著者
渡会 陽平
出版者
一般社団法人 日本科学教育学会
雑誌
日本科学教育学会年会論文集 44 (ISSN:21863628)
巻号頁・発行日
pp.21-24, 2020 (Released:2020-11-27)
参考文献数
11

本稿の目的は,小学校算数科において比例の式の乗法の意味づけを視野に入れた体系的な乗法の意味指導を行う必要性について言及することである.そのために,小学校第6学年の児童を対象として行った授業実践の結果をもとに,乗法の意味の拡張の指導を受けた子どもに生じうる比例の式の学習場面における問題点について考察をした.その結果,従来のように「対応」の関係の乗法を数値の関係として済ませてしまう指導では,乗法の意味にこだわりを持つ児童は納得することができないことと,児童が「対応」の関係の乗法を量を考慮して意味づけようとしても,その乗法の操作を適切に言葉で表現して意味づけることは困難であるし,場合によっては数学的に適切ではない意味づけをしてしまうことの2点を問題点として指摘し,それを解消するためには「対応」の関係の乗法に関わる要素を明らかにして,それらを体系的に配置して段階的に指導する必要があることを述べた.