著者
菊池 結貴子 江崎 和音 中島 悠 石川 遼子 伊與木 健太 正田 亜八香 音野 瑛俊
出版者
北海道大学 高等教育推進機構 オープンエデュケーションセンター 科学技術コミュニケーション教育研究部門(CoSTEP)
雑誌
科学技術コミュニケーション (ISSN:18818390)
巻号頁・発行日
vol.20, pp.3-13, 2017-01

近年,科学者と非科学者がテーブルを囲んで気軽に語り合う「サイエンスカフェ」が日本で広がりつつあり,開催回数・開催場所ともに急激に増加している.それに伴って,サイエンスカフェの形式も多様化してきており,現在では実に様々な形式のサイエンスカフェが開催・報告されている.本稿では,こうしたサイエンスカフェの多様性の一端として,著者らの運営するイベント「BAPcafe」を取り上げ,その運営方法と実施実績を詳述するとともに,実施記録や参加者へのアンケートをもとに,BAP cafeの特徴と効果および今後の課題について考察を行った.BAP cafeではサイエンスカフェの要素の一つである「わかりやすく説明すること」よりも,「専門的な内容について濃密な議論を展開すること」に重点を置いており,サイエンスカフェの新たな一形式として著者らは位置づけている.スピーカーと参加者の間のみならず,参加者同士,スタッフと参加者の間での対話が自然に起こり,議論が盛り上がる点が特徴であり,参加者からは,スピーカーとの距離が近く,“マニアック”な話題を共に楽しみながら深く議論を交わせるといった評価を得ている.専門性の高い内容はサイエンスカフェでは避けられがちであるが,BAP cafeではそれが長所となり,参加 者を獲得して継続的な開催につながっている.
著者
石川 遼子
出版者
東京大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2008

太陽観測衛星「ひので」によって発見された短寿命水平磁場について以下の研究を遂行した。第一の研究は、大きさ1000km以下の微細な短寿命水平磁場と大規模対流構造の関係についてのものである。私は、短寿命水平磁場が4000-8000km程度の中間粒状斑と呼ばれる対流構造の沈み込みの部分に密集していることを発見した。この結果は、短寿命水平磁場が1000km程度の粒状斑だけでなく、より大きな対流構造にも影響を受けることを示しており、対流と磁場の相互作用に関して新たな知見をもたらした。この成果はアストロフィジカルジャーナルレター誌にて発表した。第二の研究は、短寿命水平磁場と「ひので」以前からその存在が知られていた垂直磁場との関係についてである。私は水平磁場と垂直磁場の空間分布に着目し、これらが密接な関係にあることを発見した。さらに、垂直磁場は中間粒状斑とさらに大きな対流構造である超粒状斑の両方の沈み込み部分に密集しているのに対し、水平磁場は中間粒状斑の沈み込み領域のみに密集していることも明らかにした。私は、これらの観測結果から、太陽静穏領域磁場を統一的に理解するための新たな描像を得た。この成果はアストロフィジカルジャーナル誌に発表した。