著者
間合 絵里 滝澤 理仁 池田 知司 中﨑 鉄也 土井 元章 北島 宣
出版者
一般社団法人 園芸学会
雑誌
園芸学研究 (ISSN:13472658)
巻号頁・発行日
vol.22, no.1, pp.19-26, 2023 (Released:2023-03-31)
参考文献数
13

本研究では,光透過性を有する有機薄膜型太陽電池(OPV)の設置がトマトの生育と果実生産に及ぼす影響を明らかにすることを目的とし,OPVを設置した温室(OPV温室)と設置していない温室(対照温室)でトマトの果実の収量と品質,植物体の生育量および光合成関連形質を調査した.調査は秋冬栽培と春夏栽培で実施し,秋冬栽培では86台,春夏栽培では106台のOPVパネルをそれぞれOPV温室内側に設置した.秋冬栽培と春夏栽培の両方でOPV温室内の日射量は対照温室に比べ減少した.両栽培において収量では対照温室とOPV温室の間に有意な差は認められなかったものの,OPV温室の果実乾物重は日射量の少ない秋冬栽培で対照温室に比べ23%減少した.また,秋冬栽培と春夏栽培で両温室の植物体の生育量と光合成関連形質を調査した結果,光合成関連形質は両栽培においてOPV温室でほぼ同様に低下したのに対し,植物体の生育量は果実乾物重と同様に秋冬栽培で大きく減少した.これらの結果より,OPVパネルの設置が果実乾物重と植物体に及ぼす影響は特に日射量の少ない時期で大きくなることが明らかとなった.また,本研究に用いたOPVパネルの性能では,OPVパネルの設置は収入を減少させ,特に秋冬栽培で大きな減収となった.これらの結果から,OPVパネルを用いたトマト栽培のソーラーシェアリングでは,日射量の少ない時期はパネルをはずし,日射量の多い時期にパネルを設置することが有効であると考えられた.
著者
小枝 壮太 佐藤 恒亮 富 研一 田中 義行 滝澤 理仁 細川 宗孝 土井 元章 中崎 鉄也 北島 宣
出版者
一般社団法人 園芸学会
雑誌
Journal of the Japanese Society for Horticultural Science (ISSN:18823351)
巻号頁・発行日
vol.83, no.3, pp.244-251, 2014
被引用文献数
19

カリブ海在来のトウガラシ'No.80'は果実の持つ非辛味性および強い芳香性の観点から,果菜類としての非辛味芳香性トウガラシ品種の育種において有望な素材である.本研究では'No.80'の非辛味性,揮発性香り成分および品種の来歴を,同様に非辛味性であるが芳香性の弱いブラジル在来の'No.2'との比較のもと解析した.両品種において <i>acyltransferase</i>(<i>Pun1</i>)の発現およびタンパク質の推定アミノ酸配列は辛味品種'Habanero'と比較して異常が認められなかった.一方,'No.80'および'No.2'の <i>putative aminotransferase</i>(<i>p-AMT</i>)コード領域には,それぞれフレームシフト変異を引き起こす 7 塩基および 8 塩基の挿入が認められた.'Habanero'と'No.80'あるいは'No.2'との交雑後代 F<sub>1</sub> および F<sub>2</sub> における非辛味性と塩基配列の挿入が連鎖したことから,両品種の非辛味性は独立して生じた <i>p-AMT</i> の変異に起因すると考えられた.さらに,両品種の分子系統解析を行ったところ,ブラジル在来の'No.2'と遺伝的に非常に近縁な関係にある'No.80'は,南米大陸に起源を持ち,カリブ海に持ち込まれたことが示唆された.芳香性の強い'No.80',芳香性の弱い'No.2'およびその交雑後代 F<sub>1</sub> の果実における揮発性香り成分を同定・定量した.'No.80'は芳香性に寄与する成分を'No.2'と比較して多量に発散していた.さらに,交雑後代 F<sub>1</sub> は揮発性香り成分の多くを中間あるいは両親以上に発散していた.以上の結果を踏まえて,本研究では多様な非辛味芳香性トウガラシ品種の育種に向けた今後の可能性について考察した.