著者
渡辺 豊子 大喜多 祥子 福本 タミ子 山田 光江
出版者
一般社団法人日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会誌 (ISSN:13411535)
巻号頁・発行日
vol.30, no.4, pp.308-314, 1997-11-20
被引用文献数
3

ケーキバッターにおいては,製法により生じるバッター比重の相違が焼成中の温度上昇に影響を及ぼすと言われているため,撹拌程度を規制して3種の同一比重バッターを調製した。そしてこれらのバッターの物性を検討すると共に,この物性の影響を受けないモデル加熱法を考案し,バッターの熱伝導を調べ,バッターの熱の伝わりやすさやケーキ形状に及ぼすバターの有無・製法の影響をみた結果,1.撹拌規制によりスポンジとバタースポンジの両バッターは,共に流動性が増した。また同一比重の3種バッターの物性を比較すると,卵起泡のスポンジとバタースポンジはバター起泡のパウンドに比べ,柔らかく流動性があり,バッターの流動性にはバターの有無よりも製法が大きく影響するといえた。2.同一比重バッターの流動を抑えて一方向から加熱したモデル加熱Iの結果,スポンジは温度上昇が速く,バターを含むバタースポンジとパウンドの温度上昇は同程度遅れた。従ってバッターの熱伝導は製法の違いよりもバッター構成成分(バター有無)の影響を大きく受けるといえた。また加熱特性値を求めたモデル加熱IIからも同様の結果を得た。これらのことから成分の違いがバッターの有効熱伝導度に影響を与えることが認められた。3.既報でバタースポンジの温度上昇がパウンドほどには遅れなかった原因は,バタースポンジバッターの比重が小さかったためと考えられ,バッターの熱の伝わりやすさには有効熱伝導度よりも比重の影響が大きく関与すると考えられた。4.ケーキ形状は周囲部が焼き固まる時期に中央部の膨化が進行中か終了しているかで決まり,これにはバッターの熱の伝わりやすさが影響し,この熱の伝わりやすさには比重が大きく関与した。