著者
渡邉 幸佑
出版者
北海道大学 高等教育推進機構 オープンエデュケーションセンター 科学技術コミュニケーション教育研究部門(CoSTEP)
雑誌
科学技術コミュニケーション (ISSN:18818390)
巻号頁・発行日
vol.31, pp.39-50, 2022-09

科学研究費助成事業の研究計画調書に記載する項目の一つに,「研究課題の核心をなす学術的『問い』」がある.「研究課題の核心をなす学術的『問い』」を明確に書くことは,研究費の獲得のため重要なことである.URA は,研究支援業務の一環として,研究者が一通り記載した研究計画調書をチェックし,改善案を提案する.研究計画調書をチェックする際,「研究課題の核心をなす学術的『問い』」が明確に書かれているか判断する.「研究課題の核心をなす学術的『問い』」が明確でない場合,適切な改善策を提案することが求められる.しかし,「研究課題の核心をなす学術的『問い』」が明確であるか否か判断することは難しい.仮に,明確でないと感覚的には判断できたとしても,なぜ明確でないのか言語化することは難しい.熟練のURA であれば,「研究課題の核心をなす学術的『問い』」がなぜ明確でなく,どのように書き直せば良いのか,瞬時に自然と判断できるであろう.しかし,URA は新興の職種である.これから新たにURA になる者も多いはずである.そこで,本稿では,URA という職種のハウツーの集積として,「研究課題の核心をなす学術的『問い』」が明確であるとはどのようなことか,「研究課題の核心をなす学術的『問い』」を明確にするにはどうすればよいか,実例を改変した例を示しつつ解説する.
著者
渡邉 幸佑
出版者
日本読書学会
雑誌
読書科学 (ISSN:0387284X)
巻号頁・発行日
vol.64, no.1, pp.1-13, 2023-01-30 (Released:2023-03-02)
参考文献数
16

「事実」と「意見」の区別は重要視されているが,従来の区別の基準で「事実」と「意見」を明確に区別することは難しい。従来,書き手/話し手がどのような目的で述べたのかという観点は十分に検討されてこなかった。そこで,本稿では,発話行為論における適合方向性の概念を踏まえ,「事実として述べた文/発話」と「意見として述べた文/発話」を定義した。「言葉を世界へ」という適合方向を持つ,書き手/話し手が真であると思い述べた文/発話は,「事実として述べた文/発話」である。「世界を言葉へ」という適合方向を持つ,書き手/話し手が読み手/聞き手の信念を変化させようと述べた文/発話は,「意見として述べた文/発話」である。
著者
渡邉 幸佑
出版者
一般社団法人 情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.72, no.9, pp.358-361, 2022-09-01 (Released:2022-09-01)

大学の広報活動として,大学をPRするキャラクター(大学キャラクター)が創作されている。最近では,大学キャラクターがTwitterで大学に関する情報をつぶやく取り組みがある。本稿では,大学キャラクターがどのようにつぶやかれているか把握するため,Twitterのツイートを分析した。その結果,東京都立大学の大学キャラクター「ミヤコロン」は,「かわいい」や「鳥」としてイメージされていることが明らかになった。本稿で示した一連の方法は,Twitterにおける大学キャラクターのイメージ分析に有用であることが確認された。他の大学の大学キャラクターも含めて調査を行うなど,分析の発展が期待できる。
著者
渡邉 幸佑
出版者
一般社団法人 情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.73, no.5, pp.192-194, 2023-05-01 (Released:2023-05-01)

坂口安吾の作品について,先行研究によると1945年ごろを境に一人称が「僕」から「私」に転じ,ふたたび「僕」に戻ることも混用もなかったという。しかし,この先行研究は「僕」と「私」の頻度を数えたものではなく,直感による論考に留まる。そこで,本稿では,坂口安吾のエッセイを対象に,KH coder(計量テキスト分析のためのフリーソフトウェア)を用いて,「僕」と「私」の頻度を数え,一人称の変化について検証した。その結果,1945年以前に「私」のみを使用した作品があり,1945年以後に「僕」と「私」の混用があるとみられるものがあった。先行研究の指摘は必ずしも妥当するものではなく,「僕」と「私」の使い分けについてさらなる検討が必要である。
著者
渡邉 幸佑
出版者
一般社団法人 情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.72, no.11, pp.435-438, 2022-11-01 (Released:2022-11-01)

坂口安吾の作品について,先行研究では文体の平易化が指摘されているが,直感にもとづく論考であり,特定の言語表現について計量的に分析したものでない。本稿では,坂口安吾の作品についてテキストコーパスマイニングツールMTMineR(エム・ティ・マイナー)を用いて,漢字比率及び平均文長という観点から文体の平易化を計量的に検証した。その結果,漢字比率の減少傾向が確認された。平均文長については,1942年以降はそれ以前より平均文長が小さい。齋藤(2006)で指摘されてきた文体の平易化について,漢字比率及び平均文長という観点から計量的に裏付けた。