著者
竹村 博一 永田 基樹 井上 俊哉 湯川 尚哉 藤澤 琢郎 阪上 智史 友田 幸一
出版者
JAPAN SOCIETY FOR HEAD AND NECK SURGERY
雑誌
頭頸部外科 = Journal of Japan Society for Head and Neck Surgery (ISSN:1349581X)
巻号頁・発行日
vol.19, no.2, pp.125-129, 2009-10-30
参考文献数
11
被引用文献数
2

症例は33歳男性,ロケット花火が口腔内で爆発し受傷,頸部腫張を自覚し近医受診,頸部皮下気腫,縦隔気腫,咽頭熱傷の診断にて救急搬送された。当初呼吸状態も安定していたため保存的に治療を行っていたが,左側下咽頭側壁から後壁にかけての粘膜の浮腫が著明となり,また壊死が加わり,進行した。画像診断では,咽頭後間隙を中心とした深頸部膿瘍の形成が認められ,さらに縦隔内にまで進展していることが指摘されたため,頸部外切開によるドレナージを行ったところ,花火の爆発片を咽頭後間隙内に認めたため,これを除去した上,周囲の壊死組織の切除,咽頭裂傷部の縫合と共に,縦隔及び胸腔ドレナージを行った。術後,局所処置,抗生剤投与を継続して行い,改善した。<br>本症例は救命し得たが,開胸による縦隔ドレナージを要する結果となり,受傷当日の頸部外切開等の早期対応が必要な症例であったと考えられた。
著者
立川 拓也 熊澤 博文 京本 良一 湯川 尚哉 山下 敏夫 西川 光重
出版者
The Oto-Rhino-Laryngological Society of Japan, Inc.
雑誌
日本耳鼻咽喉科学会会報 (ISSN:00306622)
巻号頁・発行日
vol.104, no.2, pp.157-164, 2001-02-20 (Released:2010-10-22)
参考文献数
21
被引用文献数
4 8

1984年から1998年の15年間に関西医科大学耳鼻咽喉科において手術を施行した甲状腺分化癌を対象に統計学的観察と予後因子の検討を行った.対象症例は乳頭癌177症例, 瀘胞癌50症例, 男性45名, 女性182名, 年齢は13歳から89歳であった.年度別症例数から甲状腺腫瘍症例の増加, 特に乳頭癌の増加が確認された. 一方瀘胞癌の症例数の増加傾向は見られなかった.年齢分布として乳頭癌は40代から60代にpeakを認め, 瀘胞癌は50代にpeakが認められた.原発巣切除に関して, 乳頭癌はT因子が大きくなるにつれ, より広い原発巣切除が行われていたが, 瀘胞癌は術前, 術中に確定診断がつきにくいためか, 峡葉切除術が大部分 (70%) を占めていた.リンパ節郭清に関して, 乳頭癌症例はTが大きくなるに従い, より広い範囲の郭清術が施行されていた. 一方瀘胞癌症例は原発巣切除と同様確定診断がつきにくいためか, リンパ節郭清は70%がD1領域郭清であった.局所再発が22症例, 遠隔転移が6例に認められた. 局所再発22症例中手術で14例がsalvageできた.死亡症例は17症例に認められ, 乳頭癌12症例 (原病死は11症例), 瀘胞癌5症例 (原病死は2症例) であった. 原病死13症例の中でT4症例が10例, T3症例が3例, Nla症例が3例, Nlb症例が8例を占めていた. 死亡症例に関してはやはり進行症例が多かった.予後因子としてT, N, M, 年齢, 性別を対象として検討した. 乳頭癌の予後因子は被膜外浸潤, 遠隔転移, 年齢であり, 瀘胞癌の予後因子は遠隔転移であった.乳頭癌の5年生存率は93.0%, 10年生存率は88.8%であった. また瀘胞癌の5年, 10年生存率は93.5%であった.今回は分子生物学的検討, 癌遺伝子の検討は行わなかったが, T1N0乳頭癌症例で頸部再発を認めたことから今後はこれらの検討も必要と考えられる.