著者
浜崎 景
出版者
公益社団法人 日本油化学会
雑誌
オレオサイエンス (ISSN:13458949)
巻号頁・発行日
vol.22, no.7, pp.337-341, 2022 (Released:2022-07-07)
参考文献数
39

WHOの報告によると,世界の60歳以上の年齢層の20%以上が精神・神経疾患を患っており,最も一般的な精神・神経疾患は認知症とうつ病で,それぞれ世界の高齢者人口の約5%と7%が罹患しているとされている1)。若年層のうつ病との大きな違いは,心疾患,脳血管障害,認知症などと関連している点で2),診断や治療が遅れる可能性があり,場合によっては見落とされ,治療されないこともある。やはり生活習慣改善による一次予防が重要である。栄養学的なアプローチもここ20年ほどの間に多く報告されるようになってきたが,その中でも有望視されているのが,魚介類とその有効成分のω3系多価不飽和脂肪酸(以下ω3)である。観察研究を統合したメタ解析の結果ではリスク低減と関連しており3,4),また,介入研究のメタ解析結果からも軽減効果が認められている5)。本稿では高齢者を対象とした魚介類とω3とうつとの関連を,自験例も含めてそのメカニズムとともに解説したいと思う。
著者
屋敷 香奈 浜崎 景 稲寺 秀邦
出版者
富山大学医学会
雑誌
Toyama medical journal (ISSN:21892466)
巻号頁・発行日
vol.30, no.1, pp.10-13, 2020-03

大学の実験室で使用する試薬やガス等の化学物質には,ヒトの健康への有害性や火災・爆発の危険性を有するもの,環境を破壊するものが数多く含まれる。化学物質を安全かつ適切に取り扱うためには,個々の化学物質の特性に加え,法規制を理解する必要がある。本稿では労働安全衛生法や毒物及び劇物取締法などの大学の実験室で特に注意を払うべき化学物質規制の国内法令についてその目的と要求事項を中心に解説する。またラベル表示,安全データシート(Safety Data Sheet:SDS)による個々の化学物質の危険有害性や取扱注意事項,適用法令等の確認方法を記載する。最後に各研究室での試薬・ガスボンベの管理に有用だと思われる富山大学薬品管理支援システム(TULIP)について紹介する。 Many of the chemical substances used in university laboratories, such as reagents and gases, are potential fire and explosive hazards and are harmful to human health and the environment. To handle chemical substances safely and appropriately, it is necessary to understand the laws and regulations governing their use as well as the individual characteristics of chemical substances. In this article, we explain Japanese laws and regulations, such as the Industrial Safety and Health Law and the Poisonous and Deleterious Substances Control Law, which must be followed when working with chemical substances in university laboratories. We also explain how to check for hazards, handle precautions, and follow applicable laws on chemical substances based on the information on labels and safety data sheets. We then introduce the Toyama University Lab. chemicals InPut System (TULIP), which is considered effective for the proper management of reagents and gas cylinders in laboratories.
著者
浜崎 景 浜崎 智仁 稲寺 秀邦
出版者
日本静脈経腸栄養学会
雑誌
静脈経腸栄養 (ISSN:13444980)
巻号頁・発行日
vol.28, no.4, pp.967-971, 2013 (Released:2013-08-23)
参考文献数
33

気分障害(うつ病・双極性障害)の患者数が統計上明らかに増えており、90年代には40万人程度であったのが、現在では優に100万人を超えている。様々な要因が言われているが、我々はひょっとして食事の変化すなわち多価不飽和脂肪酸のω6:ω3比のアンバランスも関与しているのではないかと考えている。というのも、今までの様々な疫学調査や臨床試験の報告より、ω3系多価不飽和脂肪酸(以下ω3)が気分障害に関与していることがわかってきたからである。今のところ精神疾患の中でも特にうつ病に対して効果がありそうだが、本稿ではこの分野に関する海外からの疫学調査や臨床試験の報告を紹介したいと思う。
著者
浜崎 景 浜崎 智仁 稲寺 秀邦
出版者
一般社団法人 日本心身医学会
雑誌
心身医学 (ISSN:03850307)
巻号頁・発行日
vol.54, no.9, pp.842-848, 2014-09-01 (Released:2017-08-01)

ω3系多価不飽和脂肪酸(以下,ω3)は,1970年頃から心筋梗塞などの動脈硬化症に対する予防効果を期待され,さまざまな疫学調査や臨床試験が行われてきた.それ以降ω3に関する論文数は右肩上がりに増加しており(Fig.1),1980年頃より精神疾患に関する疫学調査が報告され,2000年頃から精神疾患患者を対象とした臨床試験が多く行われるようになってきた.これまでのメタ解析の結果をみると,精神疾患の中でも特にうつ病に効果がみられることが示唆されている.現在では日本での気分障害の患者は100万人を超えていると推測されており,ω3が栄養学的な観点から治療の一助になる可能性もある.本稿ではわれわれが得た知見を紹介するとともに,この分野に関する海外からの疫学調査や臨床試験の報告を紹介する.