著者
田川 晴菜 窪田 和巳 山口 さおり 深堀 浩樹
出版者
一般社団法人 日本看護管理学会
雑誌
日本看護管理学会誌 (ISSN:13470140)
巻号頁・発行日
vol.17, no.1, pp.48-56, 2013 (Released:2018-12-28)
参考文献数
9

本研究は,看護政策に携わる看護職の現在の職業・立場につくまでの経験を明らかにし,彼らの意見から看護職の看護政策に関する興味・関心を高める方略についての示唆を得ることを目的とした.看護政策へ携わる看護職6名を対象に半構造的インタビューを実施し,質的に分析した.分析の結果,看護政策に携わる看護職の現在の職業・立場につくまでの経験として「看護政策に関心を持ったきっかけとなった経験」,「看護政策への理解を深めた体験」,「周囲の人々から対象者への反応」の3カテゴリーが,看護政策に関する興味・関心を高める方略についての意見や考えとして「看護政策への関心を高める上での障害」,「看護政策への関心を高めるために考えられる取り組み」の2カテゴリーが得られた.将来看護政策に携わりたいと考える看護職にとって,看護政策に直接携わる人との関わりが重要であるとともに,基礎教育の段階で医療・看護政策に関する内容を学び,看護以外の分野の知識や海外の医療制度・看護実践について知ることが有益であることが示唆された.また,今後より多くの看護職が看護政策に関心を持つようになるための体制を考える上で,多忙な臨床現場でも効率的に看護政策に関する情報が得られる環境整備や看護職の情報リテラシーを高める取り組み,若年層に対するアプローチが重要であることが示唆された.
著者
杉山 智子 松井 典子 深堀 浩樹 須貝 佑一
出版者
順天堂大学
雑誌
医療看護研究 (ISSN:13498630)
巻号頁・発行日
vol.4, no.1, pp.1-9, 2008-03

本研究は,アルツハイマー型中期認知症患者にADLケアを行うときに生じる抵抗に際した望ましい認知症ケアのあり方を検討することを目的とした。老人病院認知症病棟に入院中の自立歩行可能なアルツハイマー型中期認知症患者7名とケアスタッフ20名を対象に患者1人あたり各40時間の参加観察法を実施した。ケア開始時に抵抗がみられた場面のうちケアの完了時に患者の笑顔が伴った場面のケアを「満足できたケア」,伴わなかった場面のケアを「満足できなかったケア」,ケアが完了できなかった場面のケアを「中断したケア」とし,声かけ,ケア所要人数ならびに時間について,統計学的分析を行い,それぞれのケアの特徴を検討した。各ケアとケア所要時間との関連では,排泄,身支度,食事で「満足できたケア」は「満足できなかったケア」よりもケア達成までの時間が有意に長かった。また声かけとの関連では,「満足できたケア」の方が「満足できなかったケア」よりも,ケア中の日常会話が有意に多く観察された。ケア抵抗時におけるかかわりにおいて,時間をかけ,日常会話を取り入れてケアを行うことで患者が満足できる,すなわち望ましいケアの実現に結びつくと考えられた。