著者
浦山 晶美 西村 真実子
出版者
日本公衆衛生学会
雑誌
日本公衆衛生雑誌 (ISSN:05461766)
巻号頁・発行日
vol.56, no.4, pp.223-231, 2009 (Released:2014-06-13)
参考文献数
22

目的 わが子を虐待する母親の要因には愛着関係の障害が一因であるとの見方が一般的になってきた。愛着型にはそれぞれ個人差があり,その人のこれまで経験した関係の質に応じて自己と他者に関する内的ワーキングモデル(Internal Working Model:IWM と略す)が形成される。そこで本研究は虐待防止策の方向性を考えるため,養育歴を反映する IWM と虐待的な養育態度および,サポートとの関連性を明らかにすることを研究目的とした。方法 石川県内の 1 歳 6 か月児健診と 3 歳児健診に訪れている母親534人に直接質問紙票を手渡し,調査は無記名とし回収は郵送で行った。結果 IWM の両価性が高い母親ほど,他の IWM 型の母親よりも虐待的な養育態度が多くみられ,育児サポートが得られていてもその傾向は変わらなかった。一方,IWM の安定性が低い母親ほど他の IWM 型の母親よりも虐待的な養育態度の重複が多くみられたが,サポートを受けている場合には虐待的な養育態度は減少する傾向がみられた。結論 IWM は虐待的な養育態度と関連性があると言え,また安定性が低い母親には育児サポートが虐待的な養育態度の発生を緩和する働きがあることが示唆された。
著者
三谷 明美 田中 和子 浦山 晶美 佐世 正勝 田中 マキ子
出版者
山口県立大学
雑誌
山口県立大学学術情報 (ISSN:18826393)
巻号頁・発行日
vol.9, pp.135-142, 2016-03-31

The intake of folic acid by women who are able to produce children has been encouraged by the Ministry of Health, Labor and Welfare since 2000. However, there is no trend of decrease of neural tube defects (hereafter referred as to "NTD") related to the folic acid intake in Japan. Therefore, it cannot be said that the importance of the intake of folic acid is fully known by them. Therefore, a questionnaire was implemented with 300 mothers nurturing their preschool-aged children about the awareness of folic acid. As a result, 68.7% of them knew that folic acid is a kind of vitamin, 69.3% of them knew its effect of preventing congenital abnormalities, and 64.0% of them knew that, in order to prevent congenital abnormalities, it is necessary to have an intake of folic acid before pregnancy. Of the women who partook in this study, 72.3% had taken a folic acid supplement in the past, and 58% of them had reported to have obtained information of folic acid. Therefore, they all had a good understanding of folic acid. However, only 24.7% of them knew that it can be better absorbed by the body in supplement form. Therefore, it cannot be said that they were well enough informed of the characteristic of its absorption by the body and the significance of taking it in supplement form; so it was suggested that they should be provided with the necessary information.2000年より厚生労働省により妊娠可能女性への葉酸摂取が推奨されている。しかしながら葉酸摂取の有無と関係する我が国の神経管閉鎖障害(NTD;Neural Tube Defects、以下NTDと略す)発症率に減少傾向はみられず、十分に認知されているとはいえない状況である。そこで未就学児を養育している母親300名に葉酸に関する認知について調査を行った。葉酸がビタミンの一種であることを知っている人は68.7%であった。また、先天奇形の予防効果を知っていた人は69.3%であった。奇形予防のためには妊娠前から葉酸を服用する必要があることを知っていたのは64.0%であった。過去に葉酸サプリメント摂取の経験がある人も72.3%いた。また、葉酸の情報の入手したことがある母親は58%であり、葉酸の認知度は高いといえる。しかし、食品で摂取するより、サプリメントの方が吸収率が良いことを知っていた人は24.7%であった。したがって、葉酸の吸収の特性やサプリメントとしての摂取することの意義などの知識は十分であるとはいえず、情報提供の必要性が示唆された。