著者
李 明恩 駒 貴明 岩崎 正治 浦田 秀造
出版者
日本ウイルス学会
雑誌
ウイルス (ISSN:00426857)
巻号頁・発行日
vol.72, no.1, pp.7-18, 2022 (Released:2023-10-27)
参考文献数
96

南米出血熱とは南米大陸におけるアレナウイルス科マーマアレナウイルス属のウイルスによる出血熱の総称である.南米出血熱には1. フニンウイルス感染によるアルゼンチン出血熱,2. サビアウイルス感染によるブラジル出血熱,3. ガナリトウイルス感染によるベネズエラ出血熱,4. マチュポウイルス感染によるボリビア出血熱,そして5. チャパレウイルス感染による出血熱の計5つが含まれる.これらのウイルスは系統学的,血清学的,そして地理的にラッサウイルス等が含まれる旧世界アレナウイルスと異なる新世界アレナウイルスに分類される.本稿では,南米出血熱の原因となる新世界アレナウイルスについてその基礎と感染予防・治療法研究の現状を概説する.
著者
谷 英樹 浦田 秀造
出版者
日本ウイルス学会
雑誌
ウイルス (ISSN:00426857)
巻号頁・発行日
vol.68, no.1, pp.51-62, 2018
被引用文献数
2

アレナウイルスはアレナウイルス科に属するウイルスの総称で,ほぼヒトに病原性を示さないリンパ球性脈絡髄膜炎ウイルス(LCMV)から,ヒトに高い病原性を示すラッサウイルス,フニンウイルス,マチュポウイルス,チャパレウイルス,ルジョウイルス,サビアウイルス,グアナリトウイルスまで数多く存在する.上記のうちLCMV以外は,世界保健機関(WHO)の定めるリスクグループ4の病原体であり,これに基づき日本でも一種病原体に指定されている.日本ではこれまでにラッサ熱患者の一輸入例を除き,患者の発生は認められていないものの,2014-16年に起こった西アフリカ地域でのエボラウイルス病アウトブレイクのように,いつ我が国で輸入症例が発生しても不思議ではない状況にある.病状や重篤性を考えると,流行地域でのワクチンや治療薬の整備は喫緊の課題であり,流行地域以外の国においてもこれらを整備しておくことは重要である.しかしながら,高病原性アレナウイルス感染症に対する基礎研究や治療薬の開発は,病原体の性質上,高度安全研究施設での取り扱いが必須となり,なかなか進んでいない.本稿では,最近のアレナウイルス全般の基礎研究と抗ウイルス薬の開発状況について概説する.
著者
安田 二朗 黒﨑 陽平 浦田 秀造 Uche Sonny Unigwe
出版者
長崎大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2013-04-01

ラッサウイルスによって引き起こされるラッサ熱は致死性の高い感染症であり、西アフリカ、特にナイジェリアでは深刻な問題となっている。本研究では、他の地域よりも高い致死率が報告されている南東部で2012年から2016年にかけてラッサ熱疑い患者から血清121検体を採集し、解析した。RT-PCR検査の結果、32検体がラッサウイルス陽性であった。ウイルス遺伝子の分子遺伝学的解析からこの地域においてウイルスは抗体等の選択圧力を受けることなく遺伝学的に高度に保存された状態で長期間維持されていることが明らかになった。また、病態の重篤化に腸管出血性大腸菌O157:H7の感染が関わっている可能性も示唆された。