著者
深澤 義正 灰野 岳晴
出版者
The Society of Synthetic Organic Chemistry, Japan
雑誌
有機合成化学協会誌 (ISSN:00379980)
巻号頁・発行日
vol.54, no.5, pp.419-426, 1996-05-01 (Released:2009-11-16)
参考文献数
39
被引用文献数
3 4

有機合成の標的化合物は複雑な構造を持っているものが多く一般に多段階の反応を経て合成されることが多い。それらの合成経路のうち重要な反応についてその生成物が立体化学を含めて正しく予測されれば, 合成経路の確立に大いに役立ち有機合成の経済効率の向上に著しく寄与するものと思われる。したがって, 信頼性の高い反応予測技術の開発は非常に重要である。ここで紹介した非経験的分子軌道計算と分子力学計算を組み合わせた遷移状態モデリング法やMC法を用いた溶媒和計算は, その信頼性の高さからいって十分現実的な使用に耐え得るものと思われ今後の発展が期待される。
著者
深澤 義正
出版者
広島大学
雑誌
重点領域研究
巻号頁・発行日
1993

[2,3]-Wittig転位反応は、代表的なC-C結合生成反応の一つであり、協奏的シグマトロピー転位で進行すると考えられている。多置換二重結合をもつ誘導体の[2,3]-Wittig転位反応では、生成する炭素-炭素結合上に新たな不斉中心が生成し、合成的に極めて有用な手法と考えられている。この反応の遷移状態については現在までに三つのモデルが提案されていた。我々は、これらのすべての遷移状態の詳細な構造を非経験的分子軌道法を用いて求めることに成功した。固有反応座標の解析により、その内の一つは段階的機構に対応することがわかった。しかし、段階的機構は活性化エネルギー(MP2/6-31+G^*〓3-21Gレベル)の点からは他の二つの協奏機構よりも有利であることがわかった。段階的機構においては、Liと同じ側に広がったアニオン軌道を使って二重結合に攻撃しており、アニオン中心の立体化学が保持されるように反応が進行することがわかった。これに対してて二つの協奏機構のうちの一つはアニオン中心の立体化学が反転する機構で反応が進行していることが明かとなった。我々は更に、これらの遷移状態の構造を用いて、大環状アリルエーテルにおける転移反応の立体選択性についてab initio-MM2遷移状態モデリング法を用いて解析を行った。この方法では反応に直接関与する反応中心部位の構造に上で求めた遷移状態の構造を用い、反応に直接関与しない部位をMM2で計算し、分子全体の遷移状態の構造とエネルギーを求めるものである。計算の結果は大環状アリルエーテル中のジエンの幾何異性の違いによる不斉転写反応による選択的なアルコール体への変換をよく説明できる事が明かとなった。
著者
深澤 義正 笛吹 修治
出版者
The Society of Synthetic Organic Chemistry, Japan
雑誌
有機合成化学協会誌 (ISSN:00379980)
巻号頁・発行日
vol.55, no.12, pp.1124-1133, 1997-12-01 (Released:2009-11-16)
参考文献数
28
被引用文献数
3 4

Determination of significantly populated conformers in an extremely flexible molecule such as macrocycles is a matter of long standing interest. We have developed a useful and very reliable method for the conformational analysis using a combination of molecular mechanics calculations and chemical shift simulation method. The method utilizes the calculation of the change in chemical shift of a proton produced by nearby substituents. The induced chemical shifts due to anisotropy effect of aromatic ring have been proven to be a useful geometrical probe of structures. Examples of the successful conformational analysis for macrocyclophane and supramolecular complexes of calixarenes with apolar guests including C60 and C70 are presented.