著者
小林 悟子 関根 正
出版者
埼玉県立大学
雑誌
埼玉県立大学紀要 (ISSN:13458582)
巻号頁・発行日
vol.8, pp.113-118, 2006

【目的】援助される者と援助する者がとらえるよい援助関係について比較検討し、精神科看護におけるよい援助関係について考察すること。【方法】援助する者である精神科看護師を対象に「どういうときによい援助関係が築けたと感じるか」という視点の調査結果を基に、援助される者である2名の元患者へインタビューを行った。【結果】援助する者の調査結果と援助される者の結果の比較検討から、よい援助関係の捉え方には、共通項とずれが存在している事と看護師の構えを強く感じていることが明らかになった。【考察】ずれの存在という点と援助される者が援助する者に対して構えがあると指摘している2点から、精神科看護におけるよい援助関係のあり方について考察を行った。ずれの存在を認め、その手段としてゆとりある柔軟な態度が必要と考えられた。看護師の構えを緩める方法として、援助する者が決めつけない自然な関わりをし、当事者に会うことが重要であると考えられた。
著者
中田 晴彦 小林 悟 平山 結加里 境 泰史
出版者
公益社団法人 日本水産学会
雑誌
日本水産学会誌 (ISSN:00215392)
巻号頁・発行日
vol.70, no.4, pp.555-566, 2004 (Released:2005-06-03)
参考文献数
34
被引用文献数
2 2

近年, 有明海では漁獲量の減少, 赤潮の発生, 養殖ノリの色落ちなど水産資源をめぐる問題が顕在化しており, その要因の一つに化学汚染による生態系への影響が疑われている。そこで, 有明海の貝類を対象に有機塩素化合物, 多環芳香族炭化水素, 有機スズ化合物の汚染調査を行った結果, 一部の河川において顕著な汚染源の存在が明らかとなった。巻貝の生殖器異常が高い頻度で観察され, 船底塗料由来のトリブチルスズによる影響が示唆された。
著者
水田 孝信 小林 悟 加藤徳史
雑誌
情報処理学会研究報告数理モデル化と問題解決(MPS)
巻号頁・発行日
vol.2008, no.41(2008-MPS-069), pp.35-38, 2008-05-09

株価予測モデルにおける過剰適合について調べた。定量的分析を行うために、中間層が 1 層のニューラルネットワークを用いて中間層の数と汎化誤差の関係を調べた。その結果、中間層が多すぎると汎化誤差が上昇し、過剰適合が発生することが分かった。この現象は、株価予測モデルが “複雑すぎる” ために予測能力が低下することが起こりうることを示している。また、学習させるファクターが異なる 2 つのモデルの予測リターンを比べた結果、適切な学習を行ったときに最も予測が似てしまうことが分かった。
著者
小林 悟志 藤山 秋佐夫
出版者
国立研究開発法人 科学技術振興機構
雑誌
情報管理 (ISSN:00217298)
巻号頁・発行日
vol.49, no.6, pp.324-333, 2006 (Released:2006-09-01)
参考文献数
9

正しい情報を提供し,正確な理解を求めることは科学コミュニケーションの基本であり,常に意識しておくべき重要な課題である。日本語バイオポータルサイトJabion(ジャビオン)は,一般社会と専門家との間にとどまらず,専門家同士の相互理解の架け橋となることも目指して構築運用しているWebサイトである。このサイトは,一般向けには専門用語の解説および科学ニュース等を分かりやすく説明したコラムや科学教育サイトに関する情報を提供するとともに,専門家向けには最新の研究情報,日本語での利用が可能な文献検索やゲノム情報等を提供している(http://www.bioportal.jp/)。
著者
小林 悟
出版者
筑波大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2012-04-01

本研究は、生殖細胞系列の性決定機構を解明することを目的としている。これまでに、始原生殖細胞中において細胞自律的にメス化を誘導できるSxlに制御される候補遺伝子を同定するとともに、始原生殖細胞の性差に依存して発現する遺伝子の網羅的な同定、中胚葉を持たない原始的な動物であるヒドラにおいて、生殖幹細胞の性差に依存して発現する遺伝子の網羅的な同定を行うことに成功した。以上の成果は、生殖細胞系列における普遍的な性決定機構を明らかにする上での基盤となる。
著者
小林 悟志
出版者
植生学会
雑誌
植生学会誌 (ISSN:13422448)
巻号頁・発行日
vol.25, no.1, pp.51-61, 2008
参考文献数
33
被引用文献数
2

&nbsp;&nbsp;1. 本研究は,南九州の30地域について,葉の表皮組織の違いによる判別をもとに,ツブラジイとスダジイおよび雑種の分布を明らかにすることを目的とした.<BR>&nbsp;&nbsp;2. 従来から行われてきた葉の表皮組織によるシイ類の判別法では,葉の任意の位置で観察されており,スダジイとツブラジイおよび雑種の判別を誤る可能性がある.本研究では,葉の横断面の全体が顕微鏡観察できる位置で観察領域を設定し,葉の表皮組織による判別をより正確なものにした.<BR>&nbsp;&nbsp;3. 南九州におけるシイ類の垂直分布は,海岸部では全標高域にわたってスダジイが卓越していた.一方,内陸部では,比較的標高の低い地域はツブラジイであるが,標高が高くなるにしたがいスダジイの分布する割合が高くなり,山頂や尾根沿いにはスダジイのみが分布していた.<BR>&nbsp;&nbsp;4. 内陸部の久木野では,スダジイは山頂から尾根部に多く,標高が低くなるにつれて個体数が少なくなる傾向が認められた.一方,ツブラジイは調査区域内のより標高の低い地域に多く,標高が高くなるにつれてその個体数が少なくなる傾向が認められた.また,雑種個体は標高の高低によって分布が偏る傾向は認められず,ツブラジイとスダジイの両種が混生している標高域に多く分布していた.<BR>&nbsp;&nbsp;5. 海岸部と内陸部の2地域で行った雑種個体における葉の表皮組織の1層と2層の割合は,周辺に分布するツブラジイとスダジイの分布状況を反映しており,両種の交雑によるF_1形成,ツブラジイまたはスダジイと雑種との戻し交雑,雑種同士の交雑等,分布域によって異なる交雑様式が進行していると考えられた.<BR>&nbsp;&nbsp;6. 堅果の形態は,採集場所ごとに異なっていたが,その形態は葉の表皮組織で判別した両種の母樹の分布状況を反映していた.
著者
武田 英明 南 佳孝 加藤 文彦 大向 一輝 新井 紀子 神保 宇嗣 伊藤 元己 小林 悟志 川本 祥子
出版者
人工知能学会
雑誌
人工知能学会全国大会論文集 (ISSN:13479881)
巻号頁・発行日
vol.26, 2012

本発表では筆者らが現在進めている生物種に関連するデータをLinked OpenData化する試みについて紹介する。生物種の情報は生物多様性問題や環境問題において重要であるが、様々な分野に関わるため、相互にうまくリンクする仕組みが必要である。このためにはLinked OpenDataの方法が有効と考えて現在基盤システムを構築している。この構築にあっての課題や現状について説明を行う。
著者
太田 成男 小林 悟 武藤 あきら 渡辺 公綱 渡辺 嘉典 岡田 典弘
出版者
日本医科大学
雑誌
特定領域研究(A)
巻号頁・発行日
1997

ミトコンドリアtRNA病の発症機序の分子機構解明とそれを基礎とした治療法の開発が行われた。太田と渡辺公綱は共同で、ミトコンドリア病の原因である変異ミトコンドリアtRNAを精製し、修飾塩基を含む構造解析をし、ミトコンドリア病のふたつの病型(MELASとMERRF)の原因の3種類の変異ミトコンドリアtRNA(tRNA-LysとtRNA-Leu(UUR))では共通にアンチコドンの塩基修飾が欠損していることを明らかにした。さらに、渡辺はこの塩基の修飾にはタウリンが結合していることを明らかにした。すなわち、3つの変異tRNAには共通にアンチコドンにタウリンが結合していない。この塩基修飾の欠損によって、mRNAのコドンへの親和性が低下してミトコンドリア内の蛋白合成が停止することによって発症することを明らかにした。変異tRNAの構造解析、機能解析を基礎として疾患の治療法の基礎が開発されたので、一連の研究の社会的意義はきわめて大きい。小林はミトコンドリアrRNAが生殖細胞の形成に普遍的に必要であること、生殖細胞形成期の細胞ではミトコンドリアrRNAを含むミトコンドリア型(原核細胞型)のリボソームが形成されていることを明らかにした。この研究によって、ミトコンドリア型の翻訳系が生殖細胞の形成に必要であるという独創的な概念を提出した。この概念は、類する研究がないほど新しい分野をきりひらいたという意味で極めて重要である。渡辺嘉典は減数分裂に必要なRNAであるmeiRNAの機能を明らかにした。すなわち、meiRNA結合蛋白が核と細胞質をシャトルさせるためにRNAが必要であるという新しい概念を打ち立て、証明した。武藤はmRNAとtRNAの双方として機能するmtRNAの役割ドメインを決定し、その分子機構を解明した。
著者
田中 実 小林 悟
出版者
基礎生物学研究所
雑誌
新学術領域研究(研究領域提案型)
巻号頁・発行日
2010-04-01

身体が作られる過程において、雌雄の決定(性決定)はまず体細胞で行われる。この影響を受けて生殖細胞は卵になるか精子になる(生殖細胞の性決定)が、生殖細胞内でどのようなメカニズムによって性が決まるかは不明であった。本研究の結果、遺伝的制御の基盤が明らかとなり、身体の性決定前から生殖細胞にはY染色体依存的な性差があることが明らかとなった。さらに最終的に卵か精子になるスイッチ遺伝子の同定に成功し、スイッチを切り替えると、卵巣内で機能的な精子が作られる。また適切な性分化のためには、内分泌制御によってゲノムワイドにエピゲノム状態が影響されることが必要で、その制御が乱れると性転換が生じるとの知見が得られた。
著者
小林 悟
出版者
岩手大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2008

米国カリフォルニア大学サンタバーバラ校(UCSB)の協力の下、中性子照射済み原子炉圧力容器鋼材の磁気計測を実施し、中性子照射脆化と磁気的物理量の相関データベースの構築を進めた。磁気マイナーループ法に基づく実験データ解析結果から、磁気的物理量において、降伏応力変化と同様な照射条件依存性が観測された一方、二つの異なる磁気特性変化メカニズム(銅リッチ析出物形成、応力緩和)を考慮したモデル解析から、磁気特性の脆化寄与成分と降伏応力変化量の間に正の比例関係が見つかった。以上の結果は、磁気的物理量の計測により、銅リッチ析出物形成による照射硬化の評価が可能であることを示している。
著者
越後谷 淳一 菊池 弘昭 鎌田 康寛 小林 悟 村上 武
出版者
岩手大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2008

中性子照射材・模擬材について,動的磁気特性を計測し,ナノ欠陥と磁壁挙動との関係について考察を行うとともに,照射析出による溶質元素の濃度変化評価を目的としたモデル化と定量的解析を行った.また,ローレンツ電子顕微鏡や磁気光学カー効果顕微鏡により,照射モデル材・シミュレーション照射材の格子欠陥と磁壁とのミクロレベルでの相互作用挙動を調べ,欠陥と磁壁とのダイナミックスを解明するとともに,マクロ領域における照射損傷組織と磁壁との相互作用について検討した.