著者
水野 進 谷口 保 浜田 憲一
出版者
神戸大学
雑誌
神戸大学農学部研究報告 (ISSN:04522370)
巻号頁・発行日
vol.10, no.2, pp.165-170, 1972

1968,1969および1971年, 林系温州を使用し, 温州ミカンの成熟期を呼吸現象より追求し, これにもとづき, 1971年低温貯蔵(2℃)にたいする採収適期を果実の外観ならびに品質などから検討した。1.成熟期に関して。果実の着色期(1968年は11月13日, 1969年は11月20日, 1971年は11月18日)より呼吸の上昇が認められ, その後ほぼ安定した呼吸率を示すが, 12月下旬より多少低下の傾向であった。また内容成分は呼吸上昇2∿3週間後に充実していた。したがって呼吸上昇時より2∿3週間後が温州ミカンの完熟期と考えられる。また20℃下で各採取期時の果実(1971)のエチレン発生をともなった呼吸の上昇は, 完熟期採取果が最もおそく, この時期より遠ざかる採取時期果ほどはやくなった。2.低温貯蔵(2℃)と熟期との関係。1971年11月18日(成熟始め), 12月7日(完熟)および12月20日(老化始め)に採収した果実の低温貯蔵性(1972年6月8日まで)を貯蔵終了時および出庫8日目に, 果実の状態ならびに品質よりみると, 貯蔵終了時商品価値の最も高いのは12月7日採収果であり, ついで12月20日採収果であった。この傾向は出庫8日目においてもまったく同じであった。すなわち, 11月18日採収貯蔵果では腐敗果および低温障害果の発生が多く, また12月20日採収貯蔵果では萎凋果の発生が多かった。糖および酸の含有率は12月7日および12月20日の両採収果間では, 貯蔵終了時ならびに出庫8日目において大差なかった。以上より温州ミカンは着色期より呼吸の上昇が始まり, この時期を境に成熟過程に進み, その後2∿3週間で完熟する。また長期保存を目的とする低温貯蔵には完熟期の果実が最適と思われる。