著者
井上 明子 井上 有史 鈴木 節夫 渡辺 裕貴 八木 和一 清野 昌一
出版者
一般社団法人 国立医療学会
雑誌
医療 (ISSN:00211699)
巻号頁・発行日
vol.43, no.11, pp.1157-1162, 1989-11-20 (Released:2011-10-19)
参考文献数
11

成人てんかん患者200人に意識調査を行い, 悩みについて分析した. 悩みとして選択された項目をクラスター分析により8種に分類した. 1. 発作をめぐる悩みはもつとも多く, 続いて, 2. 社会の無理解, 3. 結婚の悩み, 4. 就職の悩み, 5. 抗てんかん薬の副作用, 6. 治療継続の負担, 7. 対人関係・性格の悩み, 8. 日常生活・家庭での悩み, の順であつた. 1の発作をめぐる悩みはさらに3群, 1)発作発生の予測困難, 発作中の行動の不安, 2)社会を意識した悩み, 3)身体へ向かう悩み, に分けられた.これらの悩みの選択と, 患者の病態および調査票の他の質問項目の回答との関係を検討し, てんかんの心理社会的問題の背景を考察した.
著者
井上 有史 鈴木 節夫 渡辺 裕貴 八木 和一 清野 昌一
出版者
一般社団法人 日本てんかん学会
雑誌
てんかん研究 (ISSN:09120890)
巻号頁・発行日
vol.10, no.1, pp.1-9, 1992-03-31 (Released:2011-01-25)
参考文献数
44
被引用文献数
5 4

非言語性高次大脳機能を主誘発因とする反射てんかんの自験10例と文献に報告された64例を臨床・脳波学的に検討し, 次の諸特徴を抽出した. 1) 若年発症. 2) 誘発される発作型は全般発作で, 腕や手を中心とするミオクローヌスと大発作が主体であり, 欠神発作を合併することがある. 3) 脳波には中心部を中心とする全般性てんかん放電がみられ, これは特殊な神経心理学的賦活により誘発される. 4) 誘因は複雑な連続的空間的思考から随意運動へといたるプロセスにあると考えられ, 具体的には計算, 描画, 構成, 書字, チェスやカードなどのゲーム, 複雑な手指運動などであり, 随意運動の表象だけでも誘発される. 5) 精神緊張や注意集中は助長因子である.高次大脳機能により誘発される特発性反射てんかんは, 非言語性機能によって誘発される上記の一群と, 言語誘発てんかん (読書てんかんを含む) とに大別される. 本邦における非言語性高次大脳機能誘発てんかんの多さは言語誘発てんかんの少なさと対照的であり, 言語的・文化的背景が存在する可能性を指摘した.
著者
渡辺 裕貴
出版者
一般社団法人 日本てんかん学会
雑誌
てんかん研究 (ISSN:09120890)
巻号頁・発行日
vol.31, no.1, pp.74-78, 2013 (Released:2013-07-16)
参考文献数
12
被引用文献数
2 1

てんかん患者の数は小児よりも成人の方が数倍多いが、日本では成人を診療するてんかん専門医が少ないために、小児科医が子供だけでなく成人患者の一部をも診療している。今後はてんかんを専門とする神経内科医が増加して成人てんかんの診療の大きな部分を担うようになると予想されるが、精神症状を有するてんかん患者の治療では、精神科医と神経内科医との連携が必要である。 日本社会の高齢化に伴い高齢者てんかんが増加している。高齢者のてんかんは症状や治療法が若年者のそれとは幾つかの点で異なる。高齢者のてんかん発作は認知症と誤診されやすいのでそのことに留意が必要である。 精神症状を呈するてんかん患者では抗てんかん薬と抗精神病薬を併用することが多い。これらの薬剤は薬理作用や血中濃度で相互に影響を及ぼしあうので、併用時にはそれらの相互の影響について考慮する必要がある。
著者
谷口 豪 村田 佳子 渡辺 雅子 渡辺 裕貴 白戸 あゆみ
出版者
一般社団法人 日本てんかん学会
雑誌
てんかん研究 = Journal of the Japan Epilepsy Society (ISSN:09120890)
巻号頁・発行日
vol.30, no.1, pp.35-42, 2012-06-30
参考文献数
18

高齢発症のてんかんの原因は脳血管障害、腫瘍、認知症などの変性疾患が多いが、扁桃体腫大との関連を示唆する報告も最近見られている。<br> 今回我々は高齢発症の扁桃体腫大を伴った部分てんかんの患者を経験したので報告する。<br> 症例は64歳時から夜間の睡眠中に「突然激しく動き回る発作」が見られるようになり、その頃から健忘症状および嗅覚の低下などの症状があった。他院で認知症あるいは睡眠時無呼吸症候群と診断・加療されたが症状は軽快せず、当院でビデオ脳波を含む精査の結果、高齢発症の部分てんかんという診断に至った。carbamazepine開始後、発作は消失し健忘症状や嗅覚障害の改善を認めている。本症例では右側扁桃体腫大を認めており、過去のキンドリングラットを用いた実験や症例報告をもとに考察した結果、扁桃体が何らかのキンドリング刺激を受けて興奮が前部帯状回に広がり激しい運動発作を示したと考察した。<br>
著者
村田 佳子 渡邊 修 谷口 豪 梁瀬 まや 高木 俊輔 中村 康子 渡辺 裕貴 渡辺 雅子
出版者
JAPAN EPILEPSY SOCIETY
雑誌
てんかん研究 = Journal of the Japan Epilepsy Society (ISSN:09120890)
巻号頁・発行日
vol.30, no.1, pp.43-50, 2012-06-30

高齢発症側頭葉てんかんにおいて、健忘症、気分障害、睡眠障害、排尿障害、唾液分泌過多、低ナトリウム血症を認め、抗電位依存性カリウムチャンネル複合体(voltage-gated potassium channel:VGKC-complex(leucine-rich glioma inactivated1 protein:LGI-1))抗体陽性から、抗VGKC複合体抗体関連辺縁系脳炎(VGKC-LE)と診断した。本例は数秒間こみあげ息がつまる発作が1日100回と頻発し左上肢を強直させることがあった。Iraniらは、VGKC-LEの中で抗LGI-1抗体を有するものは、3~5秒間顔面をしかめ上腕を強直させるfaciobrachial dystonic seizures(FBDS)を報告しており、本発作は診断の一助となると考えられた。本例は、本邦において抗LGI-1抗体とFBDSの関連を指摘した最初の報告である。<br>
著者
高木 俊輔 永井 達哉 斉藤 聖 坂田 増弘 渡辺 裕貴 渡辺 雅子
出版者
一般社団法人 日本てんかん学会
雑誌
てんかん研究 (ISSN:09120890)
巻号頁・発行日
vol.28, no.3, pp.427-433, 2011 (Released:2011-02-01)
参考文献数
11

進行性ミオクローヌスてんかんの一型であるUnverricht-Lundborg病(ULD)は、他の進行性ミオクローヌスてんかんと比べて認知機能低下の進行が緩徐であり、他のてんかん症候群と見誤られる可能性がある。 今回我々はULDの原因遺伝子であるシスタチンB遺伝子について最も多い形式の異常は確認できなかったが、誘発電位でのgiant SEP所見や光過敏性、早朝覚醒時に目立つミオクローヌスや進行性の認知機能障害などの特徴的な症状に気付かれULDと臨床診断された症例を経験した。当症例は部分てんかんの診断のもとULDの症状、予後に悪影響のあるフェニトイン(PHT)の投与を長期間受けており、ミオクローヌスや認知機能低下が進行していた。PHTをクロナゼパム及びピラセタムに変更したところ症状に改善が得られた。 ULDはまれな疾患で診断には困難が伴うが、臨床的特徴を把握しておくことが重要と考えられた。
著者
村田 佳子 渡邊 修 谷口 豪 梁瀬 まや 高木 俊輔 中村 康子 渡辺 裕貴 渡辺 雅子
出版者
一般社団法人 日本てんかん学会
雑誌
てんかん研究 (ISSN:09120890)
巻号頁・発行日
vol.30, no.1, pp.43-50, 2012 (Released:2012-06-28)
参考文献数
21

高齢発症側頭葉てんかんにおいて、健忘症、気分障害、睡眠障害、排尿障害、唾液分泌過多、低ナトリウム血症を認め、抗電位依存性カリウムチャンネル複合体(voltage-gated potassium channel:VGKC-complex(leucine-rich glioma inactivated1 protein:LGI-1))抗体陽性から、抗VGKC複合体抗体関連辺縁系脳炎(VGKC-LE)と診断した。本例は数秒間こみあげ息がつまる発作が1日100回と頻発し左上肢を強直させることがあった。Iraniらは、VGKC-LEの中で抗LGI-1抗体を有するものは、3~5秒間顔面をしかめ上腕を強直させるfaciobrachial dystonic seizures(FBDS)を報告しており、本発作は診断の一助となると考えられた。本例は、本邦において抗LGI-1抗体とFBDSの関連を指摘した最初の報告である。