著者
浅野 良輔 浦上 萌 徳田 智代 園田 直子
出版者
日本パーソナリティ心理学会
雑誌
パーソナリティ研究 (ISSN:13488406)
巻号頁・発行日
vol.29, no.3, pp.125-136, 2020-12-03 (Released:2020-12-03)
参考文献数
38
被引用文献数
1

社会的関心の高さにもかかわらず,モバイル端末利用と子どもの自己制御をめぐるエビデンスは乏しい。本研究では,幼少期におけるスマートフォン・タブレット利用とエフォートフル・コントロール(EC)の関連を検証した。研究1では,2–6歳の長子をもつ養育者183名にインターネット調査を行った。スマートフォン・タブレット利用用途尺度,利用場面尺度,利用規則尺度が作成され,いずれも1次元性と高い信頼性が示された。研究2では,2–6歳の長子をもつ夫婦カップル455組にインターネット調査を行った。共通運命モデルによる分析の結果,人口統計学的特性を統制してもなお,スマートフォン利用頻度,タブレット利用頻度,スマートフォン・タブレット利用用途,スマートフォン・タブレット利用場面はECと関連していなかった一方で,スマートフォン・タブレット利用規則がECの高さと関連していた。子どもの年齢に基づく下位集団分析でも,同様の結果が得られた。
著者
大橋 充典 野田 耕 行實 鉄平 奥野 真由 浦上 萌 Mitsunori Ohhashi Koh Noda Teppei Yukizane Mayu Okuno Moe Uragami
出版者
久留米大学人間健康学部
雑誌
久留米大学人間健康学部紀要 = Bulletin , Faculty of Human Health , Kurume University (ISSN:24350036)
巻号頁・発行日
vol.2, no.1, pp.53-65, 2020-09-01

本稿の目的は,日本における高等教育の現状について,主に文部科学省の政策を中心に整理し,今後の高等教育のあり方について検討することであった。具体的には,高等教育における「マス化」および「ユニバーサル化」について,マーチン・トロウの高等教育論を参考として大学進学率の推移からこれまでの日本における高等教育がどのように変容してきたのかについて整理し,その上で,過去10年において設置が認められた新たな大学の特徴から日本における今後の高等教育政策について提言を行った。戦後の日本における高等教育の歴史は,1947年の学校教育法の成立による1949年の新制大学の発足が始まりとされる。その後,2010年代まで徐々に増加傾向をたどってきたが,2009年には進学率が50%を超えることになり,高等教育が「ユニバーサル化」する時期に差し掛かっている。2009年以降に新たに開設された大学における設置組織について概観してみると,特に看護や医療系の学部や学科,また理学療法や作業療法の専攻が半数程度を占めている。こうした状況を見ると,日本における高等教育は文部科学省主導で量的な拡大が行われてきたと言えるが,一方で,質の向上を含めた「計画的な整備」が進められてきたのかについては,今後も議論する余地が残されている。
著者
浦上 萌 杉村 伸一郎
出版者
一般社団法人 日本発達心理学会
雑誌
発達心理学研究 (ISSN:09159029)
巻号頁・発行日
vol.26, no.3, pp.175-185, 2015 (Released:2017-09-20)
参考文献数
20
被引用文献数
1

心的数直線の形成は,数量概念の発達において非常に重要であると考えられている。その過程は大別して2つの立場から捉えられてきた。一つは,対数型から直線型へという質的変化を重視する移行の立場で,もう一つは,数量を見積る方略や基準点に着目する比率判断の立場である。本研究では,これらの立場では捉えきれなかった,関数に適合する以前の数表象の実態を検討するとともに,心的数直線の質的変化と基準点の使用との関連や見積る際の方略を検討した。分析対象者は,0–20の数直線課題が4–6歳児58名,0–10の数直線課題が4–6歳児27名であった。分析の結果,関数に適合する以前の数表象として,大小型などの5つの型が見出された。また,移行と比率判断との関連や方略を検討することにより,直線型であっても数直線の両端と中点を基準点として使用し,比率的に見積っているとは限らないことなどが明らかになった。これらの知見を踏まえて,幼児期における心的数直線の形成過程を考察した。
著者
浦上 萌 奥野 真由 行實 鉄平 野田 耕 秦 佳江 大橋 充典
出版者
久留米大学人間健康学部
雑誌
久留米大学人間健康学部紀要 = Bulletin , Faculty of Human Health , Kurume University (ISSN:24350036)
巻号頁・発行日
vol.1, no.1, pp.1-10, 2019-05-31

本研究は,学部の独自性が大学進学動機の中にどのように含まれるのか検討することが目的であった。久留米大学人間健康学部に所属する1年生140名を対象に,先行研究で使用されてきた大学進学動機尺度に大学の独自性に関わる項目を加えて質問紙調査を実施した。因子分析の結果,「内的期待」「外的期待」「資格・専門性」「無目的」が抽出され,大学の独自性の項目は「内的期待」に含まれた。また,クラスター分析を行った結果,資格を取得する目的があり,興味のある専門的知識について学びたいといった目的がある者もいれば,目標が未決定で明確な大学進学動機がない学生がいることも分かった。本研究を通じて,大学の示す独自性と自分自身の大学進学動機とが合致する学生がいることが明らかになり,明確な大学進学動機がない学生については,大学生活の中でどのように目的意識が変化していくのか追跡調査する必要があることも示唆された。
著者
奥野 真由 浦上 萌 大橋 充典 秦 佳江 行實 鉄平 野田 耕
出版者
久留米大学人間健康学部
雑誌
久留米大学人間健康学部紀要 = Bulletin , Faculty of Human Health , Kurume University (ISSN:24350036)
巻号頁・発行日
vol.1, no.1, pp.19-26, 2019-05-31

久留米大学人間健康学部では,初年次教育の一環として「演習IA」が開講されている。本研究の目的は,演習IAでの学びが,学生にとってどのような経験となっているかを明らかにし,初年次教育システムを再考するための指標を得ることとした。調査は演習IAを受講した140名を対象とし,質問紙を用いた集合調査法にて実施した。自由記述で得られたデータをKJ法の手続きを参考に分析し,学生が実感している成長の内容を概念化した。その結果,知識や技術の向上と大学生活への適応に支えられ,自分自身の変化や成長を実感していることが明らかとなった。しかし,授業目標として掲げられている「主体的な学び」に関するカテゴリーは生成されなかった。今後は,学生の学生エンゲージメントの意識を高めるための授業づくりや,学生の主体的な学びを育てる空間の創出が,本学部の初年次教育システムを構築する上で必要であると考えられる。
著者
浦上 萌 杉村 伸一郎
出版者
一般社団法人 日本発達心理学会
雑誌
発達心理学研究 (ISSN:09159029)
巻号頁・発行日
vol.26, no.3, pp.175-185, 2015

心的数直線の形成は,数量概念の発達において非常に重要であると考えられている。その過程は大別して2つの立場から捉えられてきた。一つは,対数型から直線型へという質的変化を重視する移行の立場で,もう一つは,数量を見積る方略や基準点に着目する比率判断の立場である。本研究では,これらの立場では捉えきれなかった,関数に適合する以前の数表象の実態を検討するとともに,心的数直線の質的変化と基準点の使用との関連や見積る際の方略を検討した。分析対象者は,0–20の数直線課題が4–6歳児58名,0–10の数直線課題が4–6歳児27名であった。分析の結果,関数に適合する以前の数表象として,大小型などの5つの型が見出された。また,移行と比率判断との関連や方略を検討することにより,直線型であっても数直線の両端と中点を基準点として使用し,比率的に見積っているとは限らないことなどが明らかになった。これらの知見を踏まえて,幼児期における心的数直線の形成過程を考察した。