著者
平田 豊誠 片井 ふく実 小川 博士
出版者
一般社団法人 日本科学教育学会
雑誌
日本科学教育学会年会論文集 44 (ISSN:21863628)
巻号頁・発行日
pp.461-462, 2020 (Released:2020-11-27)
参考文献数
7

河床堆積物の上流から下流にかけての細粒化の成因について,流水による砂礫の選択運搬作用が支配的要因だという説(選択運搬説)と流送砂礫の破砕・摩耗作用が支配的要因だという説(破砕・磨耗説)の2つの対立する要因があげられている.本研究では教員がそのどちらに依った認識を保持しているかの実態調査を行った.その結果,礫の粒径分布成因の認識は破砕・摩耗作用が優位を占め,要因として大きいと考えられている選択運搬作用があまり重要視されていないことが推察された.
著者
礒田 正美
出版者
一般社団法人 日本科学教育学会
雑誌
日本科学教育学会年会論文集 44 (ISSN:21863628)
巻号頁・発行日
pp.27-30, 2020 (Released:2020-11-27)
参考文献数
1

授業研究の世界展開過程で、日本型の考えることの教育を実現する系統的な教科書が各国政府より求められるようになった。各国への教科書翻案では、目標・系統を説明するターミノロジーの国際共有化研究が求められる。本稿では、Isoda, M., Olfos,R. (to appear)を前提に、かけ算の指導内容を特定するターミノロジーとその国際的共有の必要を示す目的から、各国が乗数、被乗数の扱いに関わって直面する矛盾、その解消法、その教育対象化への国際的な営みを例示し、各国と協同展開する数学教育学術用語の国際的研究開発動向を示した。
著者
渡会 陽平
出版者
一般社団法人 日本科学教育学会
雑誌
日本科学教育学会年会論文集 44 (ISSN:21863628)
巻号頁・発行日
pp.21-24, 2020 (Released:2020-11-27)
参考文献数
11

本稿の目的は,小学校算数科において比例の式の乗法の意味づけを視野に入れた体系的な乗法の意味指導を行う必要性について言及することである.そのために,小学校第6学年の児童を対象として行った授業実践の結果をもとに,乗法の意味の拡張の指導を受けた子どもに生じうる比例の式の学習場面における問題点について考察をした.その結果,従来のように「対応」の関係の乗法を数値の関係として済ませてしまう指導では,乗法の意味にこだわりを持つ児童は納得することができないことと,児童が「対応」の関係の乗法を量を考慮して意味づけようとしても,その乗法の操作を適切に言葉で表現して意味づけることは困難であるし,場合によっては数学的に適切ではない意味づけをしてしまうことの2点を問題点として指摘し,それを解消するためには「対応」の関係の乗法に関わる要素を明らかにして,それらを体系的に配置して段階的に指導する必要があることを述べた.
著者
橋本 美彦
出版者
一般社団法人 日本科学教育学会
雑誌
日本科学教育学会年会論文集 44 (ISSN:21863628)
巻号頁・発行日
pp.99-102, 2020 (Released:2020-11-27)
参考文献数
4

本研究は,理数教師の教科間連携の必要性を明らかにするために行った.理科「密度」の授業実践と意識調査の結果から,算数・数学科と理科の学習では単位の指導に違いがあることが明らかになった。例えば,算数科「単位量あたりの大きさ」の学習では,車の燃費を比較するとき,「1Lあたり○km走る」と解答し,「○km」が単位になる.しかし,理科「密度」の学習では,「1cm3当たり○g」を「○g/cm3」という単位で表す.小学校算数科の学習で,単位(燃費○km/L,人口密度人/km2,収穫高○t/haなど)や比較の指導を行った.この教科・教師間の連携により,子どもに両教科内容の関連意識やリンゴが水に浮く理由と密度との関係の理解が深まり,子どもの問題解決能力を高める効果があることが認められた.
著者
岡本 紗知
出版者
一般社団法人 日本科学教育学会
雑誌
日本科学教育学会年会論文集 44 (ISSN:21863628)
巻号頁・発行日
pp.407-408, 2020 (Released:2020-11-27)
参考文献数
3

文系・理系というのは基本的に学問上の区分だが、個人の特性などと結び付けられることでステレオタイプ化につながることがある。本研究は、この文系・理系を学生自身がどのように定義をしているのかを明らかにするために実施した。42名の半構造化インタビューデータから、学生が文系・理系を7つの着眼点に基づき分類することが明らかとなった。これら7分類は、「興味の対象」「技能」「知識生産の性質」「知識生産の方向性」「思考のプロセス」「思考の出発点」「思考の到達点」である。この中で、「思考のプロセス」に言及した学生が最も多く、ここには「文系は感情が許されるが、理系は感情を排除して考える」や「理系は論理的に考える」というものが見られた。しかし、例え同じ単語で表現されても学生により解釈が異なったことから、学生の文系・理系の定義は、ある程度の共通性があるものの、完全に一致することはないことが明らかとなった。
著者
中村 大輝 松浦 拓也
出版者
一般社団法人 日本科学教育学会
雑誌
日本科学教育学会年会論文集 44 (ISSN:21863628)
巻号頁・発行日
pp.539-542, 2020 (Released:2020-11-27)
参考文献数
7

本研究では,教育分野における授業実践の効果量分布がどのような分布に従うのかを検討した.過去のメタ分析における効果量を対象に,正規分布,指数正規分布,混合正規分布のフィッティングを試みた結果,正規分布の予測力が相対的に低いことが示された.また,指数正規分布によるモデリングを事例的に示した.本研究の結果は,効果量分布に正規分布以外の分布を仮定したモデリングを行うことで,将来の授業実践の効果量分布に関する予測力を高められる可能性を示唆している.
著者
喜多 雅一
出版者
一般社団法人 日本科学教育学会
雑誌
日本科学教育学会年会論文集 44 (ISSN:21863628)
巻号頁・発行日
pp.373-376, 2020 (Released:2020-11-27)
参考文献数
14

EUではHorizon 2020のワークプログラムの一つとして「Science with and for Society社会とともに社会のための科学」においてRRIが提案され, RRIの6つのディメンジョン1. 社会的関係者の関与, 2. ジェンダーの平等性, 3. オープンアクセス 4. ガバナンス, 5. 倫理性, 6. 科学教育を取り入れた様々な教育プロジェクトが実施され,教員向けの多数のモジュールや教材開発の成果が上がっている.その概要を述べ,日本の科学技術・イノベーション(STI)基本法が本年6月に施行されたが,日本の科学技術・イノベーション基本計画におけるRRIの影響やどのように取り込まれているかを検証し,科学教育での取り組みについて考察した.
著者
山本 容子
出版者
一般社団法人 日本科学教育学会
雑誌
日本科学教育学会年会論文集 44 (ISSN:21863628)
巻号頁・発行日
pp.527-530, 2020 (Released:2020-11-27)
参考文献数
9

アメリカの初等・中等教育段階の科学教育と関連づけた環境教育におけるネイチャージャーナリングの活用の特徴として,以下の点が挙げられる.1点目は,学校内における花壇,菜園の設置等,ネイチャージャーナリングのための環境整備である.2点目は,定期的で継続的なネイチャージャーナリングの時間の確保である.3点目は自然観察記録のみならず,人間と自然との関わりについての議論で考えたことなども含めた多様な記録である.これらの特徴は,日本の理科教育における自然観察活動や記録方法とも共通点が多いが,日本でもアメリカの実践のように,理科を主とした,人間と自然との関わりに関する全ての学習活動における描画や記述を,個人の冊子に継続的に記録することで,より一層,自然体験活動への意欲が高まり,子供たちが自分と自然との関わりについて考える機会が増える可能性がある.
著者
岸本 忠之
出版者
一般社団法人 日本科学教育学会
雑誌
日本科学教育学会年会論文集 44 (ISSN:21863628)
巻号頁・発行日
pp.17-20, 2020 (Released:2020-11-27)
参考文献数
9

本稿の目的は,小数の乗法の文章題における演算決定に関する様相モデルを明らかにすることである.演算決定に関する様相モデルとして,「様相1.比例関係の理解」「様相2.演算決定の根拠」「様相3.乗法の知識の組織化」の3つの様相を設定し,その段階における観点も示した.この様相に対して,児童が90×0.6となる文章題に関して行った演算決定の記述を例示した.その結果,除法を選んだ児童と乗法を選んだ児童において学習課題が異なること,また除法を選んだ児童は演算が誤りであることが意識されるため,演算決定の根拠や乗法の意味について理解が図られることが挙げられる.