著者
安本 潔 神代 龍吉 麻生 重仁 石井 邦英 村岡 晴雄 古寺 重喜 赤司 隆裕 古賀 郁利子 浜田 隆臣 鈴木 宏 上野 隆登 佐田 通夫 安倍 弘彦 谷川 久一
出版者
The Japanese Society of Gastroenterology
雑誌
日本消化機病學會雜誌. 乙 (ISSN:13497693)
巻号頁・発行日
vol.85, no.12, pp.2590-2595, 1988
被引用文献数
4

急性肝炎および劇症肝炎例において血清亜鉛値, 尿中亜鉛排泄量を測定し, 同疾患にみられる低亜鉛血症の機序について検討した. 対照とした健常人例の血清亜鉛値は, 84.0±12.2μg/dl (M±SD) で, 劇症肝炎例では46.0±16.0μg/dlと低値を示し, 有意 (p<0.001) な差がみられた. 急性肝炎例での急性期血清亜鉛値は74.8±12.0μg/dlで, 健常人例よりも低値であつた. 1日尿中亜鉛排泄量は健常人例0.4±0.14mg/日であり, 急性肝炎例1.2±0.5mg/日, 劇症肝炎例2.4±0.6mg/日と高値を呈し, 健常人例に比べ共に有意 (p<0.001) な差がみられた. 急性肝障害での血清亜鉛の低下の原因の一つに, 同疾患にみられる低アルブミン血症および高アミノ酸血症により, 亜鉛とアミノ酸との結合が多くなり, 尿中亜鉛排泄量の増加が関わるものと推察した.