著者
清水 由文
出版者
桃山学院大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1998

アイルランドにおける家族研究は1930年代に西部アイルランドであるクレア州でアレンスパークと,キンポールによりはじめて調査されたのであり、彼らは機能主義からアイルランドの直系家族の存在を明,かにした。その後、ギボンとカーティンにより1970年代に1911年センサス原簿を利用した直系家族研究が本格的に開始された。そして現在ではアイルランド家族研究には19世紀中期以降2O世紀初頭にかけて直系家族が成立し、1950年以降の商品化の浸透とともに直系家族の解体と核家族への変動という理論的枠組から理解するパラダイムが現在定着している。本研究の研究課題はそのような研究史を踏まえたうえで、19O1年と1911年のセンサス原簿を史料として2O世紀初頭においてアイルランドにおける直系家族の存在の確認をすることである。直系家族の研究枠組みとして家族規範要因と家族状況要因から明かにした。そのような枠組みに基づいて、調査地として北西アイルランドにあるドニゴール州ラージイモアと南部アイルランドにあるテッペラリー州クロヒーンを選定し、家族分析を行った。とくに本研究は1901年と1911年センサス原簿を連結させて分析したことに特徴がある。ラージイモアは貧困地域、クロヒーンは比較的恵まれている地域というよう経済的にコントラストのある両地区で家族分析をおこなった。その結果、両地域ともに単純家族世帯が支配的形態であるものの、直系家族を含む拡大家族が存在し、それが家族規範として構造化されているものと判断された。しかもラージイモアでは本来の直系家族と水平的拡大家族の2つのタイプが顕在化しているが、クロヒーンで水平的拡大よりも垂直内拡大である直系家族タイプが優位であるという違いが明確に認められたのである。
著者
清水 由文 Yoshifumi Shimizu 桃山学院大学社会学部
出版者
桃山学院大学総合研究所
雑誌
桃山学院大学社会学論集 = ST. ANDREW'S UNIVERSITY SOCIOLOGICAL REVIEW (ISSN:02876647)
巻号頁・発行日
vol.37, no.2, pp.53-90, 2004-02-01

The aim of this study was to verify the hypothesis the Irish family had changed from the type of nuclear family to stem family between 19th century and 20th century. I use the data of Census Returns of 1821, 1841, 1851, 1901 and 1911 that is owned by National Archive in Dublin. I examined the prior works of F.J. Carney, K. O'Neill and V. Morgan & W. MaCafee and got some important knowledge from their works. I have analyzed the size of household, the structure of family, the age of the household head, the age of the children and the inheritance system. As the result of above analyzing we have the following conclusion. The type of simple family households with the partible inheritance system was dominated in the early 19th century, but after 1835 the type of household changed to extended family households and multiple family households with establishing the system of dowry and matchmaking and the impartible inheritance system after the Irish Famine.