著者
柴田 一成 一本 潔 浅井 歩
出版者
一般社団法人 日本物理学会
雑誌
日本物理学会誌 (ISSN:00290181)
巻号頁・発行日
vol.66, no.12, pp.896-904, 2011-12-05 (Released:2019-10-22)
参考文献数
47

日本の第3番目となる太陽観測衛星「ひので」が明らかにした最新太陽像について述べる.「ひので」衛星の最大の課題であるコロナ加熱問題は解明されたのか?黒点やフレアなどの電磁流体現象はどこまで明らかにされたのだろうか?あるいは,これまで誰も想像しなかったような新しい現象の発見はあったのか?本稿では,これらについて,打ち上げ後4年間あまりの観測成果を詳しく解説する.
著者
三浦 則明 桑村 進 一本 潔 馬場 直志 花岡 庸一郎 高見 英樹
出版者
北見工業大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2010

補償光学(AO)は、地球大気ゆらぎの影響による観測像の劣化を実時間で補正する技術である。本研究では、京都大学飛騨天文台の 60cmドームレス太陽望遠鏡で多目的に使用できる AOの設計を行った。また、補償が有効に働く視野を広げるためのマルチコンジュゲート補償光学系(MCAO)の開発も進めた。MCAOの光学設計には上空ゆらぎ層の高さの情報が必要である。ここでは、従来夜の観測で二重星を用いて開発されてきた SCIDAR技術を太陽観測にも適用できるように修正した。この方法を用いて、飛騨天文台の上空ゆらぎ層の高さを測定した。さらに、上空波面センサの開発し、MCAO装置を太陽観測に適用した。
著者
末松 芳法 大谷 浩 今井 英樹 一本 潔 清水 敏文 花岡 庸一郎 宮下 正邦
出版者
国立天文台
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
1997

空間2次元同時での分光観測(以下では3次元分光観測と呼ぶ)は、天文観測研究者の究極の夢の一つである。本研究は太陽観測としては初めて真に3次元同時の観測を実現し、太陽活動現象の研究に適用したものである。3次元分光観測の技術としては様々な方法が夜の観測では適用されていた。一方、太陽観測では視野、空間分解能、波長分解能への要求が高く、3次元分光観測の実現は容易ではない。本研究では3次元分光観測の1つの手段であるマイクロレンズ・アレイを用いた方法を太陽観測に適用したものである。観測ではスペクトル線の観測が重要であるが、興味あるスペクトル線(Hαなど)では必要な視野、空間分解能、波長分解能を同時に満たす解があることが示せた。結果、マイクロレンズ・アレイも配列数の多いもの、CCDカメラもピクセル数多いものが必要であるが、今日の技術では十分実現可能であった。得られた光学系の設計解は、世界の多くの太陽観測装置に適用可能のものであり、本研究では米国国立太陽天文台サクラメント・ピーク天文台にて本装置の有用性を確かめることができた。特に空間分解能の高い観測では威力を発揮することが示せた。本研究の成果は、2次元像とスペクトル線プロファイル情報の同時取得により、フィルター観測と分光観測の利点を発揮できる観測法により、太陽観測法の新しい展望が開けた、とまとめることができる。具体的には、(1)本装置は既存の望遠鏡・分光器と組み合わせて容易にインストールすることができ、いろいろな太陽観測所の長所を生かした観測が可能であることを示した。但し、視野が狭いため追尾装置との併用が望ましい。(2)2次元同時分光データより、フィルター観測の長所である単色像を再現でき且つ分光器観測の長所である線輪郭解析が可能であることを示した。
著者
宮崎 英昭 和田 節子 一本 潔
出版者
国立天文台
雑誌
一般研究(C)
巻号頁・発行日
1994

太陽内部の三次元構造とダイナミクスを探るために、太陽表面に見られる大規模な振動、速度場、磁場等を高い精度で測定し、太陽内部構造を研究しようとする目的で、我々は、新しい光学フィルター(磁気光学フィルター・MOF・Magneto Optical Filter)の開発を1986年に着手した。磁気光学フィルターは、極めて狭い透過巾、大きな透過率、波長の絶対精度が保障されているという、天体の速度場、磁場測定用として極めて優れた性能を持つフィルターであるが、その構造からくる不安定さのため、他国の研究開発に於ても、未だ完全なものは作られていなかった。このフィルターは、強い磁場中に化学的活性度の高い高温のナトリウム蒸気を長時間安定に保持し、磁気光学効果(逆ゼーマン効果とファラデー効果)を利用して、極めて狭帯域の透過帯を実現するもので、その製作は困難なものであった。MOFは、イタリアのCaccianiによって試作されたコールドセル型が存在するが、この方式は、フィルターセルの入出射窓の温度が、ほぼ室温に冷えているため、ナトリウム溜めを加熱して発生したナトリウム蒸気の一部が、露点現象でセルの内面に付着、反応して入出射窓が曇ってしまうため、長時間の使用に耐えない。我々は、半恒久的に使用できる高温ガス還流型のフィルターの開発を数年に亘り手懸けてきたが開発課程で見出だされた問題点を一つ一つ解決した結果、観測に応用できる安定なフィルターの製作に成功した。我々の開発したフィルターは、セル全体を一定の高温(200℃前後)に温度制御したホットセル型で、内面が曇ること無く、また、ナトリウムとの反応性の低い材料の開発等により、長時間に亙り使用可能なフィルターを実現した。ここに、その開発過程および成果について報告する。太陽表面の速度場データの取得が始まったばかりなので、データ解析の結果に関しては、今後、別の形で報告する事とする。