著者
平田 文 石坂 正大 沢谷 洋平 柴 隆広 浦野 友彦
出版者
一般社団法人 日本老年医学会
雑誌
日本老年医学会雑誌 (ISSN:03009173)
巻号頁・発行日
vol.58, no.1, pp.134-142, 2021-01-25 (Released:2021-02-25)
参考文献数
20
被引用文献数
5

はじめに:要介護高齢者が地域で生活を続けるためには,サルコペニアなどの老年症候群の徴候を早期に発見し,適切な対応をしていくことが重要である.本研究の目的は,地域在住の要支援・要介護高齢者における嚥下機能の特徴を調査し,嚥下機能,栄養状態,サルコペニアなどの身体機能の関連性を明らかにする.方法:対象は,通所リハビリを利用している要支援1,2,要介護1の高齢者90名(男性55名,女性35名,平均年齢77.2±8.3歳).調査項目は,聖隷式嚥下質問紙,20品目摂取可能食品数調査,サルコペニアの簡易スクリーニング方法であるSARC-F,舌圧,握力,骨格筋指数(SMI),簡易栄養状態評価表(MNA-SF)だった.結果:聖隷式嚥下質問紙で「嚥下障害あり」「嚥下障害疑い」と判定された嚥下機能不良群は75名(83.3%),「嚥下障害無し」と判定された嚥下機能良好群は15名(16.7%)だった.対象者の30%以上に症状を認めた質問は,「食事中にむせることがありますか」「食べるのが遅くなりましたか」「硬いものが食べにくくなりましたか」だった.嚥下機能を従属変数とし,6つの調査項目全てを独立変数として強制投入したロジスティック回帰分析の結果,SARC-Fにおいて有意差を認めた(OR 1.994,95%CI 1.154~3.446,p=0.013).判別的中率は82.8%だった.結論:地域在住の要支援・要介護高齢者は嚥下障害のリスクが高く,特に咀嚼を含む口腔期に症状を呈していることが明らかになった.さらに,嚥下機能とSARC-Fに関連性を認めた.サルコペニアを早期に発見し予防することは,嚥下障害を防ぎ在宅生活を継続するために重要であることが示唆された.
著者
浦野 友彦
出版者
一般社団法人 日本内科学会
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.110, no.3, pp.577-584, 2021-03-10 (Released:2022-03-10)
参考文献数
11
著者
柴 隆広 沢谷 洋平 広瀬 環 石坂 正大 久保 晃 浦野 友彦
出版者
一般社団法人 日本老年医学会
雑誌
日本老年医学会雑誌 (ISSN:03009173)
巻号頁・発行日
vol.57, no.2, pp.149-154, 2020-04-25 (Released:2020-05-29)
参考文献数
21
被引用文献数
1

目的:通所リハビリテーション利用者のサルコペニアの有病率を明らかにする.また,サルコペニアとなりうる危険因子を明らかにする.対象:当事業所の利用者104名を対象(男性56名,女性48名,平均年齢78.6±7.7歳)とした.方法:サルコペニアの診断はAWGSの診断アルゴリズムを基準に分類した.サルコペニアの危険因子の調査では①脳血管疾患,②高血圧,③呼吸器疾患,④循環器疾患,⑤整形疾患,⑥骨折,⑦がん,⑧難病,⑨糖尿病,⑩過去1年間の転倒歴の10項目を調査した.結果:有病率はサルコペニア51.9%であった.サルコペニアの危険因子として「がん」「転倒歴」の項目に有意差が認められた.結語:要支援・要介護高齢者(特にがん,転倒歴を有する者)はサルコペニアのリスクが非常に高く,早期からの介入が望まれる.

1 0 0 0 OA SERMの分子医学

著者
浦野 友彦
出版者
一般社団法人 日本老年医学会
雑誌
日本老年医学会雑誌 (ISSN:03009173)
巻号頁・発行日
vol.43, no.2, pp.147-151, 2006-03-25 (Released:2011-03-02)
参考文献数
18

古くより更年期障害ならびに閉経後骨粗鬆症に対してエストロゲン補充療法が用いられてきた.しかし, 大規模臨床試験であるWHI試験において乳癌ならびに虚血性心疾患ならびに脳卒中が指摘されたため, この治療法が用いられることは少なくなった. 一方, 皮肉なことにWHI試験ではエストロゲンによる明らかな骨折予防効果が認められ, エストロゲンシグナルの骨における活性化は骨粗鬆症において重要であることが再確認された. 近年, エストロゲン様作用を臓器特異的に有するSERMが開発され, その一つであるラロキシフェンが臨床の現場で用いられるようになった. 大規模試験であるMORE試験でもラロキシフェンの骨粗鬆症に対する効果は認められ, 有害事象も少ないことから骨粗鬆症におけるあらたなホルモン補充療法として注目されている. さらに近年, 分子生物学的アプローチによりSERMによる組織特異的分子作用機構が急速に解明されつつある. 今後, さらなる検討により骨粗鬆症のみならず閉経後女性の広範囲の疾患改善さらには抗老化作用を視野にいれたホルモン補充療法としてSERMが用いられることが期待される.