- 著者
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酒井 和幸
熊谷 大慧
阿部 五月
渡邉 洋輔
山田 直也
古川 英光
藤本 拓
南 絵里菜
光上 義朗
足立 芳史
- 出版者
- 公益社団法人 高分子学会
- 雑誌
- 高分子論文集 (ISSN:03862186)
- 巻号頁・発行日
- vol.73, no.6, pp.539-546, 2016-11-25 (Released:2016-11-25)
- 参考文献数
- 10
- 被引用文献数
-
1
走査型顕微光散乱装置(Scanning Microscopic Light Scattering:通称SMILS)によって,代表的な吸水性高分子ゲルであるポリアクリル酸ナトリウム(PSA)ゲル,PSAゲルを酸型にしたポリアクリル酸(PAA)ゲルの内部構造評価を行った.SMILSによって得られる動的ゆらぎの緩和時間分布関数を基準に膨潤率・ヤング率を併用し,ゲルの内部構造を評価した.とくに,動的ゆらぎから得られるスケールをFluctuation Size (FS)とし,FSから算出される架橋密度(νS),膨潤率から算出される架橋密度(νW),ヤング率から算出される架橋密度(νY)を比較することにより,総合的にゲル内部の網目構造を評価した.PSAゲルにおいては,νW ,νY に対してνSは非常に大きな値となったため,SMILSで測定されるFSの値はゲルの網目サイズを直接示唆していない可能性がわかった.さらに,PSAゲルではνY>νWとなり,さらに,被吸収液の塩濃度が低くなるにつれてその差が大きくなることから,ネットワーク主鎖上のイオン基どうしの静電反発が増えるほど主鎖の剛直性が増していることが明らかになった.また,それに伴ってνSが増大する事から,今回の動的光散乱測定においてもネットワーク主鎖の剛直性がνSに影響を及ぼしていることが推察された.そのため,PSAゲルの内部構造を動的光散乱によって解析する場合には,FSの減少を考慮した適切な補正手法が必要になることが判明した.