著者
浦山 晶美 西村 真実子
出版者
日本公衆衛生学会
雑誌
日本公衆衛生雑誌 (ISSN:05461766)
巻号頁・発行日
vol.56, no.4, pp.223-231, 2009 (Released:2014-06-13)
参考文献数
22

目的 わが子を虐待する母親の要因には愛着関係の障害が一因であるとの見方が一般的になってきた。愛着型にはそれぞれ個人差があり,その人のこれまで経験した関係の質に応じて自己と他者に関する内的ワーキングモデル(Internal Working Model:IWM と略す)が形成される。そこで本研究は虐待防止策の方向性を考えるため,養育歴を反映する IWM と虐待的な養育態度および,サポートとの関連性を明らかにすることを研究目的とした。方法 石川県内の 1 歳 6 か月児健診と 3 歳児健診に訪れている母親534人に直接質問紙票を手渡し,調査は無記名とし回収は郵送で行った。結果 IWM の両価性が高い母親ほど,他の IWM 型の母親よりも虐待的な養育態度が多くみられ,育児サポートが得られていてもその傾向は変わらなかった。一方,IWM の安定性が低い母親ほど他の IWM 型の母親よりも虐待的な養育態度の重複が多くみられたが,サポートを受けている場合には虐待的な養育態度は減少する傾向がみられた。結論 IWM は虐待的な養育態度と関連性があると言え,また安定性が低い母親には育児サポートが虐待的な養育態度の発生を緩和する働きがあることが示唆された。
著者
千原 裕香 西村 真実子 成田 みぎわ 金谷 雅代 寺井 孝弘 伊達岡 五月 本部 由梨
出版者
公益社団法人 日本看護科学学会
雑誌
日本看護科学会誌 (ISSN:02875330)
巻号頁・発行日
vol.39, pp.211-220, 2019 (Released:2019-12-14)
参考文献数
15

目的:青年期前期における親世代になることに対する意識尺度を作成し,信頼性と妥当性を検討する.方法:予備調査により48項目の尺度原案を作成した.A県内の高校生786名を対象に質問紙調査を実施し,内的整合性と構成概念妥当性を検討した.結果:回収数762名,有効回答数703名であった.因子分析及び信頼性の検討の結果,【子どもとの関わりに対する意識】【親子関係に対する意識】【親になることに対する意識】【夫婦や社会で子育てすることに対する意識】【子どもや子育てに対する関心・感情】【子育てに対する不安】の6下位尺度33項目で構成された.既知集団妥当性と確証的因子分析により,一定の構成概念妥当性が確保された.各下位尺度のCronbach’s α係数は0.76から0.94で概ね良好な値が得られた.結論:作成した親世代になることに対する意識尺度の信頼性と妥当性は概ね確保できた.
著者
高窪 美智子 西村 真実子 津田 朗子 関 秀俊 田屋 明子 井上 ひとみ 林 千寿子
雑誌
石川看護雑誌 = Ishikawa Journal of Nursing (ISSN:13490664)
巻号頁・発行日
vol.3, no.1, pp.11-20, 2005-08

育児における暴力・暴言の実態と背景要因を明らかにすることを目的に,3ヵ月・1歳半・3歳時健診を受診した母親を対象にアンケート調査を実施し,537名より有効回答(36.1%)を得た.このうち,「夜泣き」など(3ヵ月児)・「いたずら」など(1歳半児)・「お漏らし」など(3歳児)のいずれかの育児場面で困難を伴ったことがあると回答した376名(平均年齢30.0±4.1歳)のうち,思いきり叩いたり暴言を繰り返し言うことが「よく」または「時々」あると回答した者は156名であった.こうした「虐待イエロー」状態の母親は他の母親と比べ,実父との相性が良くない,妊娠を望んでいなかった,もともと子どもが嫌い,わが子が好きになれない,と回答した者が有意に多かった
著者
宮川 しのぶ 津田 朗子 西村 真実子 木村 留美子 稲垣 美智子 笠原 善仁 小泉 晶一 関 秀俊
出版者
日本小児保健協会 = The Japanese Society of Child Health
雑誌
小児保健研究 (ISSN:00374113)
巻号頁・発行日
vol.61, no.3, pp.457-462, 2002-05-31
参考文献数
21
被引用文献数
3

小学3年から高校3年までの1型糖尿病患児38名の学校生活での療養行動とそれに伴う困難感を検討した. 療養行動をしている割合は, インスリン自己注射81.6%, 血糖自己測定44.7%, 間食, 補食摂取31.6%であった. 療養行動の施行場所は, 小学生では主に保健室であったが, 中高生ではトイレや教室が多く, 94.7%の児がいずれかの療養行動を行っており, その50%が「しにくい」と感じていた. 困難感を抱く理由には, 療養行動を不思議がられたり, 特別視されることによるものが多い. また97.4%が低血糖症状を経験していたが, 病気や療養行動を知られたくないために我慢をする場合や, 保健室に行くことがあった. 以上から多くの患児が学校での療養行動に困難感をもっているため, さらなる学校現場での正しい理解と環境作りが必要と考えられた.
著者
金川 克子 山岸 映子 田村 須賀子 西村 真実子 大木 秀一 杵淵 恵美子 伴 真由美 浅見 洋 曽根 志穂 梅山 直子 高窪 美智子 杉原 敏雄 田中 理 吉村 香代子
出版者
石川県公立大学法人 石川県立看護大学
雑誌
石川看護雑誌 (ISSN:13490664)
巻号頁・発行日
vol.4, pp.1-9, 2007

石川県立看護大学はJICAの依頼のもとに,タジキスタン共和国の母子保健の向上に資する目的で,2005年から概ね3年間の予定で「母と子の健やか支援プロジェクト」の企画,運営を通して,支援活動に加わることになった.その一環として2005年10月から12月まで,タジキスタンより研修員6人を受け入れ,県内の他機関との協力のもとで,研修を実施した.本旨は研修プログラムの企画,内容,評価等の実施状況と,研修のありかたについての考察についての報告である.研修の目的はわが国における母子保健や公衆衛生活動の現状を理解するのみでなく,研修員がこれらの成果を生かして,自国での母子保健の改善や新しいプログラム開発に向けてのアクションプランを作成し,実践することが課せられている.われわれもその目的に向けての研修のあり方の工夫が必要である.(著者抄録)