著者
長尾 由実子 佐田 通夫
出版者
一般財団法人 日本消化器病学会
雑誌
日本消化器病学会雑誌 (ISSN:04466586)
巻号頁・発行日
vol.96, no.11, pp.1249-1257, 1999-11-05 (Released:2008-02-26)
参考文献数
62
被引用文献数
1

C型肝炎ウイルス(HCV)は,慢性肝障害や肝細胞癌の発生要因として極めて重要であると共に,最近では肝臓以外の臓器や組織にも障害を引きおこすことが知られるようになり,これらを総称して肝外病変と呼んでいる.HCVが関係する肝外病変は多彩であるが,その主な病態として,クリオグロブリン血症,膜性増殖性糸球体腎炎,晩発性皮膚ポルフィリン症,Sjögren症候群,慢性甲状腺炎,悪性リンパ腫,扁平苔癬などがあげられている.肝炎ウイルスの感染が関与した肝外病変の研究は,原因が解明されていない疾患の概念や治療法の確立に寄与するだけでなく,まだ不明な点の多い肝障害の病態を解明する突破口になる可能性がある.
著者
安陪 等思 淡河 喜雄 上野 隆登 堀田 まり子 林 明宏 吉田 一郎 早渕 尚文 佐田 通夫
出版者
日本医学教育学会
雑誌
医学教育 (ISSN:03869644)
巻号頁・発行日
vol.33, no.3, pp.193-199, 2002-06-25 (Released:2011-08-11)
参考文献数
9
被引用文献数
1

【目的】医師となる過程に医療人としての自覚を認識するための明確な通過儀式がなかったので, これを白衣授与式として行った. 学生に対するアンケート調査を元に評価したので報告する.【方法】臨床研修として患者に初めて直に接する直前の2001年1月11日に第4学年112人を対象に白衣授与式を行った. 白衣授与式は学長, 医学部長, 病院長の出席を得て, 臨床の場にこれから第一歩を踏み出す学生に白衣と顔写真付きの名札を授与し, 医師を目指す医学生としての心構えを新らたにする目的で行われた. 式の翌日にアンケート調査を行い, 学生の意識調査を行った. 調査項目は医療に携わる責任感, 患者さんへの優しさ, 愛校心, 白衣に対する愛着, プロフェッショナルとしての意識, 医師としての使命感, 勉学する意欲, 厳粛な気持ち, 倫理的・道徳的生活を実行する意欲の9項目である. また, 教職員, 学生の聞き取り調査を加えた.【結果】アンケート調査のすべての項目において意識の向上が認められた (P<.0001). 約8割の学生が来年も引き続き行うことに賛意を示した. 確立した儀式の様式がないことに多少の問題もあったが, 意義深い試みであったとの評価を得た. 一方, 進級の決定と異なった時期であったので違和感をもった学生が多かった.【結論】不慣れな点もあったが教職員, 医学生ともに意義深い通過儀式としておおむね肯定的な意見が得られた. 医師としての専門職意識を育成するひとつの方法として有効な手段であると思われた. 今後は効果の継続性の有無, 意義, 利点や欠点について教職員と学生を含めた検討, 考察を行い, バランス感覚の取れた通過儀式として修正を加えたい.
著者
斎藤 文彦 岡部 義信 菅 偉哉 渡邉 徹 有永 照子 内藤 嘉記 内田 信治 久下 亨 豊永 純 神代 正道 木下 壽文 鶴田 修 佐田 通夫
出版者
一般財団法人 日本消化器病学会
雑誌
日本消化器病学会雑誌 (ISSN:04466586)
巻号頁・発行日
vol.105, no.10, pp.1509-1514, 2008 (Released:2008-10-08)
参考文献数
17
被引用文献数
3

68歳男性.猪飼育,生食歴あり.糖尿病加療中に好酸球増多と膵体部腫瘍を認め当院紹介.膵腫瘍は画像所見とERP下膵管擦過細胞診で膵癌と診断.肝に多発小結節を認め生検で好酸球性肉芽腫だった.免疫血清学的検査で線虫類抗体が強陽性で内臓幼虫移行症の肝好酸球性肉芽腫を強く疑い,膵癌と幼虫移行症が偶発的に発症したと考え膵体尾部切除を行った.好酸球増多をともなう多発性肝腫瘍の診断には本疾患も念頭におき病歴聴取する必要がある.
著者
上野 隆登 吉田 一郎 犬塚 裕樹 堀田 まり子 鳥村 拓司 安陪 等思 香野 修介 林 明宏 渡邊 誠之 赤木 禎治 松尾 和彦 淡河 善雄 高城 喜典 宮崎 洋 佐田 通夫
出版者
日本医学教育学会
雑誌
医学教育 (ISSN:03869644)
巻号頁・発行日
vol.35, no.5, pp.303-308, 2004-10-25 (Released:2011-02-07)
参考文献数
8

医学部4年生の基本的臨床技能実習時に実施するOSCEと筆記試験, 5年生の臨床実習終了時に実施するOSCEと筆記試験, 6年生に実施する卒業試験を各1年ごとすべて受験した96名の医学部学生を対象に各学年次の成績に関する解析を行い, 卒業できた6年生と留年した学生間, および医師国家試験合格者と不合格者間の各年次における試験の合計点の平均値の比較検討, 卒業と国家試験への各学年試験成績の関連性の検討も行った. 各学年次試験成績は各学年間で有意な正の相関を示した. 卒業できた6年生と卒業できなかった学生間の各学年次試験成績の平均値は卒業生の方が卒業できなかった学生群に比較して有意に高い点数であった. また, 国家試験合格者群と不合格者群との各学年次試験成績の比較では, 各年次共に国家試験合格者群の方が高い点数であり, 6年次成績では有意差が見られた. これらの結果より, 医学部4年生に実施する基本的臨床技能実習と5年生の臨床実習が6年生の卒業試験成績に繋がり, ひいてはその成績が医師国家試験の結果に影響を及ぼすことが示唆された.
著者
岡村 修祐 酒井 輝文 吉貝 浩史 住江 博明 成田 高三郎 辛島 卓 前山 泰彦 檜垣 浩一 井出 達也 佐田 通夫
出版者
一般財団法人 日本消化器病学会
雑誌
日本消化器病学会雑誌 (ISSN:04466586)
巻号頁・発行日
vol.106, no.3, pp.411-417, 2009 (Released:2009-03-05)
参考文献数
19
被引用文献数
6

症例は61歳女性,脾摘術の既往あり.C型慢性肝炎に対するインターフェロン療法中に意識障害で救急搬送され,数時間で多臓器不全となり死亡.剖検·血液培養検査で肺炎球菌による敗血症と診断される.脾摘後劇症型感染症(OPSI)の1例と考えられ,インターフェロンが誘引となったと推測された.脾摘患者に免疫能低下をともなう治療を行う際は,感染症の重症化を常に念頭に入れ,また肺炎球菌ワクチン接種を検討することが望ましい.
著者
光山 慶一 増田 淳也 山崎 博 桑木 光太郎 北崎 滋彦 古賀 浩徳 内田 勝幸 佐田 通夫
出版者
公益財団法人 日本ビフィズス菌センター
雑誌
腸内細菌学雑誌 (ISSN:13430882)
巻号頁・発行日
vol.21, no.2, pp.143-147, 2007 (Released:2007-05-31)
参考文献数
15

プロピオン酸菌による乳清発酵物は,乳清をエメンタールチーズ由来のプロピオン酸菌で発酵させて製造したプレバイオティクスである.その主要成分である1,4-dihydroxy-2-naphthoic acidはビフィズス菌を特異的に増殖させ,腸内環境を宿主に有益な方向へ導くことが可能である.我々は,本食材が実験大腸炎モデルや潰瘍性大腸炎患者に有用であることを明らかにした.本稿では,これまでに報告されたプロピオン酸菌による乳清発酵物の特性について概説するとともに,潰瘍性大腸炎への治療応用について述べる.
著者
吉田 博 草場 信秀 角野 通弘 佐田 通夫
出版者
一般社団法人 日本感染症学会
雑誌
感染症学雑誌 (ISSN:03875911)
巻号頁・発行日
vol.74, no.7, pp.563-566, 2000-07-20 (Released:2011-02-07)
参考文献数
18

猫ひっかき病 (CSD) 20例のBartonella henselae IgG型抗体及びIgM型抗体を酵素抗体法 (EIA) で測定した. B. henselae IgG型抗体はCSD20例中8例 (40%) が陽性であり, IgM型抗体は20例中5例 (25%) であった. IgG型抗体またはIgM型の一方が陽性を示したのは11例, 両者が陽性を示したのは1例で, 合計するとCSD20例中12例 (60%) がB. henselaeに対する抗体が陽性であった. IgG型抗体陽性例の平均年齢はIgM型抗体陽性例の平均年齢より有意に高かった. IgM型抗体は発症後4週から12週に陰性化した. IgG型抗体は2例が3週から8週後に陰性化し, 2例は一過性に低下し再上昇した. 2例は急性期より高値を示した. CSDにおけるB. henselae抗体は経時的に様々な変動がみられた.
著者
水町 寿伸 米湊 健 鶴田 修 佐田 通夫 中原 慶太 前川 進 副島 満 高木 優 荒木 祐美子 芹川 習 田宮 芳孝 渡辺 靖友
出版者
一般社団法人 日本消化器がん検診学会
雑誌
日本消化器がん検診学会雑誌 (ISSN:18807666)
巻号頁・発行日
vol.47, no.1, pp.43-54, 2009

背景:新・胃X線撮影法の前壁撮影ではフトン使用が必須とされている。しかし, フトンの具体的な使用法に関する報告は少なく, 胃形によっても撮影の難易度が異なる。目的:胃形に合わせて任意に調節可能なバスタオルのり巻き法の有用性を明らかにする。対象:施設検診において直接胃X線検査を施行した83例(鈎状胃群43例, 牛角胃群40例)。方法:バスタオルのり巻き法として, バスタオル1枚を鈎状胃群に対しては薄巻き, 牛角胃群には厚巻きに調節して撮影した。胃形別の前壁二重造影像(腹臥位正面位, 第二斜位)に関して, 1)ポジショニング, 2)示現範囲, 3)造影効果をバスタオル使用の有無別に比較検討した。結果:バスタオル使用の場合, 鈎状胃群では2)示現範囲, 3)造影効果が, 牛角胃群は3項目すべてが有意に適切となった。結論:バスタオルのり巻き法は胃形に対するバスタオル形状の調節が簡便で, 高い画像精度が得られる有用な手技と思われた。
著者
江藤 敏治 弘野 修一 永田 賢治 加藤 順也 堀 剛 井戸 章雄 林 克裕 坪内 博仁 小野寺 誠 阿部 弘一 宮坂 昭生 川上 格 佐藤 彰宏 坂下 佳子 岩井 正勝 遠藤 龍人 滝川 康裕 鈴木 一幸 佐藤 俊一 鈴木 千衣子 内田 耕一 弘中 孝治 萱野 幸三 増原 昌明 坂井 田功 沖田 極 関山 和彦 井上 和明 与芝 真 半田 宏一 樋口 大介 井上 和明 関山 和彦 与芝 真 松原 寛 道堯浩 二郎 山内 雄介 井内 英人 長谷 部昌 山本 和寿 井上 愛 堀池 典生 恩地 森一 中西 崇 東俊 宏 狩山 和也 山野 智子 辻 孝夫 川口 光彦 糸島 達也 品川 克至 乾 あやの 小松 陽樹 松本 浩 茂木 陽 宮川 芳宏 藤沢 知雄 上本 伸二 猪股 裕紀洋 田中 紘一 平松 活志 橋本 悦子 谷合 麻紀子 野口 三四朗 長谷 川潔 林 直諒 次田 正 高崎 健 中島 一朗 渕之上 昌平 古川 博之 岸田 明博 大村 孝志 松下 通明 藤堂 省 藤田 美悧 清水 道夫 橋倉 泰彦 三田 篤義 窪田 達也 三輪 史郎 池上 俊彦 寺田 克 宮川 眞一 川崎 誠治 君川 正昭 渕之上 昌平 春口 洋昭 唐仁原 全 中島 一朗 阿岸 鉄三 白髪 宏司 伊藤 克己 高崎 健 橋本 悦子 林 直諒 田中 紘一 上本 伸二 猪股 裕紀洋 阿曽沼 克弘 江川 裕人 藤田 士朗 木内 哲也 林道 廣 田中 紘一 石井 邦英 古賀 郁利子 神代 龍吉 草場 信秀 佐田 通夫 坂本 照夫 加来 信雄 森岡 千恵 菊池 英亮 松尾 英城 中谷 吉宏 豊川 泰勲 富永 謙太郎 山尾 純一 福井 博 福田 邦明 安部井 誠人 遠藤 憲一 本橋 歩 正田 純一 松崎 靖司 田中 直見 古坂 明弘 高橋 正明 平本 淳 白浜 圭吾 永山 和男 田中 照二 Yusufu Youlutuz 松井 淳 持田 智 藤原 研司 小畑 達郎 中島 千種 岡山 昌弘 大野 研而 宮下 智之 田村 明彦 絵野 沢伸 鈴木 盛一 雨宮 浩 青木 達哉 小柳 泰久 山際 健太郎 川原田 嘉文 八木 真太郎 飯田 拓 横井 一 垣内 雅彦 足立 幸彦 飯田 拓 田端 正己 町支 秀樹 横井 一 川原 田嘉文 東口 高志 今井 俊積
出版者
The Japan Society of Hepatology
雑誌
肝臓 (ISSN:04514203)
巻号頁・発行日
vol.40, no.3, pp.189-198, 1999
著者
久持 顕子 神代 龍吉 古賀 郁利子 田中 英介 井出 達也 日野 照子 村島 史朗 緒方 啓 桑原 礼一郎 古賀 浩徳 宍戸 昌一郎 上野 隆登 佐田 通夫 江口 尚久
出版者
一般財団法人 日本消化器病学会
雑誌
日本消化器病学会雑誌 (ISSN:04466586)
巻号頁・発行日
vol.100, no.3, pp.333-336, 2003-03-05 (Released:2011-06-17)
参考文献数
8

症例は51歳女性, 1989年より2型糖尿病と高脂血症でグリベンクラミドなどで加療中であった. ピオグリタゾンの追加投与開始81日後に, 肝細胞型肝障害が認められた, 同薬の中止4週間後に肝機能は正常化した. チトクロームP450 (CYP) 2C19遺伝子型は2/2, CYP2C9遺伝子型は1/1であった. トログリタゾンと類薬の本剤によっても肝障害のおこる可能性があり, 注意が必要と思われる.
著者
安本 潔 神代 龍吉 麻生 重仁 石井 邦英 村岡 晴雄 古寺 重喜 赤司 隆裕 古賀 郁利子 浜田 隆臣 鈴木 宏 上野 隆登 佐田 通夫 安倍 弘彦 谷川 久一
出版者
The Japanese Society of Gastroenterology
雑誌
日本消化機病學會雜誌. 乙 (ISSN:13497693)
巻号頁・発行日
vol.85, no.12, pp.2590-2595, 1988
被引用文献数
4

急性肝炎および劇症肝炎例において血清亜鉛値, 尿中亜鉛排泄量を測定し, 同疾患にみられる低亜鉛血症の機序について検討した. 対照とした健常人例の血清亜鉛値は, 84.0±12.2μg/dl (M±SD) で, 劇症肝炎例では46.0±16.0μg/dlと低値を示し, 有意 (p<0.001) な差がみられた. 急性肝炎例での急性期血清亜鉛値は74.8±12.0μg/dlで, 健常人例よりも低値であつた. 1日尿中亜鉛排泄量は健常人例0.4±0.14mg/日であり, 急性肝炎例1.2±0.5mg/日, 劇症肝炎例2.4±0.6mg/日と高値を呈し, 健常人例に比べ共に有意 (p<0.001) な差がみられた. 急性肝障害での血清亜鉛の低下の原因の一つに, 同疾患にみられる低アルブミン血症および高アミノ酸血症により, 亜鉛とアミノ酸との結合が多くなり, 尿中亜鉛排泄量の増加が関わるものと推察した.
著者
長尾 由実子 佐田 通夫 川口 巧
出版者
久留米大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2006

わが国における肝臓癌の95%以上は、B型肝炎ウイルスやC型肝炎ウイルスの持続感染が原因です。これらの肝炎ウイルスは、肝臓の病気だけではなく、さまざまな肝臓病以外の病気も起こしてくることがわかっています。皮膚や粘膜に現れる扁平苔癬もその一つです。本研究を通じて、C型肝炎ウイルスに感染している扁平苔癬患者はインスリン抵抗性が高いこと、インスリン抵抗性の高いC型肝炎ウイルス関連の口腔癌は重複癌を発症しやすいことがわかりました。インスリン抵抗性とは、インスリン濃度に見合った作用が得られない状態を指します。C型肝炎ウイルス感染者は、肝臓病だけでなく、扁平苔癬や口腔癌、そして重複癌について注意深く経過観察する必要があります。