著者
片野田 耕太
出版者
国立保健医療科学院
雑誌
保健医療科学 (ISSN:13476459)
巻号頁・発行日
vol.69, no.2, pp.103-113, 2020-05-29 (Released:2020-06-27)
参考文献数
51

喫煙の健康影響は,日本では,2016年に厚生労働省「喫煙と健康 喫煙の健康影響に関する検討会報告書」(いわゆる「たばこ白書」)で包括的な評価が行われている.「たばこ白書」で受動喫煙との因果関係を推定するのに十分である(レベル 1 )と判定された疾患は,成人では肺がん,虚血性心疾患,および脳卒中である.これらの疾患の死亡に占める受動喫煙の寄与は,男性で 1 ~ 4 %,女性で 9 ~10%を占め,年間死亡数では約 1 万 5 千人に相当する.小児では乳幼児突然死症候群および喘息既往について受動喫煙との因果関係が十分であると判定された.受動喫煙を防止するには,屋内の公共の場所や職場を罰則付きで禁煙にする法制化が有効であり,アジアを含めて世界標準になっている.法制化後に成人,周産期,小児の健康影響が減ることについても科学的に十分な証拠がある.受動喫煙の健康影響に関する科学的証拠は,日本人が世界で初めて報告し,数十年を経て屋内禁煙という国際的な社会規範に結び付いた.科学的発見から社会制度の整備まで長い年月がかかった背景には,たばこ産業の干渉があり,そこには産業界のみならず科学界の人間が多く関与してきた.
著者
片野田 耕太 十川 佳代 中村 正和
出版者
日本公衆衛生学会
雑誌
日本公衆衛生雑誌 (ISSN:05461766)
巻号頁・発行日
pp.23-076, (Released:2023-12-21)
参考文献数
57

「たばこハームリダクション」は「たばことニコチンの使用を完全に排除することなく,害を最小限に抑え,死亡と疾病を減少させること」と定義される。加熱式たばこが普及している日本において,たばこ産業側の「たばこハームリダクション」を用いたプロモーションが活発化しており,たばこ対策関係者は背景や考え方を共有する必要がある。本稿は,「たばこハームリダクション」を公衆衛生施策として実施するための要件を,①リスク低減,②禁煙の効果,③新たな公衆衛生上の懸念,および④保健当局の規制権限,の4つに集約し,ニコチン入り電子たばこ(以下,電子たばこ),加熱式たばこのそれぞれについて検討することを目的とした。さらに,国際機関(世界保健機関;WHO)および諸外国(米国,英国,オーストラリア,イタリア,および韓国)の保健当局の「たばこハームリダクション」に対する方針についてまとめた。最初の3つの要件について,電子たばこは,リスク低減および禁煙の効果については一定の科学的証拠があるが,若年者における使用の流行と紙巻たばこ使用へのゲートウェイドラッグ(入門薬)になりえるという公衆衛生上の懸念については一致した見解が得られていなかった。加熱式たばこについては最初の3つの要件いずれについても十分な科学的証拠はなかった。WHOはあらゆるたばこ製品について同じ規制をすべきであるという立場をとっていた。保健当局が「たばこハームリダクション」の考え方を制度として導入していたのは英国と米国のみであり,加熱式たばこが比較的普及しているイタリアおよび韓国でもリスク低減については保健当局が否定していた。英国は電子たばこによる禁煙支援を公式に認めていた一方,米国は2009年に制定された連邦法に基づいてmodified risk tobacco product(リスク改変たばこ製品)の制度を設けたが,2023年6月現在,加熱式たばこまたは電子たばこで健康リスクを低減すると認められた製品はなかった。4つ目の要件について,英国,米国ともたばこ産業から独立した保健当局の規制の下に「たばこハームリダクション」が制度化されていた。「たばこハームリダクション」の導入には,たばこ産業から独立した保健当局の規制権限と包括的なたばこ対策の履行が必須だと考えられる。
著者
大橋 充典 野田 耕 行實 鉄平 奥野 真由 浦上 萌 Mitsunori Ohhashi Koh Noda Teppei Yukizane Mayu Okuno Moe Uragami
出版者
久留米大学人間健康学部
雑誌
久留米大学人間健康学部紀要 = Bulletin , Faculty of Human Health , Kurume University (ISSN:24350036)
巻号頁・発行日
vol.2, no.1, pp.53-65, 2020-09-01

本稿の目的は,日本における高等教育の現状について,主に文部科学省の政策を中心に整理し,今後の高等教育のあり方について検討することであった。具体的には,高等教育における「マス化」および「ユニバーサル化」について,マーチン・トロウの高等教育論を参考として大学進学率の推移からこれまでの日本における高等教育がどのように変容してきたのかについて整理し,その上で,過去10年において設置が認められた新たな大学の特徴から日本における今後の高等教育政策について提言を行った。戦後の日本における高等教育の歴史は,1947年の学校教育法の成立による1949年の新制大学の発足が始まりとされる。その後,2010年代まで徐々に増加傾向をたどってきたが,2009年には進学率が50%を超えることになり,高等教育が「ユニバーサル化」する時期に差し掛かっている。2009年以降に新たに開設された大学における設置組織について概観してみると,特に看護や医療系の学部や学科,また理学療法や作業療法の専攻が半数程度を占めている。こうした状況を見ると,日本における高等教育は文部科学省主導で量的な拡大が行われてきたと言えるが,一方で,質の向上を含めた「計画的な整備」が進められてきたのかについては,今後も議論する余地が残されている。
著者
野田 耕作 庵原 知子 平野 裕子 早渕 仁美
出版者
社団法人日本家政学会
雑誌
日本家政学会誌 (ISSN:09135227)
巻号頁・発行日
vol.42, no.8, pp.691-695, 1991-08-15

L-アスパラチル-L-フェニルアラニンメチルェステル(アスパルテーム, APM)の各種果汁中における安定性について,果汁溶液に溶かしたAPMをアミノ酸分析計を用いたイオン交換タロマトグラフィーで分析することにより調べた.その結果,APMはキウイフルーツ,パインアップル,パパイアおよびメロンの各果汁溶液中で加水分解されることがわかった. とくに,メロン果汁溶液中では, APM 0.1%,果汁25%の条件下で約15時間でAPMは完全に分解した.パパイア果汁も高いAPM分解活性を示した.それに対して,オレンジ,温州みかん,グレープフルーツ, レモろ りんご,ぶどバいちごおよびマンゴの各果汁溶液中ではAPMは安定であった.キウイフルーツおよびパインアップル果汁溶液中でのAPMの分解産物は,レアスパラチ'トレフェニルアラニンであった.一方, パパイアおよびメロン果汁溶液中では,APMはその構成アミノ酸であるレアスパラギン酸とL-フェニルアラニンにまで分解された.
著者
片野田 耕太 伊藤 秀美 伊藤 ゆり 片山 佳代子 西野 善一 筒井 杏奈 十川 佳代 田中 宏和 大野 ゆう子 中谷 友樹
出版者
日本公衆衛生学会
雑誌
日本公衆衛生雑誌 (ISSN:05461766)
巻号頁・発行日
vol.70, no.3, pp.163-170, 2023-03-15 (Released:2023-03-23)
参考文献数
40

諸外国では,がん登録を始めとする公的統計データの地理情報を用いた研究ががん対策および公衆衛生施策に活用されている。日本でも2016年に全国がん登録が開始され,がんの罹患情報のデータ活用が制度的に可能となった。悉皆調査である全国がん登録は,市区町村,町丁字など小地域単位での活用によりその有用性が高まる。一方,小地域単位のデータ活用では個人情報保護とのバランスをとる必要がある。小地域単位の全国がん登録データの利用可否は,国,各都道府県の審議会等で個別に判断されており,利用に制限がかけられることも多い。本稿では,がん登録データの地理情報の研究利用とデータ提供体制について,米国,カナダ,および英国の事例を紹介し,個人情報保護の下でデータが有効に活用されるための方策を検討する。諸外国では,データ提供機関ががん登録データおよび他のデータとのリンケージデータを利用目的に沿って提供する体制が整備され,医療アクセスとアウトカムとの関連が小地域レベルで検討されている。日本では同様の利活用が十分に実施されておらず,利用申請のハードルが高い。全国がん登録の目的である調査研究の推進とがん対策の一層の充実のために,他のデータとのリンケージ,オンサイト利用など,全国がん登録を有効かつ安全に活用できる体制を構築していく必要がある。
著者
田中 宏和 田淵 貴大 片野田 耕太
出版者
日本公衆衛生学会
雑誌
日本公衆衛生雑誌 (ISSN:05461766)
巻号頁・発行日
pp.22-061, (Released:2022-11-28)
参考文献数
36

目的 新型コロナウイルスワクチン接種状況と,旅行や飲食店利用など経済活動の活性化に向けた接種証明書(ワクチンパスポート)の活用に関して人々の意識を明らかにすることを目的とした。方法 2021年9-10月に実施された「日本におけるCOVID-19問題による社会・健康格差評価研究(JACSIS研究)」のデータから,最終学歴および職業ごとのワクチン接種率と接種率比を算出した。また,「ワクチン接種済み(2回)」群と「ワクチンの接種を希望しない」群に分けて「ワクチンを接種した(しない)理由」をそれぞれ分析した。さらに,ワクチンパスポートを「経済回復のために活用すべきだ」と考える割合と性・年齢階級・職業・最終学歴や政府のワクチン情報の信頼などとの関連を分析した。結果 27,423人の調査参加者(20-79歳;女性13,884人,男性13,539人)のうち,「ワクチン接種済み(2回)」が20,515人(74.8%),「接種したくない(接種希望なし)」が1,742人(6.3%)であった。ワクチン接種率は性で差がなく,『大学・大学院卒業者』は『高校卒業者』に比べて有意に接種率が高かった(調整済み接種率比,1.09;95%信頼区間:1.07-1.12)。職業別では『事務職』に対する『専門・技術職』の調整済み接種率比は1.05(95%信頼区間:1.01-1.09)であった。「ワクチン接種済み(2回)」群のうち,接種した理由で最も多かったのは「家族や周りの人に感染させたくないから」の53.0%だった。一方で,接種したくない理由で最も多かったのは「副反応が心配だから」の44.5%だった。ワクチンパスポートについて「経済回復のために活用すべき」と答えたのは「ワクチン接種済み(2回)」群で41.8%であり,「接種したくない」群で12.2%であった。職業別では『営業販売職』(40.4%)で最も高かった。この割合は,「政府のワクチン情報を信頼している」群(49.5%)では「どちらでもない」群(27.5%)に比べて有意に高かった(P<0.01)。結論 学歴や職業でワクチン接種率に差があること,政府のワクチン情報を信頼する人ほどワクチンパスポート活用に肯定的であることが明らかになった。しかし,経済活動の活性化のためのワクチンパスポート活用に関して,人々の期待や関心は社会全体では高くないことが示唆された。
著者
奥山 絢子 片野田 耕太 田淵 貴大
出版者
日本公衆衛生学会
雑誌
日本公衆衛生雑誌 (ISSN:05461766)
巻号頁・発行日
vol.69, no.3, pp.204-214, 2022-03-15 (Released:2022-03-23)
参考文献数
19

目的 本研究は,基礎疾患保持者と基礎疾患がない者に分けて新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に対する認識,そして基礎疾患保持者の療養生活への影響を明らかにすることを目的とした。方法 2020年8月~9月に実施された「日本におけるCOVID-19問題による社会・健康格差評価研究(JACSIS研究)」のデータを用いた。調査項目のうちCOVID-19に対する認識,療養生活への影響について,基礎疾患・流行地域別に記述分析を行った。結果 不正回答を除く,25,482人の回答を用いた(がん455人,循環器疾患510人,呼吸器疾患883人,高血圧・糖尿病4,501人,精神疾患936人,基礎疾患無18,197人)。SARS-CoV-2に感染することが危険であると回答した者は,基礎疾患・流行地域に関わらず約70%であった。一方で,自身の感染リスクや重症化リスクがあると捉えていた者はいずれの疾患も20%未満であった。療養生活への影響をみると,影響があったと答えた者が最も多かったのは,呼吸器疾患保持者で,予定通りの通院ができなかった者が流行地域41.9%,非流行地域28.8%であった。また,精神疾患では,持病が悪化したと回答した割合が他疾患より多かった(流行地域27.2%,非流行地域22.9%)。結論 COVID-19流行が,基礎疾患保持者の受療状況に影響を及ぼしていることが示唆された。また,約70%がSARS-CoV-2に感染することが危険であると捉えていた一方で,自身が感染するかもしれないと捉えていた者はいずれの疾患保持者も20%未満であった。今後,詳細な要因分析を行い,受診への影響がどういった患者で多かったのか,経済状況によって差があるのか等を分析する必要がある。
著者
坪井 聡 山縣 然太朗 大橋 靖雄 片野田 耕太 中村 好一 祖父江 友孝 上原 里程 小熊 妙子 古城 隆雄 ENKH-OYUN Tsogzolbaatar 小谷 和彦 青山 泰子 岡山 明 橋本 修二
出版者
日本公衆衛生学会
雑誌
日本公衆衛生雑誌 (ISSN:05461766)
巻号頁・発行日
vol.61, no.10, pp.613-624, 2014

<b>目的</b> 糖尿病患者の病院への満足度に関する対策を政策的に推し進める科学的根拠を得るためには,一般化可能な知見が必要である。本研究の目的は,既存の公的統計を二次利用することで外来に通う糖尿病患者の病院への満足度の分布を示し,関連を持つ要因を詳細に検討することである。<br/><b>方法</b> 患者調査,医療施設調査および受療行動調査(いずれも平成20年)を連結させたデータセットを作成した。患者調査と医療施設調査の連結には,医療施設調査整理番号を,加えて,受療行動調査との連結には,性と生年月日の情報を用いた。外来に通う糖尿病患者の病院への満足度の分布を検討し,また,様々な要因との関連の有無を検討した。関連の検討に用いた項目は,受診状況(初診か再来か),診察までの待ち時間,医師による診察時間,受療状況(他の医療機関の利用の有無等),糖尿病性の合併症,その他の合併症,生活保護法による支払い,禁煙外来,糖尿病内科(代謝内科)の標ぼう,診療時間(土曜日,日曜日,祝日の診療),生活習慣病に関連する健診の実施である。<br/><b>結果</b> 糖尿病患者の62.3%は,病院への満足度において,やや満足,非常に満足と回答し,やや不満,非常に不満と回答した者は5.6%であった。受診状況,診察までの待ち時間,診察時間,受療状況,土曜日の診療の有無は,病院への満足度と統計学的に有意な関連を示した。一方,その他の項目は病院への満足度との間に明らかな関連を示さなかった。統計学的に有意な関連を示した要因を用いた多変量解析では,再診,短い待ち時間,他の医療機関にかかっていないこと,長い診察時間と高い満足度との間に統計学的に有意な関連が観察された。<br/><b>結論</b> 複数の公的統計を連結させることによって,外来に通う糖尿病患者の病院への満足度の分布を示し,関連を持つ要因を明らかにすることができた。糖尿病患者の病院への満足度を高めるために,待ち時間の短縮と診察時間の確保が重要である。今後,多くの公衆衛生施策の検討に際して,公的統計の更なる活用が望まれる。
著者
中村 正和 田淵 貴大 尾崎 米厚 大和 浩 欅田 尚樹 吉見 逸郎 片野田 耕太 加治 正行 揚松 龍治
出版者
日本公衆衛生学会
雑誌
日本公衆衛生雑誌 (ISSN:05461766)
巻号頁・発行日
vol.67, no.1, pp.3-14, 2020-01-15 (Released:2020-02-04)
参考文献数
45

目的 本報告の目的は,加熱式たばこの使用実態,健康影響,ニコチン供給装置としての製品特性に関わるエビデンスをもとに,本製品の流行がたばこ規制の主要政策に与える影響を検討し,今後の規制のあり方について政策提言を行うことである。方法 加熱式たばこの使用実態,有害化学物質の成分分析,ニコチン供給装置としての製品特性に関する文献検索には医学中央雑誌とPubMedを用い,11編を収集した。そのほか,国内の公的研究班の報告書と海外の公的機関の報告書から8編を収集した。 本製品の流行がたばこ規制に与える影響については,WHOがMPOWERとして提唱する6つの主要政策を取り上げた。本検討にあたっては,上述の19文献に加えて,たばこ規制の現状に関わる計26編の文献や資料を収集して用いた。結果 わが国では2013年12月から加熱式たばこの販売が開始され,2016年から流行が顕著となっている。2016年10月の時点で,日本は国際的に販売されている加熱式たばこ製品の90%以上を消費している。加熱式たばこは,紙巻たばこに比べるとニコチン以外の主要な有害物質の曝露量を減らせる可能性がある。しかし,病気のリスクが減るかどうかについては明らかでなく,紙巻たばこを併用した場合には有害物質の曝露の低減も期待できない。また,ニコチンの曝露ならびに吸収動態は紙巻たばこと類似しており,ニコチン依存症が継続して,その使用中止が困難になる。 加熱式たばこの流行は,WHOが提唱する6つの主要政策のいずれにおいても,現状の日本のたばこ規制の下では悪影響を与える可能性が考えられた。結論 加熱式たばこの流行に対して公衆衛生上の懸念が指摘されているが,その規制のあり方を検討するためのエビデンスが不足している。今後,加熱式たばこの健康影響のほか,紙巻たばこ使用への影響,たばこ政策に与える影響について研究を進める必要がある。健康影響が解明されるまでは,公衆衛生の予防原則の観点から紙巻たばこと同様の規制を行うべきである。
著者
浦上 萌 奥野 真由 行實 鉄平 野田 耕 秦 佳江 大橋 充典
出版者
久留米大学人間健康学部
雑誌
久留米大学人間健康学部紀要 = Bulletin , Faculty of Human Health , Kurume University (ISSN:24350036)
巻号頁・発行日
vol.1, no.1, pp.1-10, 2019-05-31

本研究は,学部の独自性が大学進学動機の中にどのように含まれるのか検討することが目的であった。久留米大学人間健康学部に所属する1年生140名を対象に,先行研究で使用されてきた大学進学動機尺度に大学の独自性に関わる項目を加えて質問紙調査を実施した。因子分析の結果,「内的期待」「外的期待」「資格・専門性」「無目的」が抽出され,大学の独自性の項目は「内的期待」に含まれた。また,クラスター分析を行った結果,資格を取得する目的があり,興味のある専門的知識について学びたいといった目的がある者もいれば,目標が未決定で明確な大学進学動機がない学生がいることも分かった。本研究を通じて,大学の示す独自性と自分自身の大学進学動機とが合致する学生がいることが明らかになり,明確な大学進学動機がない学生については,大学生活の中でどのように目的意識が変化していくのか追跡調査する必要があることも示唆された。
著者
奥野 真由 浦上 萌 大橋 充典 秦 佳江 行實 鉄平 野田 耕
出版者
久留米大学人間健康学部
雑誌
久留米大学人間健康学部紀要 = Bulletin , Faculty of Human Health , Kurume University (ISSN:24350036)
巻号頁・発行日
vol.1, no.1, pp.19-26, 2019-05-31

久留米大学人間健康学部では,初年次教育の一環として「演習IA」が開講されている。本研究の目的は,演習IAでの学びが,学生にとってどのような経験となっているかを明らかにし,初年次教育システムを再考するための指標を得ることとした。調査は演習IAを受講した140名を対象とし,質問紙を用いた集合調査法にて実施した。自由記述で得られたデータをKJ法の手続きを参考に分析し,学生が実感している成長の内容を概念化した。その結果,知識や技術の向上と大学生活への適応に支えられ,自分自身の変化や成長を実感していることが明らかとなった。しかし,授業目標として掲げられている「主体的な学び」に関するカテゴリーは生成されなかった。今後は,学生の学生エンゲージメントの意識を高めるための授業づくりや,学生の主体的な学びを育てる空間の創出が,本学部の初年次教育システムを構築する上で必要であると考えられる。
著者
片野田 耕太
出版者
特定非営利活動法人 日本肺癌学会
雑誌
肺癌 (ISSN:03869628)
巻号頁・発行日
vol.55, no.4, pp.273-276, 2015

<b>目的.</b>喫煙の健康影響および喫煙対策の効果について科学的証拠を概観すること.<b>方法.</b>健康影響については国際がん研究機関(IARC)および米国公衆衛生総監報告(Surgeon General Report)の総括報告,喫煙対策の効果については米国疾病対策センターのCommunity Guideのデータをまとめた.<b>結果.</b>健康影響については,がんの分野で肝がんおよび大腸がんが,がん以外で糖尿病などが,能動喫煙と因果関係のある疾患に追加されていた.受動喫煙と因果関係のある疾患としては脳卒中が追加されていた.喫煙対策については,喫煙曝露を減らす対策として,たばこの値上げ,公共空間や職場での禁煙法制化,クイットラインなどが「推奨」されていた一方,インターネットを利用した禁煙介入,メディア上での禁煙コンテストなどは「証拠不十分」とされていた.<b>結論.</b>喫煙の健康影響および喫煙対策の効果に関しては,主に欧米の研究が中心であるが,科学的証拠が十分に蓄積している.わが国の喫煙対策は,実施可能性だけでなく,科学的証拠を十分に考慮した上で立案すべきである.
著者
野田 耕平
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. ET, 教育工学 (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.98, no.76, pp.95-102, 1998-05-23
被引用文献数
2

本論文では、文章を読む過程そのものを外に見える形で取り出し操作する支援法を提案、その方法での読みが文章理解に与える効果を確かめた幾つかの実験を報告する。さらに、その結果を踏まえ開発したコンピュータ上の読解支援ツールの概要と評価の結果を報告する。文章を文または節の単位でカード化しそれを自由に配置しながら読むと、カードを文章順直列配置で読む場合に比べ、より広い範囲でカード同士の関連付けをし、文章の対比を捉えた理解などがされやすいことを実験で確かめた。その結果を踏まえ、読解支援ツールCArD(Card Arrangement Displayer)を開発、その評価を行っている。紙に比べカード作成が容易であり、複数のカードを一度に動かせる、などの利点がある。
著者
加賀美 英雄 満塩 大洸 野田 耕一郎
出版者
城西大学
雑誌
城西大学研究年報. 自然科学編 (ISSN:09149775)
巻号頁・発行日
vol.18, pp.9-28, 1994-03

Tributaries of the Shimanto River have a north-south trending stream starting from the watershed of the Shikoku karst plateau, a part of the Shikoku coastal mountains, but do not end at the nearby coast of Tosa Bay. Because a small ridge (Rokusen-san, 507 m) along the coast of Okitsu Peninsula prevented the tributaries to cross over, the Shimanto River made a westward detour into the mountainous region for more than 100 km. This study shows new evidences on eastward flow of the ancient Shimanto River : 1) the inclosed meander of Matsuba River comes close to the coast, that of Ihoso River almost contacts to the same contour line of the coastal valley of Iyoki River, and that of Yusuhara River continues to the coastal valley of Iyoki River without interruption : 2) the lower gravel bed of 50 cm thick is found at Hirose meander to show a eastward dip-strike. The gravel bed correlates to the pre-terrace deposit : 3) a mudstone bed of lake-deposit origin is found in an abandoned meander at Satokawa. It deposited after closure of eastward flow by uplifting of the coastal ridges. The measured dip-strike of the bed indicates eastward flow. Uplifting of Okitsu Peninsula was the main reason for westward migration of the Shimanto River. The uplifting zone was formed between earthquake faults, which was clearly shown between the Tosa basin and Nakamura basin during the last Nankaido Earthquake in 1946. Often the weak zone is associated with protrusion of igneous rocks such as Kashiwa-shima/Okino-Shima uplifting zone and Ashizuri uplifting zone. Rejuvenation of the Shikoku peneplain started at round 0.7 Ma B.P. and the uplifting of the Okitsu Peninsula occurred sometime later.