著者
谷川 久一 瀬田 勝雄 町井 彰 伊藤 進
出版者
一般社団法人 日本内科学会
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.50, no.5, pp.414-419, 1961-08-10 (Released:2008-06-12)
参考文献数
11

28才女子例.数カ月にわたりノリを1~2帖毎日食べていたところ,重症の柑皮症となつた.血清ビリルビンその他の肝機能は正常なるも,血清カロチン448γ/dlと上昇し,ノリ中に含まれるカロチンによる柑皮症と診断す.柑皮症の発来は,カロチンを含む食品の多食といつた外因のみならず,個体側の内因も重要と考える.多汗体質,甲状腺機能低下などは,同症の発来を助けるもので,同患者にも自律神経失調によると思われる多汗体質および甲状腺機能低下おあつたのは興味深い.本症の皮膚黄染のメカニズムは,組織学的検討から,いつたん汗とともに出たカロチンが外から体表を染めるものと思われる.肝生検によりカロチンと同定し得た顆粒が肝細胞内,特にその周辺部に多くみられ,電子顕微鏡でみるとこの顆粒は滑面小胞体とゴルジー体と形態学上密接に関連していると思われる所見であつた.
著者
白石 公彦 伊藤 博道 沢田 征洋 白地 孝 溝口 実 川野 芳郎 松本 博 安倍 弘彦 谷川 久一
出版者
一般社団法人 日本肝臓学会
雑誌
肝臓 (ISSN:04514203)
巻号頁・発行日
vol.23, no.6, pp.656-662, 1982-06-25 (Released:2009-07-09)
参考文献数
20

69歳男性,上腸間膜動脈血栓症のため広範囲小腸切除術を受け約6ヵ月後退院したが,術後9ヵ月を経過した時点で体重減少および全身倦怠感を主訴として当科入院となった.入院時軽度の黄疸および下肢の浮腫を認め,圧痛を有する軟らかな肝を右肋骨弓下一横指触知した.臨床検査より消化吸収障害を示唆する所見が得られ,肝生検にて著明な脂肪肝が認められ,またMallory体も散見された.患者は約2年6ヵ月前より断酒しており,低栄養により脂肪肝を来たしたと思われた.入院後も患者の栄養状態は徐々に悪化し,12ヵ月後に嚥下性肺炎のため死亡した.剖検肝組織に於ては肝生検時に比して脂肪変性は軽減し,Mallory体は増加して見られた.
著者
安本 潔 神代 龍吉 麻生 重仁 石井 邦英 村岡 晴雄 古寺 重喜 赤司 隆裕 古賀 郁利子 浜田 隆臣 鈴木 宏 上野 隆登 佐田 通夫 安倍 弘彦 谷川 久一
出版者
The Japanese Society of Gastroenterology
雑誌
日本消化機病學會雜誌. 乙 (ISSN:13497693)
巻号頁・発行日
vol.85, no.12, pp.2590-2595, 1988
被引用文献数
4

急性肝炎および劇症肝炎例において血清亜鉛値, 尿中亜鉛排泄量を測定し, 同疾患にみられる低亜鉛血症の機序について検討した. 対照とした健常人例の血清亜鉛値は, 84.0±12.2μg/dl (M±SD) で, 劇症肝炎例では46.0±16.0μg/dlと低値を示し, 有意 (p<0.001) な差がみられた. 急性肝炎例での急性期血清亜鉛値は74.8±12.0μg/dlで, 健常人例よりも低値であつた. 1日尿中亜鉛排泄量は健常人例0.4±0.14mg/日であり, 急性肝炎例1.2±0.5mg/日, 劇症肝炎例2.4±0.6mg/日と高値を呈し, 健常人例に比べ共に有意 (p<0.001) な差がみられた. 急性肝障害での血清亜鉛の低下の原因の一つに, 同疾患にみられる低アルブミン血症および高アミノ酸血症により, 亜鉛とアミノ酸との結合が多くなり, 尿中亜鉛排泄量の増加が関わるものと推察した.
著者
都田 梅司 谷川 久一 奥田 邦雄
出版者
一般社団法人 日本内科学会
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.60, no.6, pp.547-550, 1971-06-10 (Released:2008-06-12)
参考文献数
10

47才の男性.狩猟にて捕獲した野兎を生食し, 2日後に発熱,頚部リンパ節の腫大を来たし,野兎病の疑いで入院.理学的所見では,両側頚部リンパ節腫大,口蓋扁桃軽度腫大を認め,他に著変なく,検査で白血球増多を認めた他は著変がなかつた.リンパ節の組織所見は好中球の浸潤強く,小膿瘍形成を示した.血清凝集反応で, Francisella turalensis陰性, Brucella陰性,Pasteurella multocida陽性で,凝集価は経日的に上昇した.また患者の長男も同様に生肉を食したが,臨床症状の発現はなく,血清凝集反応のみが陽性で,不顕性感染と思われる. a. b. penicillin投与により約1週間で発熱下降,約2日でリンパ節は縮小し,白血球増多も消失した.ヒトにおけるPasteurella multocida感染の報告は外国では今日まで138例あるが,本邦では最初と考えられる.
著者
岡本 英三 有井 滋樹 内野 純一 遠藤 康夫 神代 正道 谷川 久一 幕内 雅敏 水本 龍二 水戸 廸郎 山田 龍作 有井 滋樹 大西 美佳 平石 保子
出版者
The Japan Society of Hepatology
雑誌
肝臓 (ISSN:04514203)
巻号頁・発行日
vol.38, no.5, pp.317-330, 1997-05-25
被引用文献数
30 27

全国649施設の協力により, 1992年1月1日より1993年12月31日までの2年間の原発性肝癌症例15, 782例 (臨床診断/組織診断の判明13, 991例) が日本肝癌研究会に登録された. 約96%は肝細胞癌, 約3%が胆管細胞癌であった. 追跡症例は9, 854例であった. 本報告においては, これら新規症例を170項目に及ぶ疫学, 臨床病理学的事項, 診断, 治療について解析し, その主たる点について述べた. 特別集計としては, 追跡症例を含めて, 肝細胞癌, 胆管細胞癌, 混合型肝癌の治療法別生存率, 及びlogistic modelによる肝細胞癌切除後の3年, 5年生存の予知因子の解析を行った.