著者
末松 芳法 大谷 浩 今井 英樹 一本 潔 清水 敏文 花岡 庸一郎 宮下 正邦
出版者
国立天文台
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
1997

空間2次元同時での分光観測(以下では3次元分光観測と呼ぶ)は、天文観測研究者の究極の夢の一つである。本研究は太陽観測としては初めて真に3次元同時の観測を実現し、太陽活動現象の研究に適用したものである。3次元分光観測の技術としては様々な方法が夜の観測では適用されていた。一方、太陽観測では視野、空間分解能、波長分解能への要求が高く、3次元分光観測の実現は容易ではない。本研究では3次元分光観測の1つの手段であるマイクロレンズ・アレイを用いた方法を太陽観測に適用したものである。観測ではスペクトル線の観測が重要であるが、興味あるスペクトル線(Hαなど)では必要な視野、空間分解能、波長分解能を同時に満たす解があることが示せた。結果、マイクロレンズ・アレイも配列数の多いもの、CCDカメラもピクセル数多いものが必要であるが、今日の技術では十分実現可能であった。得られた光学系の設計解は、世界の多くの太陽観測装置に適用可能のものであり、本研究では米国国立太陽天文台サクラメント・ピーク天文台にて本装置の有用性を確かめることができた。特に空間分解能の高い観測では威力を発揮することが示せた。本研究の成果は、2次元像とスペクトル線プロファイル情報の同時取得により、フィルター観測と分光観測の利点を発揮できる観測法により、太陽観測法の新しい展望が開けた、とまとめることができる。具体的には、(1)本装置は既存の望遠鏡・分光器と組み合わせて容易にインストールすることができ、いろいろな太陽観測所の長所を生かした観測が可能であることを示した。但し、視野が狭いため追尾装置との併用が望ましい。(2)2次元同時分光データより、フィルター観測の長所である単色像を再現でき且つ分光器観測の長所である線輪郭解析が可能であることを示した。