特に老年看護の視点から,向老期の住民にどのような看護上の問題があるのかを明らかにすることを目的とした.神戸市中央区の仮設住宅住民のうち調査の同意を得られた301名を対象に実態調査を実施した.その結果,向老期の人々は老年期および青壮年期の人々より,病気がある人(p<0.001),飲酒をする人(p<0.001),喫煙をする人(p<0.001),食事のバランスが悪い人(p<0.05),経済状態が悪い人(p<0.01),暮らし向きの悪い人(p<0.05)の割合が有意に多かった.このことから,向老期の人々は老年期の人々より身体的な健康問題と生活上の問題を多く抱えていることが明らかとなった.以上のことより,大規模災害後の長期的な支援においては,老年期の人々はもちろん,向老期の人々の健康状態にも注意を払っていくことが必要であることが示唆された.