著者
水野 進 谷口 保
出版者
THE JAPANESE SOCIETY FOR HORTICULTURAL SCIENCE
雑誌
園芸学会雑誌 (ISSN:00137626)
巻号頁・発行日
vol.41, no.2, pp.207-214, 1972 (Released:2007-07-05)
参考文献数
16
被引用文献数
1

11月27日の収穫果を, 関係湿度80~90%のもとで, 20°, 10°, 6°および2°Cの各温度において, 貯蔵中ならびに出庫後の呼吸, 成分の変化につき検討した.1. 腐敗は20°C, 60日(2月上旬), 10°, 6°C, 120日(4月上旬), 2°C, 160日(5月中旬) 頃より急激に増加する. また20°, 10°Cでは果皮の乾燥がはげしく, 腐敗病も6°C以下と異なり, 果軸周辺部に軸ぐされ病の現われるものが多かつた.2. 貯蔵中の呼吸量は, 低温ほど少なく, しかも入庫1日間 (20°Cでは3日間) に急減し, その後腐敗果の増加期まで一定していた.3. 6°C以下の低温では, ビタミンCの消耗が非常に少なく, ついで糖, 減少の多いのは酸であつた. また腐敗率の高い20°C, 81日, および10°C, 150日では健全果でも, ビタミンC量, 糖量も著しく減少していた.4. 2°Cに貯蔵した場合, 4月中旬より低温障害の兆候のある果実が目立ち, アルコール系揮発物質の発生とこれに伴うCO2発生量が増加した.5. 各温度より20°Cに移した場合, 7~12時間で呼吸上昇のピークに達し, また低温ほどピーク量は大であつたが, 86日程度の貯蔵であれば, 2°Cという低温でも3日後には呼吸量が正常に復していた. これに対し, 150日貯蔵の各区の呼吸量は, 出庫1日目に86日貯蔵の約2倍の高い呼吸量を示すとともに, その後減少を続けるのみであつた.6. 温度較差の高い, すなわち貯蔵温度が低いほど, 出庫後の果汁成分の消耗ははげしく, とくにビタミンC, 酸の減少は著しかつた.7. 果実温を徐々に上昇させるじゆん化を行なうと, 呼吸の急上昇を起こらず, 腐敗率, 果汁各成分の減少率とも小さかつた.
著者
水野 進 谷口 保 浜田 憲一
出版者
神戸大学
雑誌
神戸大学農学部研究報告 (ISSN:04522370)
巻号頁・発行日
vol.10, no.2, pp.165-170, 1972

1968,1969および1971年, 林系温州を使用し, 温州ミカンの成熟期を呼吸現象より追求し, これにもとづき, 1971年低温貯蔵(2℃)にたいする採収適期を果実の外観ならびに品質などから検討した。1.成熟期に関して。果実の着色期(1968年は11月13日, 1969年は11月20日, 1971年は11月18日)より呼吸の上昇が認められ, その後ほぼ安定した呼吸率を示すが, 12月下旬より多少低下の傾向であった。また内容成分は呼吸上昇2∿3週間後に充実していた。したがって呼吸上昇時より2∿3週間後が温州ミカンの完熟期と考えられる。また20℃下で各採取期時の果実(1971)のエチレン発生をともなった呼吸の上昇は, 完熟期採取果が最もおそく, この時期より遠ざかる採取時期果ほどはやくなった。2.低温貯蔵(2℃)と熟期との関係。1971年11月18日(成熟始め), 12月7日(完熟)および12月20日(老化始め)に採収した果実の低温貯蔵性(1972年6月8日まで)を貯蔵終了時および出庫8日目に, 果実の状態ならびに品質よりみると, 貯蔵終了時商品価値の最も高いのは12月7日採収果であり, ついで12月20日採収果であった。この傾向は出庫8日目においてもまったく同じであった。すなわち, 11月18日採収貯蔵果では腐敗果および低温障害果の発生が多く, また12月20日採収貯蔵果では萎凋果の発生が多かった。糖および酸の含有率は12月7日および12月20日の両採収果間では, 貯蔵終了時ならびに出庫8日目において大差なかった。以上より温州ミカンは着色期より呼吸の上昇が始まり, この時期を境に成熟過程に進み, その後2∿3週間で完熟する。また長期保存を目的とする低温貯蔵には完熟期の果実が最適と思われる。