著者
深道 和明 佐久間 昭正 梅津 理恵 笹尾 和宏 佐々間 昭正
出版者
東北大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2001

本研究では、非常に高いネール温度を示しGMR, TMR効果を示す多層膜の反強磁性材料として注目されているγ-Mn系合金およびL1_0型Mn系合金の基礎物性と電子状態を実験および理論の両面から調べることを目的としている。得られた成果を以下に示す。1.γ-MnRh系合金に関する研究Mn_3Rh規則相合金ならびに不規則相合金において磁化、電気抵抗、熱膨脹および低温比熱測定ならびにバンド計算を行った。この合金は、電子状態密度においてフェルミ面近傍にディップを形成することで反強磁性状態を安定化し、高いネール温度を実現していることが明らかになった。また、ネール温度の圧力依存性ならびに体積弾性率を詳細に調べた。2.γ-MnIr系合金に関する研究実用材料として注目されているγ-MnIr不規則相合金の磁気相図を明らかにした。磁気構造と格子歪みが密接に関連していることが分かっているが、fct構造からfcc構造への構造相転移温度と2Qから3Qへの磁気転移温度が必ずしも一致しないことを理論および実験の両面から明らかにした。3.L1_0型MhTM (TM=Ni, PdおよびPt)合金に関する研究非常に高いネール温度を有するL1_0型MnTM (TM=Ni, PdおよびPt)合金について磁化、電気抵抗および低温比熱測定、ならびに理論計算を行った。これらの合金系はフェルミ面近傍に擬ギャップを有する非常に特徴的な電子状態を有することが判明した。また、デバイス特性に関わる電気抵抗率の組成依存性を理論計算の結果と併せて、定性的に説明できることを明らかにした。4.L1_0型MnIr合金に関する研究L1_0型MnIr合金の電気抵抗および磁化測定ならびに電子状態に関する研究を行い、他のL1_0型MnTM合金と同様に擬ギャップ型反強磁性体であること、そしてMn系合金のなかで最も高いネール温度を有することを明らかにした。また、この合金系は低温において大きな磁場中冷却効果を示すことが判った。5.交換結合に関する研究γ-MnおよびL1_0型反強磁性合金の交換結合を古典的ハイゼンベルグ模型を用いて解析し、それらの計算結果と実験結果が極めてよい対応を示すことを明らかにした。
著者
二宮 敏行 深道 和明 竹内 伸 増本 健 新宮 秀夫 小川 泰
出版者
東京大学
雑誌
総合研究(A)
巻号頁・発行日
1986

クエイサイクリスタル(準結晶)は,從来の結晶学では存在しないとされていた対称性を持ち,1984年の発見以来,急速に発展しつつある新しい個体研究の分野である. 昭和63年度から重点領域研究「準結晶の構造と物性」が発足することを考慮し,本研究班の研究会は,広く準結晶に興味を持ち研究を進めている人人を含めて,62年11月に開催された.本年度の主な成果は次の通りである.1.準結晶構造の幾何学準結晶構造については,これまで主として,5回対称,20面体対称についての議論が多かったが,8回対称,24面体対称についての具体的モデルなどが提出された. これは,最近中国で実験的に見出された構造(NiーCr系)と対応するもので,準結晶の物理の具体的な広がりをもたらすものである.2.電子状態一次元系について,電子波束の伝播の様子の特異性などが調べられた. これは,重点領域研究で予定されている一次元準周期超格子中の電子の振舞についての実験に示唆を与えるものである. 一次元系の電子状態の理論的扱いに,新しくLie代数の方法などが提出された. また,二次元系についても,あるタイプの厳密解や,電気伝導などが調べられた.3.試料作成,物性準結晶に予想される特異な物性を実験的に観測するためには,良い試料を得ることが必須である. 普通の冷却法で作られ,融点直下での焼鈍に安定な準結晶Al_<65> Cu_<20> Fe_<15>が見出された. この試料は単相で0.2mmの大きさに達しており,成長機構の解明や物性の測定に重要な役割を果すと期待される. また, ひずみの小さな準結晶の作成のため,4元合金(磁性,非磁性のもの)の開発が行われた.