著者
宮崎 育子 村上 真樹 菊岡 亮 磯岡 奈未 北村 佳久 浅沼 幹人
出版者
日本毒性学会
雑誌
日本毒性学会学術年会 第44回日本毒性学会学術年会
巻号頁・発行日
pp.P-225, 2017 (Released:2018-03-29)

農薬ロテノンやパラコートへの曝露がパーキンソン病発症率を高めることが報告され,これらの農薬はパーキンソン病発症に関与しうる環境要因として注目されている.ロテノン慢性曝露は中枢神経系,末梢消化管神経系にパーキンソン病様の病態をもたらすことから,モデル作製に用いられている.これまでに,農薬ロテノンを慢性皮下投与したパーキンソン病モデルマウスにおける中枢(黒質線条体,嗅球)・末梢(上行結腸)神経障害とアストロサイト(様細胞)活性化の部位特異性・時間依存性について報告した.今回,初代培養細胞を用いてロテノン誘発ドパミン神経障害におけるアストロサイトの関与について検討した.妊娠15日齢の胎仔中脳からの神経細胞単独培養あるいは神経細胞+アストロサイト共培養にロテノンを添加した.中脳神経細胞単独培養ではロテノン添加によるドパミン神経毒性は認められなかったが,中脳神経細胞+アストロサイト共培養ではチロシン水酸化酵素陽性ドパミン神経細胞数が有意に減少した.また,あらかじめロテノンで処置したアストロサイトの培養液を中脳神経細胞単独培養に添加したところ,ドパミン神経障害が惹起された.以上の結果より,ロテノンにより惹起される中脳ドパミン神経障害は非細胞自律性の障害であり,アストロサイトが関与することが示唆された.
著者
宮崎 育子 磯岡 奈未 和田 晃一 菊岡 亮 北村 佳久 浅沼 幹人
出版者
公益社団法人 日本薬理学会
雑誌
日本薬理学会年会要旨集 第92回日本薬理学会年会 (ISSN:24354953)
巻号頁・発行日
pp.2-P-050, 2019 (Released:2020-03-20)

Epidemiological studies showed that daily drinking coffee or teas decreases the risk of Parkinson's disease (PD) to 40-50%. Caffeic acid (CA) and chlorogenic acid (CGA) are coffee ingredients and exert antioxidative properties. Exposure to pesticides, such as rotenone, is an environmental factor that plays an important role in the pathogenesis of PD. In this study, we examined neuroprotective effects of CA and CGA against rotenone-induced neurodegeneration. Chronic subcutaneous injection of rotenone into C57BL/6J mice exhibited reduction of dopaminergic neurons in the substantia nigra and beta-tubulin III-positive neurons in the intestinal myenteric plexus. Daily oral administrations of CA or CGA inhibited rotenone-induced cell death of not only nigral dopaminergic neurons but also myenteric plexus. In addition, CA or CGA significantly increased expression of antioxidative molecule metallothionein in the striatal astrocytes. In coculture of neurons and astrocytes from the mesencephalon or intestine, CA and CGA inhibited rotenone-induced neuronal loss of mesencephalic dopaminergic and enteric neurons, respectively. These results suggest that daily intake of coffee ingredients prevents or delays the onset of PD.
著者
宮崎 育子 菊岡 亮 磯岡 奈未 中山 恵利香 進 浩太郎 山本 大地 Kyle E. QUIN 船越 英丸 禅正 和真 浅沼 幹人
出版者
日本毒性学会
雑誌
日本毒性学会学術年会 第45回日本毒性学会学術年会
巻号頁・発行日
pp.P-150, 2018 (Released:2018-08-10)

エポキシ樹脂Bisphenol A diglycidyl ether(BADGE)は缶詰,飲料缶の内面コーティング剤として用いられているが,微量の食品中への移行ならびにエストロゲン活性が報告されている.今回,母体へのBADGE曝露による新生仔脳への影響の有無を明らかにするために,欧州食品安全機構が発がん性がなく安全としたBADGE一日許容摂取量(TDI 0.15 mg/kg/日)およびその10倍量を,マウスの妊娠全期から授乳期にわたり固形食餌に混ぜて投与し,新生仔マウス(1日齢)の大脳皮質層構造および神経分化への影響について検討した.妊娠・授乳期の母体へのTDIの10倍用量のBADGE曝露により,1日齢新生仔マウス脳の頭頂皮質において第2/3層の著明な細胞数低下がみられ,また,錐体細胞のマーカーであるCtip2陽性シグナルが対照群と比べより第5層に限局していた.さらに,ラット初代培養大脳皮質神経細胞へのBADGE(1-100 pM)の2日間曝露により,濃度依存的な神経突起の著明な伸長が認められた.以上の結果より,妊娠・授乳期における高濃度のBADGEへの曝露は,早期の神経分化をもたらす可能性が示唆された.
著者
宮崎 育子 浅沼 幹人 中村 一文
出版者
岡山大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2010

農薬でミトコンドリアComplex I阻害剤であるロテノンを慢性皮下投与したラットを用いた検討により,ロテノン神経毒性は中枢よりも末梢神経の方が脆弱であること,また中枢神経系と同様に,腸管神経叢周囲にもGFAP陽性アストログリアが存在し,ロテノン神経障害発現に伴って,GFAP陽性アストログリアの活性化が惹起されることを明らかにした.初代培養細胞を用いた検討により,ロテノン神経毒性発現にはアストログリアが関与しており,とくに中枢神経系においては,ロテノン曝露により中脳アストログリアから特異的に分泌される何らかの因子がドパミン神経障害を惹起すること,さらに抗酸化分子メタロチオネインがこのドパミン神経障害を阻止しうる分子であることを見出した.
著者
浅沼 幹人 宮崎 育子
出版者
岡山大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2009

アストログリアでのグルタチオンおよびメタロチオネインの発現誘導およびその放出が,ドパミン神経特異的酸化ストレスであるドパミンキノンによるドパミン神経障害に対する抗酸化機構として重要であるであることを明らかにできた.神経・グリア培養系およびパーキンソン病モデルマウスを用いた検討により,セロトニンアゴニストがアストログリアの増殖誘導ならびにドパミンキノンセンサー分子賦活を介したドパミン神経保護作用を併せ持ったパーキンソン病治療薬となり得る可能性を示すことができた.