著者
浅田 隆
出版者
奈良大学
雑誌
奈良大学紀要 (ISSN:03892204)
巻号頁・発行日
no.2, pp.1-19, 1973-12

輝く星! 見なさい。青い水底の静寂の中で。仰げ。瞬く鈴蘭、おお、無限大の宇宙の。(第二連・四行略)聞きなさい、心の耳を傾けて。幽玄な星の囁き―神秘な。青白い沈黙。ゾッとする冷気の厳粛。おお、超自然!!(「秋の夜の星」)
著者
浅田 隆
出版者
奈良大学
雑誌
奈良大学紀要 (ISSN:03892204)
巻号頁・発行日
no.10, pp.p60-70, 1981-12

遠藤周作は「ストレート・ボールを投げる投手が立派な投手で、ナックル・ボールを投げる投手はだめだとはだれも思わない。ユーモア文学は人間や人生の真実をナックル・ボールで語ろうとする文学」(「ユーモア文学のすすめ」『朝日新聞』'64 ・7 ・7)だと言う。しかしこの『おバカさん』には、変化球が変化しそこなってワイルド・ピッチになったような部分もないわけではない。例えば作中の時間の流れはかなりずさんで、「三月中旬頃」に、届いた手紙を読みながら「四月一日まで、まだ二、三日はあるし」とつぶやいてみたり、半月前の出来ごとを「一か月前」と回想させてもいる。時間に関するミスばかりでなく、「水の中に落ち」たはずのピストルを「ぬれた地面の上」から拾い上げさせてもいる。こうしたミスは連載(『朝日新聞』'59 ・3 ・26~8 ・15)時に頻出し、後に中央公論社から出版('59 ・10)した折補正されたようだが、それでも辻褄が合っていない。これは、この作品が作者にとって最初の新聞小説だったこともあり、また作中の時間と執筆中の現実の時間とが混乱してしまったためとも考えられる。
著者
浅田 隆
出版者
奈良大学
雑誌
奈良大学紀要 (ISSN:03892204)
巻号頁・発行日
no.34, pp.1-40, 2006-03

一九二〇年代後半(大正末期)から一九九九年に逝去されるまで、奈良地方新聞の新聞人として奈良についての貴重な証言を書き続けた北村信昭氏の蔵書と遺品を、ご遺族のご好意で奈良大学図書館に、ご寄贈いただいた。この遺品の中に大正末から昭和期にかけての『大和日報』二〇四日分や松村又一の詩誌『雲』があり、ここに北園克衛(署名はすべて本名の橋本健吉となっている)の初期作品が掲載されている。また『大和日報』文芸担当者としての北村氏に宛てた北園の書簡や詩稿なども遺品中にある。ここでは、これら北村信昭氏の遺品中から確認できた北園克衛の作品(書簡も含め)詩二六(三〇)篇、評論・短篇小説等散文三篇、書簡五、詩稿一、『大和日報』文芸欄用カット五点ならびに北園のカットが三点掲載されている日の文芸欄(一日分)を一括して紹介した。