著者
志岐 幸子 福林 徹
出版者
日本トランスパーソナル心理学/精神医学会
雑誌
トランスパーソナル心理学/精神医学 (ISSN:13454501)
巻号頁・発行日
vol.13, no.1, pp.114-130, 2013 (Released:2019-08-07)

本研究の目的は、スポーツをする人々が幸福を感じ る「ゾーンにおける感性的体験」について、一つの見 解を提示することである。まず、マーフィーとホワイ トによるゾーンの特性、チクセントミハイのフローの 特性、志岐と福林らによる感性的体験の特性の照合を 行った。 次に、日本国内もしくは世界トップレベルの19名の アスリートや指導者を対象としてゾーンと感性につい てのインタビュー調査を実施し、「オーラ」という人間 のエネルギーの場の観点から検討した。 その結果、「ゾーンにおける感性的体験」はチクセン トミハイの提唱するフローの一部であること、「ゾーン における感性的体験」は、視覚では認識できない超感 覚的知覚で感知するオーラに関わる体験であることが 示唆された。さらに、「ゾーンにおける感性的体験」の 特性は30に分類された。
著者
櫻井 敬晋 笹木 正悟 久保 慶東 福林 徹
出版者
東京有明医療大学
雑誌
東京有明医療大学雑誌 = Journal of Tokyo Ariake University of Medical and Health Sciences (ISSN:21863067)
巻号頁・発行日
vol.2, pp.7-12, 2011-03-31

要旨 : 前十字靭帯(ACL)再建術後のリハビリテーションには長期間を要することが周知される一方,競技復帰に向けて加速化が図られている.最近では回復度合いや競技レベルなどに応じたリハビリテーションが一般的になってきている.しかしながら,術後に内側広筋を中心とした筋萎縮の発症について多くの報告があり,この防止が ACL 再建術後のリハビリテーションの検討課題のひとつである.筋萎縮の要因として,再建靭帯の生体への適合までの期間は,再断裂リスクなどの観点から,膝関節に対するリハビリテーションに限界があることが挙げられる.そこで今回,低周波電気刺激を用い,ACL 再建術後の筋機能低下に対する新たなリハビリテーションメニューの構築を目的とし,拮抗筋電気刺激による遠心性収縮を伴う運動連鎖筋力増強法を ACL 再建術後のアスレティックリハビリテーションに応用し,その効果を検討した.その結果,通常のアスレティックリハビリテーションに比べ,本法を用いた場合に筋トルク,神経筋協調性,筋体積の回復に効果的な結果が得られた.このことから,本法は ACL再建術後のリハビリテーション法として有効であると示唆された.
著者
城下 貴司 福林 徹 加藤 仁志 浅野 信博 大橋 俊介 山家 佳那子
出版者
JAPANESE PHYSICAL THERAPY ASSOCIATION
雑誌
日本理学療法学術大会
巻号頁・発行日
vol.2010, pp.CcOF1071-CcOF1071, 2011

【目的】<BR> 著者は、第42回理学療法学術大会にてアキレス腱周囲炎、第43回理学療法学術大会では有痛性外脛骨に対して各々著者が考案した足趾エクササイズの臨床研究を紹介した。<BR> 本研究では、上述の足趾エクササイズを表面筋電図で解析し足趾機能を生体力学的に考察することを目的とする。<BR><BR>【方法】<BR> 機材は小型データロガシステムpicoFA-DL-2000(4アシスト)とFA-DL-140ディスポ電極を使用しサンプリング周波数は1kHz、5~500Hzの周波数を抽出、時定数0.03secとした。<BR> 対象は、特に足趾や足関節運動をしても問題のない健常者19名,25足,年齢25.72±7.2歳とした。被験者には端坐位姿勢、大腿遠位端に3kgの重錘を乗せ趾頭で踵を挙上させるように底屈エクサイサイズ(等尺性収縮約5秒間)おこなった。膝や股関節の代償運動抑制ために、被験者の体幹やや前傾、頭部は膝の直上に位置させた。<BR> 実験項目は、全趾による底屈エクササイズ、母趾による底屈エクササイズ、2から5による底屈エクササイズ、そして3から5による底屈エクササイズである。<BR> 電極は腓骨小頭直下の長腓骨筋、内果やや後上方脛骨内側後面に走行している内がえし筋群、腓腹筋内側頭筋腹、腓腹筋外側頭筋腹の4カ所に貼付した。<BR>データ解析は、定常状態と思われる等尺性収縮5秒間の内2秒間の筋電積分値(IEMG)を採用した。全趾による底屈エクササイズのIEMGをベースラインとして他の条件を正規化(%IEMG)した。エクサイサイズ別に各筋出力比較にANOVA、同一被験者同一筋の比較にRepeated ANOVA、および生データでも比較した。<BR><BR>【説明と同意】<BR> すべての被験者に対して研究の主旨と内容について記載のある実験説明書を予め配布し実験説明をした後、同意書に著名を頂いてから行った。<BR><BR>【結果】<BR> 母趾底屈エクササイズでは、長腓骨筋が141%,内がえし筋群が103%、腓腹筋外側頭が102%,内側頭は96%であり、統計上も有意に長腓骨筋が他の筋よりも高い値を示した(n=25,p=0.001,0.19,0.001 <0.05)。<BR> 2-5趾の底屈エクササイズでは、長腓骨筋が68.2%<BR>内がえし筋群が120%、外側頭は90%、内側頭94.9%を示し、統計上内がえし筋群が長腓骨筋、腓腹筋内側頭よりも有意に高い値を示した(n=25,p=0.0001, 0.03 <0.05)。<BR> 3-5底屈エクササイズでは、長腓骨筋が58%、内がえし筋群が121%、腓腹筋外側頭が78% 内側頭は91 .8%であった。統計上も内がえし筋群が長腓骨筋と腓腹筋内側頭に対して有意に高い値を示した(n=25,p=0.001,0.001<0.05)。<BR> しかしながら同一被験者、同一筋の比較では長腓骨筋が母趾エクササイズにて2から5趾3から5趾底屈エクササイズよりも有意に高い値を示した(n=25,p=0.001,0.001<0.05)のみで、その他の筋は有意な差は示さなかった。<BR><BR>【考察】<BR> 本研究は筆者が考案した足趾エクササイズを表面筋電図で解析したものである。<BR> 腓腹筋内側頭および外側頭は、内側頭の方がやや高い値を示しただけであり、どのエクササイズでも明らかな違いを示さなかった。足趾運動は後方の筋よりも内外果を走行している前方の筋群であることを示唆した。<BR> 著者の先行研究で、アキレス腱周囲炎、有痛性外脛骨の症例に対して、2から5趾、3から5趾の底屈エクササイズは有効的であったが母趾のエクサイサイズは有効的ではなかったことを報告した。<BR> 母趾エクササイズは回外筋である長母趾屈筋の作用は明らかであるにもかからず、上記の疾患で有効性を示さなかったことに疑問があった。<BR> 本研究の結果から母趾エクササイズでは外がえし筋群が優位であり先行研究の現象が長母趾屈筋だけでなく長腓骨筋が作用していることがわかった。<BR>2から5趾および3から5趾底屈エクササイズでは母趾エクササイズとは対照的で、内がえし筋群が優位であったことから著者の臨床研究の根拠を示せたと考えている。<BR> しかしながら同一筋で比較したとき、長腓骨筋ではエクササイズごとに有意な差を認めたが、内がえし筋群では有意な差を認めなかった。本研究の内がえし筋群の電極は後脛骨筋、長趾屈筋、長母趾屈筋が混在しているために、エクササイズごとに明確な変化を示さなかったと考えている。<BR><BR>【理学療法学研究としての意義】<BR> 本研究から、足趾の評価治療は、全趾を評価するのでなく足趾ごと評価治療することの必要性と、著者が考案した足趾エクササイズの臨床的有効性のみだけでなく、バイオメカニカルな視点からの根拠を示唆した。
著者
城下 貴司 福林 徹
出版者
理学療法科学学会
雑誌
理学療法科学 (ISSN:13411667)
巻号頁・発行日
vol.27, no.4, pp.397-400, 2012 (Released:2012-09-07)
参考文献数
22

〔目的〕足趾機能は重要とされているが未知な部分も多い.我々は足趾機能の臨床研究や筋電図解析を行ってきた.しかしながら足趾機能と足内側縦アーチ(MLA)の関係はわかっていない.本研究の目的は足趾エクササイズとMLAの関係を検討することである.〔対象〕健常者20名,20足,平均年齢22.5±3.6歳とした.〔方法〕被験者にはタオルギャザリングエクササイズ(TGE)と3種類の足趾エクササイズ(母趾底屈エクササイズ,2から5趾底屈エクササイズ,3から5趾底屈エクササイズ)をランダムに行い,各々の足趾エクササイズ前後にNavicular Drop (ND)を計測し比較した.〔結果〕介入前NDは4.34 mmであった,TGE後NDは4.94 mmで有意差を示さなかったが,母趾底屈エクササイズ後NDは5.25 mmで有意に低下した.2から5趾底屈エクササイズ後NDは3.07 mm,3から5趾底屈エクササイズ後NDは3.32 mmとなり各々有意にNDは低下しなかった.〔結語〕母趾底屈エクササイズはMLAを低下させた.TGEは特に変化を示さなかった.しかしながらその変化は母趾底屈エクササイズに類似した.一方で2から5趾底屈エクササイズ,3から5趾底屈エクササイズはMLAを高くする効果を示しMLAとの関係性を示した.
著者
宮西 智久 宮永 豊 福林 徹 馬見塚 尚孝 藤井 範久 阿江 通良 功力 靖雄 岡田 守彦
出版者
The Japanese Society of Physical Fitness and Sports Medicine
雑誌
体力科学 (ISSN:0039906X)
巻号頁・発行日
vol.48, no.5, pp.583-595, 1999-10-01 (Released:2010-09-30)
参考文献数
36
被引用文献数
2 3

This study was designed to clarify the causes of throwing injuries of the elbow and shoulder joints in baseball. Five varsity-skilled baseball players without pain in the elbow and shoulder joints were subjects for this study. They were fixed to a chair and asked to throw a baseball using three different throwing arm movements (T0, T45, and T90) . These movements were filmed using three-dimensional DLT videography. Linked rigid-body segment inverse dynamics were then employed to determine resultant joint force and torque at the elbow and shoulder joints. Peak varus torque at the elbow joint for T90 was less than for the other movements during the acceleration phase. In the follow-through phase, however, a large anterior shear force (70 N) at the elbow, for elbow extension, was present for T90. These results indicate that T90 was a high risk movement which leads to extension injuries rather than medial tension injuries. After the ball release, a large superior shear force (118 N) at the shoulder joint was present in all movements. This superior force may result from the subacromial impingement syndrome, except for critical zones of impingement caused by the different throwing arm movements. These findings suggest that the mechanisms of throwing arm injuries are closely related to differences in throwing arm movements.
著者
福林 徹 鳥居 俊 柳沢 修 倉持 梨恵子 井田 博史 奥脇 透 赤居 正美 赤居 正美
出版者
早稲田大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2006

膝前十字靱帯損傷のメカニズム解明, およびその予防法の構築を行った. メカニズムの解明においては, Point Cluster法を用いた三次元動作解析法により着地動作や切り返し動作を計測し, こうした動作時の脛骨の内旋および膝外反の強制が,そのメカニズムに関連していると考えられた.予防法については,バスケットボール,サッカー,スキー,テニスの各競技において外傷予防プログラムを作成し,各団体において普及,推進を行った.また,その効果検証を行った.
著者
河野 一郎 秋本 崇之 赤間 高雄 河野 一郎 福林 徹
出版者
筑波大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2001

簡易型SIgA測定キットの開発本年度はまず市販のSIgA特異的なモノクローナル抗体を用いて,比濁法による測定を行ったが,おそらく抗体自体の力価のあるいは抗体のエピトープの問題により良好な測定系を構築できなかった.そこで,比濁法に適応可能なモノクローナル抗体の作製を試みた.現在,クローンを選別しているところであり,本補助期間にはキットの開発までにはいたらなかった.しかし,キットの開発に必要となる基礎的なデータは得ることができ,今後の展開に利するところは大と考えられた.SIgAレベルと感染症の関係昨年度,2ヶ月に渡って30名の被験者から唾液を採取し,SIgAと上気道感染症の関係を調査し,SIgAの低下と,上気道感染症の発現に一定の関係があることを見出した.本研究成果は臨床スポーツ医学に掲載された.また,高強度トレーニング(試合期)のSIgAの変化と,心理的・肉体的ストレスに関する成果についてまとめ,論文としてアメリカスポーツ医学会の機関紙(Med Sci Sports Exerci)に掲載された.本研究の結果,SIgAと上気道感染症罹患リスクには一定の関係があることが明らかとなり,今後SIgAを上気道感染症リスク把握の手段として応用することが可能であることが本研究の結果により示されたと考える.また,SIgAの測定は非侵襲的であり,その応用範囲は大と考えられた.本研究の成果により論文発表5件(国内誌3件,国際誌2件),学会発表7件を公表することができ,基礎研究としては十分な研究成果が得られたと考える.
著者
福林 徹 宇川 康二 新津 守 阿武 泉
出版者
筑波大学
雑誌
一般研究(C)
巻号頁・発行日
1993

2種類の前十字靱帯再建例に対してその筋萎縮とリハビリテーションによる回復過程をMRIを用いて検討した。1.腸脛靱帯を用いて関節内外2重再建を行い術後1年を経たスポーツ選手10名の検査結果では健側と比較して大腿四頭筋の体積は平均97%、大腿屈筋の体積は102%と膝伸筋に萎縮が見られた。大腿四頭筋の中でも内側広筋は健側の92%と最も萎縮が強く以下中間広筋、外側広筋、大腿直筋の順であった。また靱帯再建のため腸脛靱帯を採取したことにより大腿四頭筋全体に外旋傾向が見られた。外旋は外側広筋に一番強くまた末梢に行くほど増加し、平均として健側に比較し40%程度増加していた。CYBEXによる筋力測定では60deg/sec、180deg/secとも10〜15%程膝伸展筋筋力は健側より劣っていたが、屈筋筋力に差はなかった。MRIにより等尺性筋収縮時と筋弛緩時を比較すると筋収縮時は大腿四頭筋の外旋傾向は減少していた。2.半腱様筋腱と薄筋腱を用いて前十字靱帯の再建を行い1年以上経た33例では、大腿の外旋傾向は見られなかったものの、やはり内側広筋や中間広筋を中心として5〜9%程度の筋萎縮があった。靱帯再建のため採取した薄筋と半腱様筋はまだ正常な筋力ボリュームの60%と71%を維持しておりTagging Snapshotにて筋肉収縮が確認された。半膜様筋と大腿二頭筋のわずかな肥大が半数に観察された。薄筋腱と半腱様筋腱の再生は見られなかった。大腿筋群のこれらの形態変化は、膝関節伸展と屈曲のピークトルクと軽度の相関があった。