著者
佐々木 隆一郎 SUKUMURAN M. GAJALAKSHMI シー.ケイ CHANDRASEKAR アルナ KRISHNAMURTH エス SHANTA V. 岡本 和士 小川 浩 伊藤 宜則 横井 豊治 松山 睦司 M S Sukumura R Swaminatha ARUNA Chandr S Krishnamur V Shanta
出版者
愛知医科大学
雑誌
国際学術研究
巻号頁・発行日
1992

南インド(マドラス)には、宗教上の理由から肉を食しない菜食主義者が多い。癌登録資料からみたこの地域における乳癌の年齢調整罹患率は人口10万対20.8と、日本と同程度(大阪19.7)である。これは、乳癌の発生要因のひとつとして肉食が考えられているが、肉食以外の乳がんの発生要因を追究するには格好の地といえる。また、研究対象地域のマドラスでの癌研究は、WHOの技術援助を得て完成した癌登録を有するCancer Instituteが中心に行っており、疫学的な研究を行う基盤が整っていた。以上の理由により、1992年7月から、南インド・マドラスにおいて、菜食主義者での乳癌の患者対照研究を行った。患者は、1992年7月以降Cancer Instituteで新たに診断された乳癌患者である。対照は健康対照として病院に入院している患者の家族の中からから性、年齢を一致させた者1人、病院対照としてCancer Instituteを受診した他の部位のがん患者から性、年齢を一致させた者1人を選び、患者対照200セット(600人)を集め、検討した。検討した項目は、問診項目(社会経済状態、生殖歴、栄養素摂取量、心理要因など)、体格(身長、体重)、血清情報(ホルモンレベル、脂質類、ビタミン類など)などの項目である。1993年12月24日現在までに、面接によっての情報収集、体格情報の収集が終了したのは、乳癌患者200人、病院対照200人(乳癌、子宮癌、卵巣癌、甲状腺癌以外の癌)、健康対照200人についてである。個人についての栄養素摂取量の算出、全ての情報の計算機への入力を行った。現在までに心理面の解析から、健康対照に比べ、乳癌患者と病院対照(癌患者)は、ストレスの多いLife event、抑欝的な状態におかれていることなどが伺われた。さらに、病院対照に比べ、乳癌患者はよりこれらの傾向が強いことが示唆された。本研究では、ホルモンレベルの測定のために黄体期に採血を行っているが、上記の対象者の内採血が終了した者は、乳癌患者200人、病院対照200人、健康対照75人であった。初期の予想に反し、健康対照についての採血が困難を極めたので、今回は血液成分のうち、健康対照のホルモンレベルについての検討を断念することとした。血清についての解析からは、健康対照75人についての検討では、マドラスでのβカロテンのレベルは日本よりは低い傾向があること、レチノールのレベルはやや低いがほぼ同程度であることが示唆されている。また、乳癌患者と病院対照のホルモンレベルを比較すると、前者ではエストロゲンE1 75.7pg/ml、エストロゲンE2 42.3pg/ml、エストロゲンE3 2.1pg/ml、後者ではエストロゲンE1 59.4pg/ml、エストロゲンE2 13.3pg/ml、エストロゲンE3 1.2pg/mlであった。また、乳癌患者(197人)についてEIAキット(Trion Diagnostics Inc.)を用いてc-erbB-2蛋白陽性率を測定したが、20U/ml以上を陽性とすると、陽性率は約28%であった。現在、上記の成果をもとに、各研究担当者が業績のまとめを行っている。
著者
紙谷 博子 梅垣 宏行 岡本 和士 神田 茂 浅井 真嗣 下島 卓弥 野村 秀樹 服部 文子 木股 貴哉 鈴木 裕介 大島 浩子 葛谷 雅文
出版者
一般社団法人 日本老年医学会
雑誌
日本老年医学会雑誌 (ISSN:03009173)
巻号頁・発行日
vol.55, no.1, pp.98-105, 2018-01-25 (Released:2018-03-05)
参考文献数
22
被引用文献数
1 2

目的:認知症患者のQOL(quality of life)について,本人による評価と介護者による代理評価との一致に関する研究はあるが,在宅療養患者のためのQOL評価票をもちいて検討したものはない.本研究の目的は,主介護者などの代理人に回答を求めるQOL評価票の作成と,本人の回答との一致性について検討することとした.方法:この研究は在宅患者の観察研究である.我々が開発した,4つの質問からなるQOL評価票であるQOL-HC(QOL for patients receiving home-based medical care)(本人用)に基づいて,QOL-HC(介護者用)を作成した.また,QOL-HC(本人用)とQOL-HC(介護者用)を用いて,患者本人と主介護者から回答を求め,それぞれの質問への回答の一致率についてクロス集計表を用いて考察した.また,合計得点についてはSpearmanの順位相関係数を求めた.結果:質問1「おだやかな気持ちで過ごしていますか.」,質問2「現在まで充実した人生だった,と感じていますか.」,質問3「話し相手になる人がいますか.」,質問4「介護に関するサービスに満足していますか.」について,本人と介護者の回答の一致率は,それぞれ52.3%,52.3%,79.5%,81.8%であった.また,QOL-HC(本人用)合計点とQOL-HC(介護者用)合計点について有意な弱い相関を認めた(Spearmanのρ=0.364*,p=0.015).結論:本人と介護者による評価とに50%以上の一致率をみとめ,合計点について有意な相関をみとめた.介護者による評価を参考にできる可能性はあるが,評価のかい離の要因およびQOL-HC(介護者用)の信頼性の検討が必要である.
著者
岡本 和士 柳生 聖子 大野 和子 岡本 伸夫 高橋 玲 大塚 亨 前田 清 斎藤 征夫 加藤 孝之
出版者
The Japanese Society for Hygiene
雑誌
日本衛生学雑誌 (ISSN:00215082)
巻号頁・発行日
vol.43, no.5, pp.1028-1035, 1988-12-15 (Released:2009-02-17)
参考文献数
39

We examined the relationship of body fat distribution to lipid metabolism in 50 obese women who participated in a weight reduction program.Body fat distribution was assessed by measurement of the waist-to-hip size ratio (WHR), minimal waist size and maximal hip size measured in a standing position.Obese women were separated into two subgroups by WHR; predominantly upper- or lower-body-segment obesity (UBSO or LBSO).After adjusting for ideal body weight, we found significantly high correlations with WHR (r=0.82, p<0.01), serum total cholesterol, serum triglyceride, VLDL and ApoB, which were significantly higher in UBSO; while HDL-ch and ApoA-1 were significantly lower in UBSO than LBSO.However, in UBSO, serum triglyceride and A. I. were significantly decreased; and HDL-ch was significantly increased after weight reduction.In conclusion, we suggested that the site of fat predominance offers a better diagnostic or prognostic marker for lipid metabolism abnormality than the degree of obesity alone.
著者
斎藤 征夫 柳生 聖子 服部 泰子 大野 和子 岡本 伸夫 高橋 玲 大塚 匠子 大塚 亨 前田 清 岡本 和士 加藤 孝之
出版者
日本衛生学会
雑誌
日本衛生学雑誌 (ISSN:00215082)
巻号頁・発行日
vol.44, no.5, pp.953-961, 1989-12-15 (Released:2009-02-17)
参考文献数
26
被引用文献数
4 8

We investigated the condition of the liver in a total of 5486 subjects (3889 males and 1597 females) who received adult-disease screening examinations.The following results were obtained.1. Fatty liver was found in 13.9% of the males and 3.8% of the females with a male/female ratio of about 3.7 to 1. In males, the prevalence of fatty liver was lower in those in their 20's than in any other age ranks, while there was little difference in the age range from the 30's to the 50's. In females, the prevalence sharply increased in those in their 50's.2. The percentage of fatty liver increased with the obesity index in both males and females.3. With respect to alcohol drinking, the prevalence of fatty liver was not affected by the presence or absence of alcohol drinking, the daily drinking quantity and total drinking quantity.4. Of those screened for adult disease, 14.7% of the males and 2.7% of the females had abnormal liver function, with a male/female ratio of about 5.4 to 1. In both males and females, the prevalence of fatty liver was higher in those who had abnormal rather than normal liver function.
著者
岡本 和士 大野 良之
出版者
一般社団法人 日本老年医学会
雑誌
日本老年医学会雑誌 (ISSN:03009173)
巻号頁・発行日
vol.31, no.8, pp.604-609, 1994-08-25 (Released:2009-11-24)
参考文献数
9

痴呆の発症リスク要因を明らかにするため, 愛知県M町でコーホート内症例対照研究を実施した. 症例群は昭和54・55年に実施した高齢者総合健康調査の受診者のうち, 平成5年4月時点に痴呆と同定された19名である. 対照群は性・年齢 (±1年以内), 居住地域を対応させ症例1名に対し2名を上記総合健康調査受診者から無作為に選定した. オッズ比による検討の結果, 13~14年前の身体的精神的状況および生活習慣と, 痴呆発症との関連は以下のようであった.1. 痴呆発症リスク有意上昇要因は, 手指の使いにくさ, 入れ歯使用, 日頃話す機会が少ない, 暇な時間が多い, 友達が少ない,「29-17」の減算不可である.2. 痴呆発症リスク上昇傾向要因は片側手足麻痺あるいは首・肩こりの場合である.3. 痴呆発症リスク有意低下要因は運動習慣ありである.4. 喫煙習慣と睡眠薬常用は比較的大きなオッズ比であったが, 痴呆発症と有意に関連していない.5. 今回の分析で得られた7つの有意なリスク上昇要因 (「手指の使いにくさ」「入れ歯の使用」「日頃話す機会が少ない」「暇な時間が多い」「友達が少ない」『「29-17」の減算不可』「運動習慣なし」) の保有数が多くなるにつれて, 痴呆発症よリスクは明らかに上昇すると考えられた.
著者
鈴木 洋子 星野 純子 堀 容子 長澤 伸江 前川 厚子 近藤 高明 榊原 久孝 岡本 和士
出版者
特定非営利活動法人 日本栄養改善学会
雑誌
栄養学雑誌 (ISSN:00215147)
巻号頁・発行日
vol.67, no.4, pp.168-177, 2009 (Released:2011-05-26)
参考文献数
22

We investigated the relationship between the caregiver's meal and their fatigue by an analysis with a semi-quantitative food frequency questionnaire completed by the main caregiver. The 90 caregivers were 25 men and 65 women aged 20–80 years. They took care of patients at home who required more than level 3 care or who suffered from cognitive dysfunction. Adjusted for sex and age, neither the intake of grain nor of fish and meat, which were the main food groups in respective grain meals and fish and meat meals, was significantly correlated with the caregiver's perception of fatigue. On the other hand, the correlation between caregiver's fatigue and the intake of bean and seaweed food groups was significant (p < 0.05) or non-significant (p < 0.1). Elucidation of the most appropriate type of food for the principal meal will be necessary to minimize the perception of fatigue by the caregiver.