著者
西川 光重
出版者
一般社団法人 日本内科学会
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.99, no.4, pp.776-785, 2010 (Released:2013-04-10)
参考文献数
22
被引用文献数
1 1

種々の領域で使用される多くの薬剤が甲状腺機能異常を起こしうる.永続性のBasedow病タイプの甲状腺中毒症には抗甲状腺薬を投与するが,破壊性甲状腺中毒症タイプの場合は一過性であるので通常,対症療法で経過観察する.甲状腺機能低下症は甲状腺ホルモンの合成・分泌を抑制するものと,代謝を促進したり,吸収を阻害したりするものなどがある.原因薬剤を中止するかどうかは個々の症例によるが,中止できない場合は甲状腺ホルモン製剤で治療するか,薬剤の内服方法を工夫するなどして対処する.
著者
立川 拓也 熊澤 博文 京本 良一 湯川 尚哉 山下 敏夫 西川 光重
出版者
The Oto-Rhino-Laryngological Society of Japan, Inc.
雑誌
日本耳鼻咽喉科学会会報 (ISSN:00306622)
巻号頁・発行日
vol.104, no.2, pp.157-164, 2001-02-20 (Released:2010-10-22)
参考文献数
21
被引用文献数
4 7

1984年から1998年の15年間に関西医科大学耳鼻咽喉科において手術を施行した甲状腺分化癌を対象に統計学的観察と予後因子の検討を行った.対象症例は乳頭癌177症例, 瀘胞癌50症例, 男性45名, 女性182名, 年齢は13歳から89歳であった.年度別症例数から甲状腺腫瘍症例の増加, 特に乳頭癌の増加が確認された. 一方瀘胞癌の症例数の増加傾向は見られなかった.年齢分布として乳頭癌は40代から60代にpeakを認め, 瀘胞癌は50代にpeakが認められた.原発巣切除に関して, 乳頭癌はT因子が大きくなるにつれ, より広い原発巣切除が行われていたが, 瀘胞癌は術前, 術中に確定診断がつきにくいためか, 峡葉切除術が大部分 (70%) を占めていた.リンパ節郭清に関して, 乳頭癌症例はTが大きくなるに従い, より広い範囲の郭清術が施行されていた. 一方瀘胞癌症例は原発巣切除と同様確定診断がつきにくいためか, リンパ節郭清は70%がD1領域郭清であった.局所再発が22症例, 遠隔転移が6例に認められた. 局所再発22症例中手術で14例がsalvageできた.死亡症例は17症例に認められ, 乳頭癌12症例 (原病死は11症例), 瀘胞癌5症例 (原病死は2症例) であった. 原病死13症例の中でT4症例が10例, T3症例が3例, Nla症例が3例, Nlb症例が8例を占めていた. 死亡症例に関してはやはり進行症例が多かった.予後因子としてT, N, M, 年齢, 性別を対象として検討した. 乳頭癌の予後因子は被膜外浸潤, 遠隔転移, 年齢であり, 瀘胞癌の予後因子は遠隔転移であった.乳頭癌の5年生存率は93.0%, 10年生存率は88.8%であった. また瀘胞癌の5年, 10年生存率は93.5%であった.今回は分子生物学的検討, 癌遺伝子の検討は行わなかったが, T1N0乳頭癌症例で頸部再発を認めたことから今後はこれらの検討も必要と考えられる.
著者
大石 まり子 西川 光重 蔵田 駿一郎 稲田 満夫
出版者
一般社団法人 日本糖尿病学会
雑誌
糖尿病 (ISSN:0021437X)
巻号頁・発行日
vol.21, no.8, pp.733-742, 1978-08-30 (Released:2011-08-10)
参考文献数
20

歳以下で発症した若年発症糖尿病患者36例および30歳以上で発症した成人発症糖尿病患者255例で, 先ず, 注意深い前頸部の触診により, 甲状腺腫の有無を検査した.若年発症群で4例 (11.1%), 成人発症群で35例 (13.7%) にび漫性甲状腺腫をみとめた.成人発症糖尿病で, 甲状腺腫を有するものは, 30歳および40歳台の女性に多い傾向を有し, また, 甲状腺腫を有する群で, 血中抗甲状腺抗体, とくに, マイクロゾーム試験の陽性率が34.3%と極めて高率であった.さらに, 甲状腺針生検, あるいは, 抗甲状腺抗体陽性の所見より, 橋本病と診断されたものは, 37.1%以上あり, それは成人発症群の5.1%以上で, 成人発症糖尿病の抗体陽性率にほぼ一致した。一方, 甲状腺腫を有しない群の抗体陽性率は, 従来より報告されている健康人のそれと大差はなかった.かくして, 成人発症糖尿病での抗甲状腺抗体の出現は, 主として, 橋本病の合併によると推定された.若年発症糖尿病で, 甲状腺腫を有する4症例は, 甲状腺針生検により, 橋本病と診断された.したがって, 若年発症群の橋本病合併率は11.1%で, 従来より報告されている若年者の橋本病有病率1%以下に比し, 極めて高いと考えられた.ここで, 橋本病を合併した4症例を詳細に検討すると, インスリン依存性の比較的重症のものが多く, 全例でマイクロゾーム試験が陽性, しかも, 高抗体価であり, 家族歴が比較的濃厚等の特殊性がみられた.