- 著者
-
稲寺 秀邦
- 出版者
- 一般社団法人 日本アレルギー学会
- 雑誌
- アレルギー (ISSN:00214884)
- 巻号頁・発行日
- vol.54, no.5, pp.451-454, 2005-05-30 (Released:2017-02-10)
- 参考文献数
- 30
環境ホルモン(内分泌撹乱物質)とは, 動物の生体内に取り込まれた場合, 生体内で営まれている正常なホルモン作用に影響を与える外因性物質の総称である. その定義は, 「生体の恒常性, 生殖, 発生, あるいは行動に関与する種々の生体内ホルモンの合成, 貯蔵, 分泌, 体内輸送, 結合, ホルモン作用そのもの, あるいはクリアランス, などの諸過程を阻害する性質を持つ外来性の物質」とされている. 環境ホルモンの野生生物に対する影響として, 魚類のメス化, メスの巻貝類のペニスの異常な発育(インポセックス), ワニのペニスの萎縮等の事例が報告されている. 一方, ヒトに対する健康影響として, 精子の数や質への影響, 乳がんの増加, 子宮内膜症との関連等が推測されている. 環境ホルモンの多くは女性ホルモンであるエストロゲンの類似作用を示すものが多く, これらの化学物質は環境エストロゲンと呼ばれている. 本稿では, はじめに環境ホルモンの作用機構について述べ, 次に免疫アレルギー疾患との関連について考察する.