著者
渡辺 千仭 藤 祐司
出版者
研究・イノベーション学会
雑誌
研究技術計画 (ISSN:09147020)
巻号頁・発行日
vol.16, no.3, pp.184-202, 2003-09-19
被引用文献数
1

日本の技術と経済の好循環は,企業の旺盛な研究開発投資に支えられた技術革新によるものである。そして「日本的経営システム」には,若年労働者の賃金をその生産性以下におさえ,その差額を自らの将来の投資に向ける「見えざる出資]が存在しており,これが研究開発投資をはじめとする,長期の不確実性を有する投資の誘発に少なからぬ役割を果たした。この「見えざる出資」は自社内従業員から間接的に負担を求める点で社員持ち株制度(ストックオプション)と類似しているが,株式発行による資金調達と異なり,経営主体独自の判断で運用することができる日本固有の精妙なシステムである。しかし,1990年代のバブル経済の崩壊と軌を一にした低・マイナス成長や高齢化等のパラダイム変化とともに,「見えざる出資」の機能が低下するに至っている。昨今の研究開発投資離れは,これと無縁ではない。本研究においては,1980年までの日本経済のパフォーマンスと1990年代以降のそれとの好対照に視点を据えて,製造業主要業種の「見えざる出資」及び資本コストに占める研究開発投資の位置付け等の計測をベースに,以上の仮説的見解の実証を試みる。その結果,「見えざる出資」が,『若年期の賃金抑制→企業の内部留保蓄積→設備投資増加→企業成長→中高年の高賃金支払い』といったメカニズムを通じて企業成長力の原動力となっていることを示した。しかし,近年の高齢化・少子化・低,ゼロ成長等のパラダイム変化に伴い,企業側にとって上記メカニズムの持つメリットが失われてきていることもまた明らかであり,これからの技術形成に対する姿勢は,研究開発投資額の増大よりも,より効率的な投資を可能とするシステムの構築が重要となることを示した。

1 0 0 0 OA Un-captured GDP

著者
渡辺 千仭
出版者
研究・イノベーション学会
雑誌
研究 技術 計画 (ISSN:09147020)
巻号頁・発行日
vol.32, no.2, pp.100-101, 2017-07-28 (Released:2018-01-26)

The US Council on Competitiveness published a report "No Recovery – An Analysis of Long-term US Productivity Decline" in 2016 and suggested a measurement illusion.ICT advancement can be attributed to the dramatic advancement of the Internet which reacts to decrease prices of ICT due to its freebies, easy copying and mass standardization nature. It provides extraordinary services with a free culture but cannot be captured through GDP, leading to increasing dependency on un-captured GDP. This dependency corresponds to people preference shift from economic value to socio-cultural value that induces further advancement of the Internet and accelerates dependence on un-captured GDP.An ICT-driven disruptive business model is based on this new stream which has been demonstrated by Uber's ride-sharing revolution, transformation of education in the digitally-rich learning environments, resurgence of live-concert streaming music and co-evolution between gender balance improvement and ICT advancement in Finland.This special issue examines such disruptive innovation.