著者
紙谷 博子 梅垣 宏行 岡本 和士 神田 茂 浅井 真嗣 下島 卓弥 野村 秀樹 服部 文子 木股 貴哉 鈴木 裕介 大島 浩子 葛谷 雅文
出版者
一般社団法人 日本老年医学会
雑誌
日本老年医学会雑誌 (ISSN:03009173)
巻号頁・発行日
vol.55, no.1, pp.98-105, 2018-01-25 (Released:2018-03-05)
参考文献数
22
被引用文献数
1 2

目的:認知症患者のQOL(quality of life)について,本人による評価と介護者による代理評価との一致に関する研究はあるが,在宅療養患者のためのQOL評価票をもちいて検討したものはない.本研究の目的は,主介護者などの代理人に回答を求めるQOL評価票の作成と,本人の回答との一致性について検討することとした.方法:この研究は在宅患者の観察研究である.我々が開発した,4つの質問からなるQOL評価票であるQOL-HC(QOL for patients receiving home-based medical care)(本人用)に基づいて,QOL-HC(介護者用)を作成した.また,QOL-HC(本人用)とQOL-HC(介護者用)を用いて,患者本人と主介護者から回答を求め,それぞれの質問への回答の一致率についてクロス集計表を用いて考察した.また,合計得点についてはSpearmanの順位相関係数を求めた.結果:質問1「おだやかな気持ちで過ごしていますか.」,質問2「現在まで充実した人生だった,と感じていますか.」,質問3「話し相手になる人がいますか.」,質問4「介護に関するサービスに満足していますか.」について,本人と介護者の回答の一致率は,それぞれ52.3%,52.3%,79.5%,81.8%であった.また,QOL-HC(本人用)合計点とQOL-HC(介護者用)合計点について有意な弱い相関を認めた(Spearmanのρ=0.364*,p=0.015).結論:本人と介護者による評価とに50%以上の一致率をみとめ,合計点について有意な相関をみとめた.介護者による評価を参考にできる可能性はあるが,評価のかい離の要因およびQOL-HC(介護者用)の信頼性の検討が必要である.