著者
西村 俊 海老谷 幸喜
出版者
The Japan Petroleum Institute
雑誌
Journal of the Japan Petroleum Institute (ISSN:13468804)
巻号頁・発行日
vol.60, no.2, pp.72-84, 2017-03-01 (Released:2017-05-01)
参考文献数
140
被引用文献数
6 10

持続的な生産が可能なバイオマス由来資源から化成品・燃料を合成する触媒化学変換法は,持続可能な社会を実現する上で重要な技術の一つである。我々は,石油由来資源の変換プロセスで蓄積した触媒技術とナノテクノロジー研究での知見を生かし,金属担持触媒の調製とバイオマス由来資源から化成品 ・燃料を供給するプロセス技術の開発を行っている。本総合論文では,バイオマス由来の5-ヒドロキシメチルフルフラール(HMF),グリセロールおよびα,ω-ジオールをターゲット物質とした選択的酸化反応に関する我々の触媒開発プロセスと最近の動向を紹介する。HMFとグリセロールの選択酸化反応では,塩基性担体を使用することで外部からの均一系塩基の添加を必要としない酸化反応を実現した。また,脂肪族ジオール類の選択酸化反応では,担持金属活性点のバイメタル化と反応系のpH制御が有効であることを明らかとした。
著者
内木 武虎 小畠 健 渡邊 学 横尾 望 宮元 敬範 中田 浩一
出版者
The Japan Petroleum Institute
雑誌
Journal of the Japan Petroleum Institute (ISSN:13468804)
巻号頁・発行日
vol.62, no.6, pp.303-308, 2019-11-01 (Released:2019-11-01)
参考文献数
11

スーパーリーンバーンにおいては,タンブル比を上げるなどエンジン技術による燃焼限界(リーン限界)の拡大が図られているが,さらなるリーン限界拡大のためには新しい燃料技術と組み合わせることが重要であると考えられる。本研究では,タンブル比を変更した2種類のエンジンを用い,燃料化学種がリーン限界(IMEP変動率3 %になる空気過剰率)に及ぼす影響を評価した。その結果,燃料組成変更により,リーン限界をさらに拡大することが可能であることを確認した。また,燃料組成変更によるリーン限界拡大効果は,エンジン変更(タンブル比の違い)によるリーン限界拡大効果とほぼ独立していることを確認した。さらに,燃料の層流燃焼速度とリーン限界は良い相関を示した。
著者
安保 正一 山下 弘巳 河崎 真一 市橋 祐一
出版者
The Japan Petroleum Institute
雑誌
石油学会誌 (ISSN:05824664)
巻号頁・発行日
vol.38, no.5, pp.300-310, 1995-09-01 (Released:2008-10-15)
参考文献数
32
被引用文献数
3 3

高活性な酸化チタン系触媒を二酸化炭素と水の存在下で光照射すると, 二酸化炭素の還元固定化反応が進行する。粉末酸化チタンやゾル-ゲル法調製Ti/Si複合酸化物を光触媒とした場合には主にメタンが, イオン交換やCVD法調製固定化酸化チタン (担体: 多孔性ガラス, ゼオライト) ではメタン, メタノールおよび一酸化炭素が生成する。反応収率は, 触媒や担体の種類, (水/二酸化炭素) 比, 反応温度などにより著しく変化する。UV, XAFS, ESR, FT-IR, XPSおよびホトルミネッセンスなどの手法で, 触媒の構造と励起状態のキャラクタリゼーションを行ったところ, 高活性な高分散酸化チタン触媒の活性種は孤立状態で存在する四配位酸化チタン種の電荷移動型励起種 (Ti3+-O-)*であることが分かった。また, 反応中間体の検討などから, 酸化チタン系触媒を光触媒とする二酸化炭素の水による固定化は, 二酸化炭素から一酸化炭素さらには炭素ラジカルの生成を経由する反応であると考えられる。
著者
神名 麻智 木村 直人 山下 康貴 柳田 高志 松村 幸彦
出版者
The Japan Petroleum Institute
雑誌
Journal of the Japan Petroleum Institute (ISSN:13468804)
巻号頁・発行日
vol.56, no.5, pp.326-330, 2013 (Released:2013-11-01)
参考文献数
15
被引用文献数
6 6

草や木に代表されるリグノセルロース系バイオマスから効率よくエネルギーを生産することは,今後のエネルギー生産において非常に重要な課題である。リグノセルロース系バイオマスからエタノールを生産する過程の一つである水熱前処理はその処理過程で,後の処理段階である発酵を阻害する物質類を生成する。これらの発酵阻害物質は酵母の増殖,発酵に影響を及ぼすことが知られているが,定量的な整理は行われておらず,反応器の設計には困難が生じている。本研究では4種類の発酵阻害物質について酵母増殖に与える影響を実験的に確認,Monod式にフィッティングさせ,発酵阻害物質のMonod式のパラメーターに及ぼす影響を確認した。
著者
藤原 康雄 吉田 栄一 野崎 信義 長沢 隆夫
出版者
The Japan Petroleum Institute
雑誌
石油学会誌 (ISSN:05824664)
巻号頁・発行日
vol.28, no.1, pp.47-53, 1985-01-01 (Released:2008-10-15)
参考文献数
8

MTBEを高オクタン価基材としてガソリンに調合する場合, MTBE混合の影響が二, 三の実用性能にどのように現れるかを検討した。ターボチャージャ塔載および非塔載の自動車において走行オクタン価と実験室オクタン価(RON, MONおよびDON) との関係, ならびにエンジンの暖機性評価の尺度であるウォームアップ時間およびスタンブル消失時間とガソリンの70°C留出量との関係はいずれもMTBE混合の有無にかかわらず同一の関係式で整理できる。またガソリン中に存在するMTBEは酸化触媒である第二銅イオンに対して金属不活性剤として作用し, ガソリンの酸化安定性 (誘導期間) を延長させる効果がある。
著者
小沢 泉太郎 鳥谷 淳 荻野 義定
出版者
The Japan Petroleum Institute
雑誌
石油学会誌 (ISSN:05824664)
巻号頁・発行日
vol.31, no.4, pp.328-334, 1988-07-01 (Released:2008-10-15)
参考文献数
22

重質油反応の経時変化測定を容易にするため, 簡易ミクロボンブ反応器を考案し, 450°C, 水素初圧7.9MPa, 反応時間9-180minの条件で, エイコサンの水素化分解反応の検討に供した。生成物は, 主に炭素数1-19のパラフィンと炭素数2-19のオレフィンであった。これら生成物の初期分布には規則性があり, 反応がC20→Cj+C20-j(j=1-10) で始まり, j=1がもっとも生じにくく, j=2がこれに次ぎ, j≧3になると, ほぼ等率で分解することがわかった。パラフィンとオレフィンの初期生成率の相互関係も, 上記分解パターンに矛盾しないものであった。液体スズ触媒は, 初期分解パターンにほとんど変化を与えないが, 分解速度を抑制する弱い負触媒作用をすることがわかった。
著者
加藤 覚 川崎 順二郎
出版者
The Japan Petroleum Institute
雑誌
石油学会誌 (ISSN:05824664)
巻号頁・発行日
vol.30, no.1, pp.1-6, 1987-01-01 (Released:2008-10-15)
参考文献数
5
被引用文献数
5 5

モデル改質ガソリンおよび灯油を炭化水素原料, イソオクタンを溶媒として, 乳化型液膜による炭化水素の回分抽出実験をかくはん槽を用いて行った。その結果, 改質ガソリン中の芳香族成分に対する最大収率として85%, n-ヘキサンを基準成分とする選択度として14という高い値が得られた。また接触操作開始時の選択度と平面水膜を想定して得られる理論選択度との間に良い相関関係が得られ, 改質ガソリンに対するその関係とナフサに対するその関係は良く一致した。一方, 灯油中の芳香族炭化水素の透過速度はナフサあるいはガソリン中のそれに比べて遅いが, 接触後20分における収率として70%という高い値が得られた。
著者
阿部 容子 鳥羽 誠 望月 剛久 葭村 雄二
出版者
The Japan Petroleum Institute
雑誌
Journal of the Japan Petroleum Institute (ISSN:13468804)
巻号頁・発行日
vol.52, no.6, pp.307-315, 2009 (Released:2010-01-01)
参考文献数
22
被引用文献数
10 14

魚油が混入した廃食用油利用の観点から,まず魚油脂肪酸メチルエステル(FAME)の酸化劣化による変化を評価し,次いで貴金属触媒を用いて部分水素化した魚油FAMEの酸化安定性について検討を行った。魚油FAMEは酸化によりアルデヒド類,カルボン酸類,ケトン類および大量のスラッジなど多種の分解生成物を生じた。FAMEの酸化反応性はその不飽和度に比例し,魚油FAMEの主成分である4価以上の二重結合を有する多不飽和FAMEはほぼ完全に酸化された。元素分析やFT-IRの結果から,スラッジはケトン類,エステル類およびカルボン酸類による大量の酸素を含有していることが分かった。ゲル浸透クロマトグラフにより測定した数平均分子量から,スラッジは多不飽和FAMEを主としたおよそ10分子のFAMEの重合により形成していると考えた。バイオディーゼル燃料に混入した魚油の酸化安定性を改善するために,Pd-Pt/Yb-USY-Al2O3触媒を使用して魚油FAMEを部分水素化した。ここでは,魚油混合廃食用油のモデル油とするため,魚油FAMEを菜種油FAMEに混合したものを水素化原料とした。2価以上の不飽和FAMEは1価不飽和FAMEおよび飽和FAMEへと選択的に水素化された。水素化FAMEは酸化によりスラッジを生成せず,酸化安定性は未処理油と比較して大幅に向上した。水素化FAME混合軽油の酸化安定性は石油系軽油とほぼ同等であった。多不飽和FAMEの部分的水素化は酸化安定性向上とスラッジ形成の抑制に効果的であることが分かった。
著者
藤田 陽師 福重 透也 松田 泰河 秦 隆志 西内 悠祐 坂本 正興
出版者
The Japan Petroleum Institute
雑誌
Journal of the Japan Petroleum Institute (ISSN:13468804)
巻号頁・発行日
vol.64, no.1, pp.10-16, 2021-01-01 (Released:2021-01-01)
参考文献数
28
被引用文献数
2 4

気-液有機反応に対し,気体反応物をファインバブルとして導入できる新しい旋回液流型のファインバブル有機反応装置を開発した。ベンズアルデヒドの分子状酸素による酸化反応をモデル反応として,酸素ファインバブルによる気-液有機反応の反応促進効果を評価した。その結果,O2ファインバブルを用いることで顕著な反応促進効果が得られることが確認された。この反応促進は選択率の向上よりもむしろ転化率の向上が大きく影響していることが判明した。転化率が90 %となる反応時間を同じ流量のエアレーション手法と比較すると,約1/5に反応時間が短縮されていた。通常のサイズの泡と比較して体積あたりの表面積が大きい,浮遊速度が遅い,溶媒中のガスの過飽和を保持できる等のファインバブルの持つユニークな特性が転化率向上に大きく影響したと考えられる。
著者
佐藤 時幸
出版者
The Japan Petroleum Institute
雑誌
石油学会誌 (ISSN:05824664)
巻号頁・発行日
vol.43, no.3, pp.173-181, 2000-05-01 (Released:2008-10-15)
参考文献数
23
被引用文献数
1 1

近年, 時代対比精度が飛躍的に向上した石灰質ナンノ化石と, その生態学的特徴から古環境解析に重要な有孔虫化石に基づいて, 石油鉱床が形成されるまでの構造発達史を検討した。日本海の成立は, 門前階最上部の砂れき層より発見された石灰質ナンノ化石群集から前期中新世末のNN4帯であり, 最も古く見積もって1820万年前までさかのぼる。近年, 積極的に探鉱が行われている新潟地域のグリーンタフ火山岩貯留岩は, この日本海形成前後に形成されたが, 同様に油ガス田の貯留岩となっている秋田地域の玄武岩類は, 含まれる石灰質ナンノ化石に基づくと新潟地域の火山岩貯留岩より若く, 日本列島の中国大陸からの分離と関連した火山活動と結論される。秋田地域の油田構造の完成は海岸線沿いに位置する北由利衝上断層の形成によるもので, その時期は石灰質ナンノ化石から172万年前頃で, それと同時に石油根源岩が熟成レベルへ到達, 油田構造へ石油が移動した。一方, 石油根源岩は一般に女川階, または寺泊階でその能力が高いことが知られていたが, 有孔虫化石から当時の古海洋を復元した結果, 当時の新潟たい積盆地は強い還元環境を示すことが明らかになったほか, 復元された古海洋からすると, 石油根源岩となりうる有機物のたい積は長岡市西方の南北に位置する地域にたい積したと推定される。
著者
羽部 浩 新保 外志夫 山本 拓司 佐藤 俊 島田 広道 榊 啓二
出版者
The Japan Petroleum Institute
雑誌
Journal of the Japan Petroleum Institute (ISSN:13468804)
巻号頁・発行日
vol.56, no.6, pp.414-422, 2013 (Released:2014-01-01)
参考文献数
12
被引用文献数
19 24

近年,バイオエタノールが化学品製造における重要な原料となっている。バイオエタノール中の不純物が,下流の化学品製造プロセスで使用する触媒の性能に影響を及ぼす可能性があるため,17種のバイオエタノールサンプルについて不純物の分析を行った。リグノセルロース系バイオエタノールは,糖・デンプン系バイオエタノールと比較して,高濃度かつ多種類の有機不純物を含んでいた。特に,リグノセルロース系バイオエタノールは,高濃度の酢酸,アセトアルデヒド,メタノールおよびフルフラールのようなフラン系化合物を含んでいた。また,リグノセルロース系バイオエタノールは,有機硫黄系不純物としてジメチルジスルフィドおよびチアゾールを含んでいたのに対し,糖・デンプン系バイオエタノールからは,ジメチルスルフィドおよびジメチルスルフォキシドが検出された。加えて,リグノセルロース系バイオエタノールからは,0.1 μg/mL以上のSiが検出された。
著者
中村 宗和 赤沼 耕一 大塚 啓一 鈴木 羚至
出版者
The Japan Petroleum Institute
雑誌
石油学会誌 (ISSN:05824664)
巻号頁・発行日
vol.16, no.7, pp.572-577, 1973-07-01 (Released:2009-01-30)
参考文献数
15

The dehydrogenation of 2, 3-dimethylbutane, 3-methylpentane and methylcyclopentane over Pt-C catalyst was studied at low conversion levels and temperatures ranging from 400 to 480°C, under the hydrogen atmospheric pressure.The dehydrogenated products included all possible alkenes and cycloalkenes possessing the same skeletal structures as raw materials and were approximately in thermodynamic equilibrium at conversions as low as 8%. The compositions of these product mixtures observed at 460°C were: 43% 2, 3-dimethyl-1-butene and 57% 2, 3-dimethyl-2-butene; 9% 3-methyl-1-pentene, 11% 2-ethyl-1-butene, 31% 3-methyl-cis-2-pentene and 49% 3-methyl-trans-2-pentene; 68% 1-methylcyclopentene, 20% 3-methylcyclopentene, 10% 4-methylcyclopentene and 2% methylenecyclopentane in each skeletal hydrocarbons, respectively.At the initial step of the reaction, however, it was shown that 2, 3-dimethyl-1-butene, 3-methyl-1-pentene and 3-methylcyclopentene were formed beyond their thermodynamic equilibrium compositions, respectively.It was found that the rate of the dehydrogenation was influenced by the ratio of hydrogen to hydrocarbon and that in the absence of hydrogen the reaction did not proceed at all. The reaction rate increased with the molar ratios, being constant at the molar ratio of one and above.These results suggested that the hydrogen played an important role on the dehydrogenation mechanism over Pt catalyst used in the present study.
著者
永瀬 紀生
出版者
The Japan Petroleum Institute
雑誌
石油学会誌 (ISSN:05824664)
巻号頁・発行日
vol.14, no.2, pp.101-105, 1971-02-25 (Released:2009-01-30)
参考文献数
6
被引用文献数
1 1

Relationship between the adsorption characteristics of synthetic zeolites and a number of water adsorption-desorption cycles was investigated with a specially designed test apparatus illustrated in the text.The Na-A, (Na, K)-A and faujasite type synthetic zeolites were stable in their crystal structure at a temperature of 700°C for more than several days under the atmospheric condition. However, water adsorption rate of (Na, K)-A type zeolite after repeated several tens of water adsorption (at the room temperature)-thermal desorption cycles (below 300°C) in the apparatus was considerably decreased with increasing the number of cycles, scarcely adsorbing methanol. In the case of Na-A type zeolite after the same treatment, the propylene adsorption rate was decreased, but the decrease of water adsorption rate was not observed. The crystal structures of both resultant zeolites were preserved, as confirmed by X-ray diffraction.From these results, it is believed that the pore size of zeolite shrinked, these phenomena being attributable to the influence of high temperature water vapor that was generated from the zeolite during the thermal desorption process.Faujasite type synthetic zeolite, treated in the same apparatus under the same conditions, was investigated for adsorption of 1, 3, 5-trimethylbenzen, but no such phenomenon as in the case with the A-type zeolite was observed.
著者
加藤 昌弘 村松 輝昭 田中 裕之 森谷 信次 柳沼 福夫 一色 尚次
出版者
The Japan Petroleum Institute
雑誌
石油学会誌 (ISSN:05824664)
巻号頁・発行日
vol.34, no.2, pp.186-190, 1991-03-01 (Released:2008-10-15)
参考文献数
3
被引用文献数
1 2

私達は, 先にアルコール-軽油混合液の沸点挙動について報告した1)。今回, アルコール-軽油混合溶液の液密度について検討した。使用した6種類のアルコールは, メタノール, エタノール, 1-プロパノール, 2-プロパノール, 1-ブタノール, 2-メチル-1-プロパノールである。さらに, 軽油の代表成分としてセタンを選び, メタノール-セタン, エタノール-セタン系についても検討した。密度測定には Anton-Paar 社製のデジタル密度計を用いた。Table 1に使用したアルコール, セタン, 軽油の物性値を示す。Figs. 1~3とTables 2~6に今回298.15Kで得られた密度データを示す。298.15Kにおいてメタノール-軽油, メタノール-セタン, エタノール-軽油, エタノール-セタン系で不均一領域が得られた。Tables 3~6に不均一となった4種の系について得られた密度データを示す。2液相領域では上相, 下相をそれぞれ取り出し密度を測定した。密度データの交点から相互溶解度を求めた。精度は軽油系で約±0.01, セタン系で約±0.001重量分率である。Table 7に今回求めた相互溶解度をそれぞれ示す。次に, メタノールあるいはエタノール10gと軽油10gからなる不均一混合溶液に第三成分として水を加え, 密度挙動を測定した。Tables 8, 9とFigs. 4, 5に測定結果を示す。Figs. 4, 5における実線の交点でアルコール相と軽油相が等密度となる。等密度エマルション混合溶液は相分離に時間がかかり, 自動車用エンジンにほぼ均一な供給が可能になる。
著者
深瀬 聡 丸山 文夫
出版者
The Japan Petroleum Institute
雑誌
石油学会誌 (ISSN:05824664)
巻号頁・発行日
vol.37, no.6, pp.611-619, 1994-11-01 (Released:2008-10-15)
参考文献数
19
被引用文献数
7 7

ベンチスケールの水素化精製装置を用いて, フレッシュおよび実機使用済みのNi-Mo/Al2O3触媒を使用し, 種々の条件下でFCC原料油であるVGOの前処理を行った後, 得られた生成油中のVGO留分についてMATを用いた接触分解試験を実施した。水素化精製の過酷度は, FCC原料油の組成とその接触分解特性に大きく影響を及ぼした。圧力3.9MPa, 温度400°C以上では熱分解の寄与が大きく, 水素化脱窒素がより起こりやすい条件である7.8MPaで水素化精製した時に比べ, VGO留分にはより多くの窒素と多環芳香族が含まれた。このため水素化分解率が高い3.9MPaでの水素化精製の場合には, 生成したVGOの接触分解率は大きく低下した。そして窒素, 多環芳香族, レジン等の原料油の性状とMAT分解率とを関連付ける式を提案した。
著者
Joshua Kyle STANFIELD 荘司 長三
出版者
The Japan Petroleum Institute
雑誌
Journal of the Japan Petroleum Institute (ISSN:13468804)
巻号頁・発行日
vol.65, no.3, pp.79-87, 2022-05-01 (Released:2022-05-01)
参考文献数
19
被引用文献数
2

シトクロムP450BM3(P450BM3)は,長鎖脂肪酸を水酸化する金属酵素である。P450BM3は長鎖脂肪酸と構造が大きく異なる非天然基質に対しては,通常は不活性状態のままであり,水酸化反応は進行しない。本総説では,長鎖脂肪酸に構造が似ているデコイ分子(疑似基質)を用いてP450BM3を騙し,長鎖脂肪酸以外の基質を水酸化させる独自のアプローチを解説する。デコイ分子を用いる手法は,野生型P450BM3をそのまま用いることができるだけでなく,適切なデコイ分子を開発することによって触媒活性を改善することができる利点を有する。デコイ分子を用いる反応系の最初の発見から,現在までの鍵となる進展をガス状アルカン水酸化に焦点を当てて紹介する。特筆すべきは,これまでに開発した高活性デコイ分子の一つであるN-enanthoyl-L-pipecolyl-L-phenylalanine (C7AMPipPhe)を用いると,高効率なエタン水酸化反応が進行し,触媒回転数(TOF)は毎分82.7回転に達することである。エタン水酸化の触媒回転数は,これまでに報告された全てのP450とそれらの変異体よりも高く,P450の最大活性を実現している。
著者
菊地 英一 小泉 明正 荒西 康彦 森田 義郎
出版者
The Japan Petroleum Institute
雑誌
石油学会誌 (ISSN:05824664)
巻号頁・発行日
vol.25, no.6, pp.360-363, 1982-11-01 (Released:2008-10-15)
参考文献数
9
被引用文献数
1 2

鉄を触媒活性成分として含む, 一連のグラファイト層間化合物 (LCG) を用いて, 一酸化炭素の接触水素化反応を研究した。反応は固定床流通反応装置を用いて400°C, 20atmの条件で行った。鉄LCG触媒は低級炭化水素の合成に活性があり, 二酸化炭素の生成が少なく, 一酸化炭素を有効に炭化水素に転化する2)。この反応における触媒活性中心は層間内の鉄であると考えられるが2), グラファイト表面に析出した鉄であるとの反論3)もある。著者ら4)は炭化水素合成に活性を示した鉄LCG触媒の磁化率測定を行って, 強磁性を示す鉄粒子が存在しないことを示し, 活性点はグラファイト層間にあることを主張した。本報ではまず塩化第二鉄 (FeCl3)LCG触媒を水素還元して得た触媒の活性と選択性を比較して, 還元条件の影響を調べた (Table 1)。塩化第二鉄を還元すると主に塩化第一鉄 (FeCl2) に還元され, 一部は金属鉄まで還元される。還元温度の上昇,還元時間を長くすることにより層間内の塩化第一鉄の量が減少し, それにともなって活性が低下し, 生成物分布が低分子量側に移行することがわかった。塩化第一鉄はグラファイトの層間を広げ, 反応物や生成物の拡散を容易にするスペーサーとして作用することが示された。この結果は活性中心がグラファイトの層間に存在するとする著者らの結論を支持する。グラファイトの層間に鉄以外の, もう一成分の金属塩化物を挿入したLCG触媒を調製して, その活性と選択性を調べた (Table 2)。調製方法は Croft5) の方法に準じた。まず第二成分の塩化物を400°Cで挿入し, ついで塩化第二鉄を300°Cで挿入した。塩化マンガンは生成物分布を高分子量側に移行するとともに, オレフィン生成を促進することが示された。他の添加物ではむしろメタンの占める割合が増加した。塩化マンガンのLCG自体は活性が低く, 硝酸マンガンを鉄LCGに担持しても効果がないことから, 塩化マンガンが効果を示すにはグラファイト層間に鉄と共存させることが必要であると結論された (Table 3)。鉄と塩化マンガンが共存したLCG触媒を高温還元すると, 活性は低下したが高分子量炭化水素の生成が抑制された。その結果生成物分布の幅が狭くなり, C2~C4炭化水素の合計は Schulz-Flory 分子量分布から予測される最大値 (55%) よりわずかではあるが大きくなった。
著者
谷口 泉 横山 拓己 浅野 康一
出版者
The Japan Petroleum Institute
雑誌
石油学会誌 (ISSN:05824664)
巻号頁・発行日
vol.41, no.3, pp.227-231, 1998-05-01 (Released:2008-10-15)
参考文献数
9
被引用文献数
1 1

小型スプレー塔を用いたガス吸収に関する実験的研究が, 二酸化炭素-空気-水酸化カルシウム水溶液系で噴霧液流量L=3~8×10-3kg/s, ガス流量G=0.5~2.0×10-3kg/sおよび供給ガス濃度y=0.1~1.0の範囲で行われた。二酸化炭素の無次元吸収速度の実測値は, 供給ガス濃度がy≦0.2の場合, 不可逆二次反応を伴う固体球浸透モデルによる理論値と良好に一致した。しかしながら, 供給ガス濃度およびフーリエ数が増加するに伴い理論値からのずれが大きくなった。これは, 液滴の気液界面近傍における炭酸カルシウムの沈殿の形成によるものと思われる。
著者
大島 一真 中嶋 栞理 多田 昌平 菊地 隆司 里川 重夫
出版者
The Japan Petroleum Institute
雑誌
Journal of the Japan Petroleum Institute (ISSN:13468804)
巻号頁・発行日
vol.63, no.6, pp.388-393, 2020-11-01 (Released:2020-11-01)
参考文献数
27
被引用文献数
3

CO2とH2の混合ガスから一段でのジメチルエーテル(DME)合成を目的として,Cu系触媒とゼオライトの混合触媒の触媒性能を評価した。非晶質ジルコニアを担体とした担持銅触媒(Cu/a-ZrO2)とFER型ゼオライトの混合触媒は,CO2水素化に用いられるCu/ZnO/Al2O3とFER型ゼオライトの混合触媒よりも高いDME収率を示した。非晶質ジルコニアを担体とすることで,副反応であるCO生成が抑制されるため,高いDME収率を示したと考えられる。また,FER型ゼオライトはメタノール脱水に有効な酸点を有しており,これらの混合がCO2から一段でのDME合成に有効であることが示された。反応圧力1.0 MPa,反応温度230 ℃の条件でのDME選択率は,その条件での平衡組成である40 %に近い値を示しており,Cu/ZnO/Al2O3との混合触媒よりも約2倍のDME生成量を達成した。
著者
加藤 恒一 深瀬 聡 石橋 泰 山本 学
出版者
The Japan Petroleum Institute
雑誌
石油学会誌 (ISSN:05824664)
巻号頁・発行日
vol.40, no.6, pp.529-533, 1997-11-01 (Released:2008-10-15)
参考文献数
8
被引用文献数
2 2

固定床による新しいライトナフサ芳香族化 (LNA) プロセスを開発するため, 2250 BPD規模のデモンストレーションプラントによる実証化研究を行った。ペンタンを主成分とするライトナフサの芳香族化反応は, 従前は触媒の劣化が激しいため連続再生型か, またはスウィング再生型の反応器を用いるものであった。新規に開発されたゼオライト触媒を充てんした固定床反応器を中心とする実証化プラントにより転化率95wt%以上, 芳香族収率50wt%以上を与える1000h以上の長期連続運転が達成された。実証化プラントは, 通常タイプの重質ナフサ改質用の固定床プロセスの反応セクションを転用して建設され三個の断熱反応器および生成物の分離セクションを備えている。触媒再生は反応を中断して行う半再生式である。再生後の触媒を抜き出して, 物性, 活性を測定し, 本触媒の安定性を確認した。