著者
渡辺 信三
出版者
京都大学
巻号頁・発行日
1963

博士論文
著者
渡辺 信三 吉田 伸生 国府 寛司 重川 一郎 西田 孝明 池部 晃生
出版者
京都大学
雑誌
一般研究(C)
巻号頁・発行日
1992

確率解析をWiener空間上の解析学、特にMalliavin解析の方法を用いて研究した。Malliavin解析においては、Wiener汎関数のなすSobolev空間が導入され、その枠組でWiener空間上におけるSchwartg超関数の類似物であるW´iener超汎関数も定義される。このWiener超汎関数には、Donskerのデルタ関数をその代表とする正の超汎関数があり、これにはWiener空間上のエネルギー有限の測度が対応している。さらにこの概念に対応してWiener空間上に(r,P)-容量(capacity)の概念が定義され、Wiener空間上、Wiener測度に関し“ほとんどいたるところ"なりたつ諸性質を“quosi every where"でなりたつ性質に精密化できる。こうした方法は、Malliavin解析に関連して“quasi-sure analysis"と呼ばれ、確率解析において最近大きな注目をあつめている。このquasi-sure analysisにおける一つの研究成果として、(r,p)-容量に関する大偏差の原理が、Wiener測度に関するSchilderの定理と同じ形で成り立つことが示された。これを用いると、例えば、Strassen型の重複対数の法則を、almost everywhereの概念をquasi-sureの意味に精密した形で示すことが出来る。Donskerのデルタ関数が、どういう可積分および可微分指数のSobolev-空間に属するかについて、補間理論を用いて詳細に研究した。このことの応用として、Wiener空間上のある種の條件つき平均についてそのregnlarityがHolder連続性の言葉を用いて論ずることが出来た。さらにWiener空間におけるSobolev空間の概念を、より一般の可分な距離空間上で対称Markov半群が与えられた場合に一般化することが出来、またWiener空間上に限っても基礎になるOrnstein-Uhlenbeck作用素を一般化することによって一般化出来た。これらの一般化Sobolev空間は量子物理学に有効な応用をもつものと期待される。
著者
赤堀 次郎 渡辺 信三
出版者
立命館大学
雑誌
社会システム研究 (ISSN:13451901)
巻号頁・発行日
vol.4, pp.1-12, 2002-03-31

近代経済学の発展に数学や,数理統計学は重要な役割を果たしてきたが,近年,数理ファイナンスと呼ばれる新しい金融の理論においては,確率解析学(Stocahstic calculus)という比較的新しい数学が基本的な方法を提供している.そこでは,市場の数学モデルとして,株式等の証券の価格の時間変化のモデルが確率過程として定式化され,確率微分方程式を中心とする確率解析の方法を用いて研究が行われている.確率過程を数学的に構成する方法はいくつかあるが,数理ファイナンスの理論においては確率微分方程式の理論が有用である.数理ファイナンスの理論において,市場の完備性を考察する際には,確率過程の与える情報系-「filtration」や,そのfiltrationに関するmartingale(と呼ばれる確率過程)全体の集合の構造を知ることが基本的に重要になるが,その集合=空間の構造を調べる方法としては,確率微分方程式の方法がもっとも優れているからである.本稿では,まず,その確率微分方程式の理論を概観する.とくにその「弱い解」と「強い解」の相違について注意を喚起し,「強い解」の存在についての新しい結果を述べる.この結果は確率的流れ(stochastic flow)を先に構成し,そこから確率微分方程式の「強い解」を与える,という点で既存の方法とは異なる新しい手法である.その新しい理論の数理ファイナンスへの直接の応用についてはいまだ研究成果は出ていないが,結びでいくつかの注意を喚起しておく.