著者
堀内 昭作 湯田 英二 中川 昌一 森本 純平 我藤 雄
出版者
THE JAPANESE SOCIETY FOR HORTICULTURAL SCIENCE
雑誌
園芸学会雑誌 (ISSN:00137626)
巻号頁・発行日
vol.59, no.2, pp.225-235, 1990 (Released:2007-07-05)
参考文献数
10
被引用文献数
3 2

‘ハヤシ系ウンシュウ’に‘セキトウユ’, ‘バレンシアオレンジ’, ‘ダンカン’グレープフルーツ, ポンカン, ‘セミノール’の5種•品種を交配し, 得られた種子の形状の差異により, 発芽可能な受精胚を含む種子を識別する方法を確立した.受精胚を含む種子の形状の特徴は, 扁平で凸凹が少なく, 比較的大きく充実していた. 胚の特徴は1種子内に1~数個存在しており, 種皮の縫線と2枚の子葉の合一する線とが一致し, 珠心胚の子葉とは異なる色を呈するものが多い, などである.どの五つの交配組み合わせにおいても, この特徴を持つ種子が存在した. また, 胚数には花粉親の影響が認められ, とくに, ‘セキトウユ’にその影響が強かった.これらの種子より生じた実生の葉の形状を珠心胚実生の葉と比較検討したところ, 明らかな差異が認められ, 交雑実生であることが確認できた.‘バレンシア’オレンジを母本に同様に5種•品種を交配した場合には, この特徴を持つ種子は出現しなかった.さらに, 32種•品種の自然受粉した種子について, 同様の特徴のある単胚種子の出現を調査したところ, 種•品種により大きな差異が認められたので, これらの品種をA型(単胚率10%以上), B型(単胚率0~10%), C型(単胚率0%)の3型に分類した.AおよびB型の種•品種は, 本研究で開発した種子の形状による受精胚を含む種子の選抜法を利用すれば母本として育種親に用いることが可能である.ウンシュウミカンを母本に用いた本実験では, この方法を用いることにより, 5交配組み合わせの種子662個から119個の交雑実生を得ることができた.
著者
勝見 允行 山根 久和 近内 誠登 湯田 英二 佐野 浩 倉石 晉
出版者
国際基督教大学
雑誌
特定研究
巻号頁・発行日
1987

矮性問題:山根はインゲンの矮性(マスターピース)及びキュウリの矮性(スペースマスター)とそれぞれの高性種との間で内生GA量に差がないことをみつけた. インゲンではGA感受性の低いことが, キュウリでは加齢の早いことが矮性の原因であると推定された. 倉石はオオムギ幼葉鞘でのオーキシン合成はL-Tryからラセマーゼ・D-Tryアミノトランスフェラーゼの反応経路で行われると推定し, 矮性uguは後者の活性か低いためオーキシン生産が少ないという知見を得た. 勝見はGA感受性, 高GA生産性矮性トウモロコシD_8の中胚軸の細胞膜微小管の配向を顕微蛍光抗体法で観察し, 表皮細胞では高性株との間に配向パターンの差は見られないこと, しかしD_8の皮層では, 細胞伸長軸に対して直角配向をする微小管をもつ細胞が, 高性株に比べて狭い区域に限られていることみつけた. この結果はD_8がGAの受容体に関する突然変異だとする仮説と矛盾しない. 佐野は5-アザシチジン(AzaC)処理によって矮性化が誘導されること, F1でも矮性形質か残ることから, AzaC誘導の形態変化は遺伝することを示した. AzaCはシトシンのメチル化を抑えていることも確かめられた. この結果は, 矮性株のGNAはメチル化が低いという前年度の結果を支持するものである.生殖生長:湯田はビワ果実の無種子化をGA3を主体とする処理により成功した. より効果的な処理のためにはビワ固有のGAを使うことが望ましいと考え, ビワ幼果から抽出を行ない, 3つの新GAを発見した. ビワの生理活性GAはGA_<34>と推定される. 近内はブラシノステロイドによる作物の子実の増収を検討した. 開花初期における処理は, コムギ, ナタネ, ダイズで増収効果があった. またトウモロコシの花粉の発芽率も高まった. 桂はサトイモの地上部からGA_<24>を単離同定した. 花芽誘導に関与するGAを検討中である.