著者
西村 俊 Choudhary Hemant 海老谷 幸喜
出版者
高エネルギー加速器研究機構
雑誌
Photon Factpry Activity Report 2015 (ISSN:13446339)
巻号頁・発行日
vol.33, pp.BL-8B/2014P017, 2016

活性点となる金属種を活性炭や酸化物等に固定化させた触媒 (不均一系金属触媒) の高活性化は重要な研究課題の一つである. 当研究グループでは,多孔性配位高分子 (PCP: Porous Coordination Polymer) を新たに合成し,各種有機合成反応に飛躍的な活性向上をもたらすPCP 担体 (AZC と称す) の開発に成功した. 例えば,Pd を担持したPd/AZC 構造体を鈴木―宮浦カップリング反応に適用した所,空気中での歴代最高活性を達成し (触媒回転数TON > 2,100,000,ブロモベンゼン基質),空気中での最高TON = 990,000を発現するデンドリマー内包Pd 触媒のおよそ2 倍の値であり,水素バブリングという特異条件下で報告があるPd@USY 触媒のTON = 13,000,000に次ぐ高活性である. さらに,本Pd/AZC 触媒は,種々の鈴木―宮浦カップリング反応,溝呂木―ヘック反応および各種水素化反応にも優れた活性を示し,Pd 以外の金属種では,例えばRu を担持したRu/MOF-AZC触媒がアルコール類の好気性酸化反応に対し活性を有することが明らかとなりつつある.本研究では,高機能不均一系金属触媒の創生に対し普遍的な高活性化担体となりうるAZC 構造体について,その特異的な高活性発現機構の解明に向けて,放射光X 線回折装置による構造評価を試みた.PFACR Users' Reports
著者
栗原 良将 加藤 潔 石川 正 藤本 順平 近 匡
出版者
高エネルギー加速器研究機構
雑誌
特定領域研究
巻号頁・発行日
1999

本グループにより開発されている、GRACEと呼ばれるファインマン振幅の自動生成プログラムを改良し、QCD(強い相互作用を記述する場の量子力学的理論)の高次補正効果を取り入れたイベント・ジェネレータ(仮想事象生成プログラム)を作成するための研究を継続して行った。平成14年度までに、QCDの高次効果を含む計算を効率よく行うためのGRACEの改良を行い,3点相互作用までのループ補正を含んだ実効相互作用関数をGRACEに加えるとともに、QCDに特有の赤外発散を取り除き安定した数値計算を行うための「主要対数項差し引き法」を開発した。引き続き,平成15年度においては4点ループ補正(ボックス・グラフ)の計算を行うための開発を行った。4点ループ積分では,次元正規化法により赤外発散を取り除く方法を採用し,そのための積分公式を用意した。これは,複雑な分子を持つループ積分を解析的に行い,超幾何関数で表現するもので,この超幾何関数を次元正規化法による特異点(極)の周りで展開することにより,必要な積分の値を得ることができる。従来の方法に比べ、計算時間が短く、数値的に安定となる利点がある。また,GRACEによる散乱振幅の生成も,次元正規化法に適合するように改良し,ボックス・グラフを含むループ補正の振幅を自動的に生成できるようになった。現在,この方法を,格子+ジェット生成反応や重いボソン(Wボソン・Zボソン)+ジェット生成反応に応用し,ループ補正を含んだイベント・ジェネレーターの開発を行っている。また,ツリー近似によるイベント・ジェネレーターであるGR@PPAにおいても,取り扱うプロセスの数を増やして,より実用的なものにして,広く実験グループに公開した。
著者
山根 功 高野 進 二宮 重史 入江 吉郎
出版者
高エネルギー加速器研究機構
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
1999

中性子散乱実験の為の中性子源には、これまで原子炉が使用されてきた。しかし、世界的な傾向として原子炉は老朽化しており、これに代わる加速器を用いた大型のパルス中性子源の開発研究が必要になった。新しい中性子源は、高速に加速された陽子(正電荷をもつ素粒子)とタングステン等の重金属との核破砕反応で発生する中性子を利用する。本研究は大強度の陽子ビームを安定に供給するための加速器技術を日本、米国及び英国の三ヵ国で共同研究するものである。主な問題点は、ビーム負荷に打勝って安定な加速を行うこと、空間電荷力によるビーム不安定を回避すること、及び避けられないビーム損失をどのように処理するか、の3点である。現在世界最高の陽子ビーム出力をもつ加速器は、英国ラザフォードアプルトン研究所のISISシンクロトロンで、出力は160キロワットである。この加速器に、3ヵ国の共同出資で開発した非常に低い出力インピーダンスをもつ新しい高周波加速装置を平成14年度に導入し、次世代の大型パルス中性子源に必須の技術である「ビーム負荷及び空間電荷力を制御する新しい方式」を確立することが本共同研究の目的である。平成12年10月、英国よりセカンドハーモニック加速空洞及びバイアス電源が、また米国より陽極電源が高エネルギー加速器研究機構に搬入され設置が完了した。日本の担当である新しい高周波増幅器は平成13年2月に製作を完了した。これは高い電圧利得と広帯域を有しながら、出力インピーダンスはカソードフォロワーと同程度(約20オーム)という極めてユニークな装置である。3月には米国の共同研究者2名を招聘しシステムの全体調整試験及びシステムパラメータの測定を行った。また、空間電荷力を考慮した加速器内粒子のシミュレーションを行う為に、カナダより専門家一人を招聘した。
著者
高崎 史彦 STAMEN Rainer
出版者
高エネルギー加速器研究機構
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2003

現在、高エネルギー加速器研究機構においてはB-ファクトリー加速器、KEKB、とBelle実験装置が順調に稼動し、このタイプの電子・陽電子ビーム衝突型加速器としては世界最高の性能を実現している。これに伴い、Belle実験はこれまでに最大のB中間子崩壊のデータを収集した。現在、このデータの解析を精力的に行い、多くの学術論文として発表してきた。Belle実験においては、高い頻度でビーム衝突が繰り返され、膨大な粒子反応が観測される。このうちから、興味ある事象のみを効率よく選び出し記録することが実験の成功の鍵を握る。現在、KEKB加速器の性能は当初の計画値を超えて優れた性能を発揮して折り、これに対応してBelle実験のデータ収集効率を改善する必要に迫られている。Stamen氏はグループの他のメンバーと共同してBelle実験のイベントトリガーシステムの改善を試み、データ収集能力を飛躍的に向上させた。一方、物理解析においては、B中間子崩壊のうち、K中間子とパイ中間子のみを終状態に含む崩壊反応を詳細に分析し、これらの反応におけるCP対称性の破れと、他の反応で観測されているB中間子崩壊におけるCP対称性の破れとの比較検討を行い、標準理論を越えるような現象の存在の有無を研究している。