著者
北村 章 深田 剛毅
出版者
東亜大学
雑誌
東亜大学紀要 (ISSN:13488414)
巻号頁・発行日
vol.8, pp.11-20, 2008-06

株式会社不二家が消費期限切れの牛乳を使用してシュークリームを製造し、埼玉県により食品衛生法に基づき定められた埼玉県食品衛生法施行条例に規定する管理運営の基準に違反するとされた。この件に関して、食品衛生とコンプライアンスの観点から、食の安全・安心に関して論じた。不二家の自主検査によると、期限切れの牛乳に問題はなく、また、この牛乳を原料として製造したシュークリームも問題のないものであった。但し、この自主検査結果は原料としての使用時点では得られていない。牛乳の原料としての使用の可否は官能検査で判断できる部分もあり、使用時点では官能的に問題のない原料であったため、シュークリームの製造がなされたと推察される。結局、期限切れの牛乳は製造後に原料として使用可能と科学的に判断されたこととなる。食品衛生法およびJAS法は直接消費される食品の飲食に起因する衛生上の危害の発生防止を目的としているため、食品の原材料は両法の適用範囲外である可能性が高く、埼玉県は消費期限切れの牛乳を原料として使用したこと自体が違反ではなく、施設および食品等の取り扱い等に係る衛生上の管理運営違反とし、厳重注意どまりとした。結果的に問題のない原料であったにせよ、社会規範に照らして安全・安心な食品を製造するにしては、衛生管理や品質管理が経験と勘に依存した製造と言わざるを得ない。経験と勘を科学的・合理的な根拠に昇華させ明確な基準を設定した後に使用すべきであった。不二家の問題も含めた食品に関わる報道により、食の安全・安心を支える食品表示の信頼性が低下しているが、食の安全・安心のために食品に関する正しい情報を今後とも公開していく必要がある。
著者
深田 剛毅 小松 郁子 鳥井 昭美 都築 廣久 田代 昌士
出版者
Japanese Society for Food Hygiene and Safety
雑誌
食品衛生学雑誌 (ISSN:00156426)
巻号頁・発行日
vol.34, no.3, pp.227-231_1, 1993-06-05 (Released:2009-12-11)
参考文献数
10

クロコウジカビに対するピラゾール誘導体21種の抗かび性とそれら化学構造との関連性を検討した. なお, 抗かび性は初期効力とその持続性で評価し, 比較化合物には4-クロロ-m-クレゾール (1) を用いた. その結果, ピラゾール骨格自体 (2), 及び3, 5-ジメチル体 (4) などの16種類のピラゾール誘導体には抗かび性は全く認められなかったが, 2種類のフェニル誘導体: 3-メチル-5-フェニル体 (11), 3, 5-ジメチル-4-フェニル体 (21) と3種類の含硫誘導体: 3-アミジノチオメチル-5-メチル体 (13), 3-メチル-5-ピラゾイルメチル-N, N-ジメチルジチオカルバメイト (14) 及び3, 5-ジメチル-4-α-チオフェニル体 (22) には抗かび作用が発現し, フェニル基と含硫基による置換効果が観察された. そこで, 化学構造と活性相関性についても議論した.