著者
浜野 美代子 伊野 みどり
出版者
The Japan Society of Home Economics
雑誌
家政学雑誌 (ISSN:04499069)
巻号頁・発行日
vol.37, no.10, pp.841-848, 1986-10-20 (Released:2010-03-10)
参考文献数
14

日常, 摂取する食事が唾液中に分泌されるNO3-およびNO2-濃度にどのような影響を与えるかを明らかにするため, 5日間にわたり, 種々献立の実験食を設定し, これを摂取したさいの, 唾液中のNO3-およびNO2-濃度の変化を経時的に追跡した.得られた結果を要約すると次のようになる.1) まず, 実験食の調理前後におけるNO3-およびNO2-量を測定した結果, 食事の種類によりNO3-およびNO2-量にかなりの差がみられた.とくに調理との関連をみると, ほうれん草のおひたしを用いた献立では, 下調理, つまり, ゆでることにより喫食部分に含まれるNO3-とNO2-量は著しく減少した.2) 実験食摂取後の唾液中のNO3-およびNO2-濃度を調べた結果, NO3-では食後30分ないし1時間で最高濃度を示し, NO3-ではNO3-よりも30分ないし1時間遅れて最高濃度に達した.3) 食事からのNO3-摂取量の多いほど, 摂取後の唾液中のNO3-およびNO2-濃度が顕著に上昇したが, NO3-やNO2-のレベルには大きな個人差がみられた.また, 口腔内における硝酸塩還元能, つまり, 唾液中のNO2-濃度についても個人差がみられた.4) 食事に含有されているレベルの硝酸ナトリウムを被検者に経口投与した結果では, 投与量の多いほど唾液中のNO3-濃度が高くなる結果が得られた.
著者
石川 詔子 五十嵐 益恵 浜野 美代子
出版者
日本健康医学会
雑誌
日本健康医学会雑誌 (ISSN:13430025)
巻号頁・発行日
vol.11, no.1, pp.8-12, 2002-08-10 (Released:2017-12-28)
参考文献数
10

生活習慣病の一次予防の為の食生活を指導するために,学童期での食環境が,その後の食生活に重大な影響を与えると考えた。その事を調べるためアンケート調査を行い検討し,次のような結果を得た。1.学童期の朝食の欠食は,その後も継続して朝食をとらない習慣につながる。2.小学校低学年,小学校高学年,中学校時の学校給食への満足度は高い。3.学校給食で一番好きな食事と,自分が一番好きな食事が同じになる傾向がある。4.複合家族で育った下宿生の自炊の割合は高い。この様に学童期の食環境(特に学校給食)は,その後の食嗜好に大きな影響を与えることが,このアンケート調査でわかった。したがって生活習慣病の一次予防の為には,学童期の食生活指導が重要な意味を持つと考えた。
著者
浜野 美代子 伊野 みどり MIDORI Ino
出版者
東京家政学院大学
雑誌
一般研究(C)
巻号頁・発行日
1985

我が国では, 1982年以来, がんが成人病の死因のトップを占め, このうち胃がんによる死亡者は, 最近では漸減の傾向にあるとはいえ, なお全がん死亡数の約1/4を占めている. 現在までに胃がんの病因物質は明らかではないが食生活と密接な関係があるといわれている. N-ニトロソ化合物は, 我々の身近に存在する発がん物質であって, 亜硝酸塩(NO^-_xとアミン類の反応生成物である. すでに300種類を超えるN-ニトロソ化合物の80%が実験動物で発がん性が証明されている. 我が国のように, 諸外国に比べ, 野菜(NO^-_2, NO^-_3)や魚介類(アミン類など)を多量に摂取していることが, 胃がんの死亡率の高いことに関連があるか否か明らかにされていない. しかし究明しなければならない課題である.今まで, 我々は食品中のN-ニトロソ化合物および前駆物質の存在量, 調理過程におけるN-ニトロソ化合物の生成や, 食事摂取後の唾液中の亜硝酸塩, 硝酸塩の変化などについて研究してきた. 更に, 今回は, モデル実験として人の胃内条件を想定し, N-ニトロソ化合物, 特に発ガン性の強いN-ニトロソジメチルアミンの生成および抑制について, Invitroにおける検討をしてきた. その結果, 食品成分が加わると, 単純に水溶液や人工胃液などで行う実験と異なり, 同じ生成あるいは抑制実験でも複雑になり, 単純に評価はできない. 更に, 人間には, 長きにわたる食習慣の問題や, 現在のように複雑多様化する食生活が胃がんとどのような関わりあいをもってくるか, また, 個個の人間がそれぞれの生活環境から受ける要因など, きめ細かな調査, 研究が今後の重要な課題である.