著者
城下 貴司 福林 徹 加藤 仁志 浅野 信博 大橋 俊介 山家 佳那子
出版者
JAPANESE PHYSICAL THERAPY ASSOCIATION
雑誌
日本理学療法学術大会
巻号頁・発行日
vol.2010, pp.CcOF1071-CcOF1071, 2011

【目的】<BR> 著者は、第42回理学療法学術大会にてアキレス腱周囲炎、第43回理学療法学術大会では有痛性外脛骨に対して各々著者が考案した足趾エクササイズの臨床研究を紹介した。<BR> 本研究では、上述の足趾エクササイズを表面筋電図で解析し足趾機能を生体力学的に考察することを目的とする。<BR><BR>【方法】<BR> 機材は小型データロガシステムpicoFA-DL-2000(4アシスト)とFA-DL-140ディスポ電極を使用しサンプリング周波数は1kHz、5~500Hzの周波数を抽出、時定数0.03secとした。<BR> 対象は、特に足趾や足関節運動をしても問題のない健常者19名,25足,年齢25.72±7.2歳とした。被験者には端坐位姿勢、大腿遠位端に3kgの重錘を乗せ趾頭で踵を挙上させるように底屈エクサイサイズ(等尺性収縮約5秒間)おこなった。膝や股関節の代償運動抑制ために、被験者の体幹やや前傾、頭部は膝の直上に位置させた。<BR> 実験項目は、全趾による底屈エクササイズ、母趾による底屈エクササイズ、2から5による底屈エクササイズ、そして3から5による底屈エクササイズである。<BR> 電極は腓骨小頭直下の長腓骨筋、内果やや後上方脛骨内側後面に走行している内がえし筋群、腓腹筋内側頭筋腹、腓腹筋外側頭筋腹の4カ所に貼付した。<BR>データ解析は、定常状態と思われる等尺性収縮5秒間の内2秒間の筋電積分値(IEMG)を採用した。全趾による底屈エクササイズのIEMGをベースラインとして他の条件を正規化(%IEMG)した。エクサイサイズ別に各筋出力比較にANOVA、同一被験者同一筋の比較にRepeated ANOVA、および生データでも比較した。<BR><BR>【説明と同意】<BR> すべての被験者に対して研究の主旨と内容について記載のある実験説明書を予め配布し実験説明をした後、同意書に著名を頂いてから行った。<BR><BR>【結果】<BR> 母趾底屈エクササイズでは、長腓骨筋が141%,内がえし筋群が103%、腓腹筋外側頭が102%,内側頭は96%であり、統計上も有意に長腓骨筋が他の筋よりも高い値を示した(n=25,p=0.001,0.19,0.001 <0.05)。<BR> 2-5趾の底屈エクササイズでは、長腓骨筋が68.2%<BR>内がえし筋群が120%、外側頭は90%、内側頭94.9%を示し、統計上内がえし筋群が長腓骨筋、腓腹筋内側頭よりも有意に高い値を示した(n=25,p=0.0001, 0.03 <0.05)。<BR> 3-5底屈エクササイズでは、長腓骨筋が58%、内がえし筋群が121%、腓腹筋外側頭が78% 内側頭は91 .8%であった。統計上も内がえし筋群が長腓骨筋と腓腹筋内側頭に対して有意に高い値を示した(n=25,p=0.001,0.001<0.05)。<BR> しかしながら同一被験者、同一筋の比較では長腓骨筋が母趾エクササイズにて2から5趾3から5趾底屈エクササイズよりも有意に高い値を示した(n=25,p=0.001,0.001<0.05)のみで、その他の筋は有意な差は示さなかった。<BR><BR>【考察】<BR> 本研究は筆者が考案した足趾エクササイズを表面筋電図で解析したものである。<BR> 腓腹筋内側頭および外側頭は、内側頭の方がやや高い値を示しただけであり、どのエクササイズでも明らかな違いを示さなかった。足趾運動は後方の筋よりも内外果を走行している前方の筋群であることを示唆した。<BR> 著者の先行研究で、アキレス腱周囲炎、有痛性外脛骨の症例に対して、2から5趾、3から5趾の底屈エクササイズは有効的であったが母趾のエクサイサイズは有効的ではなかったことを報告した。<BR> 母趾エクササイズは回外筋である長母趾屈筋の作用は明らかであるにもかからず、上記の疾患で有効性を示さなかったことに疑問があった。<BR> 本研究の結果から母趾エクササイズでは外がえし筋群が優位であり先行研究の現象が長母趾屈筋だけでなく長腓骨筋が作用していることがわかった。<BR>2から5趾および3から5趾底屈エクササイズでは母趾エクササイズとは対照的で、内がえし筋群が優位であったことから著者の臨床研究の根拠を示せたと考えている。<BR> しかしながら同一筋で比較したとき、長腓骨筋ではエクササイズごとに有意な差を認めたが、内がえし筋群では有意な差を認めなかった。本研究の内がえし筋群の電極は後脛骨筋、長趾屈筋、長母趾屈筋が混在しているために、エクササイズごとに明確な変化を示さなかったと考えている。<BR><BR>【理学療法学研究としての意義】<BR> 本研究から、足趾の評価治療は、全趾を評価するのでなく足趾ごと評価治療することの必要性と、著者が考案した足趾エクササイズの臨床的有効性のみだけでなく、バイオメカニカルな視点からの根拠を示唆した。