著者
西村 俊 海老谷 幸喜
出版者
The Japan Petroleum Institute
雑誌
Journal of the Japan Petroleum Institute (ISSN:13468804)
巻号頁・発行日
vol.60, no.2, pp.72-84, 2017-03-01 (Released:2017-05-01)
参考文献数
140
被引用文献数
6 10

持続的な生産が可能なバイオマス由来資源から化成品・燃料を合成する触媒化学変換法は,持続可能な社会を実現する上で重要な技術の一つである。我々は,石油由来資源の変換プロセスで蓄積した触媒技術とナノテクノロジー研究での知見を生かし,金属担持触媒の調製とバイオマス由来資源から化成品 ・燃料を供給するプロセス技術の開発を行っている。本総合論文では,バイオマス由来の5-ヒドロキシメチルフルフラール(HMF),グリセロールおよびα,ω-ジオールをターゲット物質とした選択的酸化反応に関する我々の触媒開発プロセスと最近の動向を紹介する。HMFとグリセロールの選択酸化反応では,塩基性担体を使用することで外部からの均一系塩基の添加を必要としない酸化反応を実現した。また,脂肪族ジオール類の選択酸化反応では,担持金属活性点のバイメタル化と反応系のpH制御が有効であることを明らかとした。
著者
海老谷 幸喜 西村 俊 高垣 敦
出版者
触媒学会
雑誌
触媒 (ISSN:05598958)
巻号頁・発行日
vol.55, no.5, pp.283-286, 2013

非可食性バイオマス関連物質の化成品や燃料原料への変換反応技術の開発は,エネルギー・環境・食糧問題の観点から急務である.最近では,反応後に中和処理を必要とする塩酸,硫酸,水酸化ナトリウム,量論酸化試剤などを用いる従来法から,固体触媒を利用するクリーンなプロセスの開発が求められている.本稿では,フラン類,グリセリン,カルボン酸,糖類,グルコサミン類に代表されるバイオマス由来物質の固体触媒による酸化的変換技術について,特に環境に優しい過酸化水素や分子状酸素を酸化剤に用いる報告例を紹介する.
著者
西村 俊 Choudhary Hemant 海老谷 幸喜
出版者
高エネルギー加速器研究機構
雑誌
Photon Factpry Activity Report 2015 (ISSN:13446339)
巻号頁・発行日
vol.33, pp.BL-8B/2014P017, 2016

活性点となる金属種を活性炭や酸化物等に固定化させた触媒 (不均一系金属触媒) の高活性化は重要な研究課題の一つである. 当研究グループでは,多孔性配位高分子 (PCP: Porous Coordination Polymer) を新たに合成し,各種有機合成反応に飛躍的な活性向上をもたらすPCP 担体 (AZC と称す) の開発に成功した. 例えば,Pd を担持したPd/AZC 構造体を鈴木―宮浦カップリング反応に適用した所,空気中での歴代最高活性を達成し (触媒回転数TON > 2,100,000,ブロモベンゼン基質),空気中での最高TON = 990,000を発現するデンドリマー内包Pd 触媒のおよそ2 倍の値であり,水素バブリングという特異条件下で報告があるPd@USY 触媒のTON = 13,000,000に次ぐ高活性である. さらに,本Pd/AZC 触媒は,種々の鈴木―宮浦カップリング反応,溝呂木―ヘック反応および各種水素化反応にも優れた活性を示し,Pd 以外の金属種では,例えばRu を担持したRu/MOF-AZC触媒がアルコール類の好気性酸化反応に対し活性を有することが明らかとなりつつある.本研究では,高機能不均一系金属触媒の創生に対し普遍的な高活性化担体となりうるAZC 構造体について,その特異的な高活性発現機構の解明に向けて,放射光X 線回折装置による構造評価を試みた.PFACR Users' Reports