著者
小枝 壮太 佐藤 恒亮 富 研一 田中 義行 滝澤 理仁 細川 宗孝 土井 元章 中崎 鉄也 北島 宣
出版者
一般社団法人 園芸学会
雑誌
Journal of the Japanese Society for Horticultural Science (ISSN:18823351)
巻号頁・発行日
vol.83, no.3, pp.244-251, 2014
被引用文献数
19

カリブ海在来のトウガラシ'No.80'は果実の持つ非辛味性および強い芳香性の観点から,果菜類としての非辛味芳香性トウガラシ品種の育種において有望な素材である.本研究では'No.80'の非辛味性,揮発性香り成分および品種の来歴を,同様に非辛味性であるが芳香性の弱いブラジル在来の'No.2'との比較のもと解析した.両品種において <i>acyltransferase</i>(<i>Pun1</i>)の発現およびタンパク質の推定アミノ酸配列は辛味品種'Habanero'と比較して異常が認められなかった.一方,'No.80'および'No.2'の <i>putative aminotransferase</i>(<i>p-AMT</i>)コード領域には,それぞれフレームシフト変異を引き起こす 7 塩基および 8 塩基の挿入が認められた.'Habanero'と'No.80'あるいは'No.2'との交雑後代 F<sub>1</sub> および F<sub>2</sub> における非辛味性と塩基配列の挿入が連鎖したことから,両品種の非辛味性は独立して生じた <i>p-AMT</i> の変異に起因すると考えられた.さらに,両品種の分子系統解析を行ったところ,ブラジル在来の'No.2'と遺伝的に非常に近縁な関係にある'No.80'は,南米大陸に起源を持ち,カリブ海に持ち込まれたことが示唆された.芳香性の強い'No.80',芳香性の弱い'No.2'およびその交雑後代 F<sub>1</sub> の果実における揮発性香り成分を同定・定量した.'No.80'は芳香性に寄与する成分を'No.2'と比較して多量に発散していた.さらに,交雑後代 F<sub>1</sub> は揮発性香り成分の多くを中間あるいは両親以上に発散していた.以上の結果を踏まえて,本研究では多様な非辛味芳香性トウガラシ品種の育種に向けた今後の可能性について考察した.
著者
中路 富士夫 吉富 研一 山本 栄
出版者
日本作物学会
雑誌
日本作物学会九州支部会報 (ISSN:02853507)
巻号頁・発行日
no.19, pp.3-6, 1962-11-01
被引用文献数
3

昭和36年産の水稲は当初好天に恵まれ豊作型の生育相を示していた。9月16日第2室戸台風が来襲したが,本県では風速も比較的おそく,従って当初は水稲には大した影響はなかったかに感じられたが,日時の経過につれて損傷があらわれ,過去に事例のない様相で大きな被害をあたえ,連続4年豊作の夢はむなしくやぶれ去った。なかでも潮風をまともにうけた玄海沿岸地帯は被害甚大で,収穫皆無あるいはこれに近い被害を受けたところがかなりみられた。又海岸線から遠くはなれた佐賀北部及び東部山麓にも潮風がふきこみ相当な被害をこうむった。その上品質の低下が著しく農家経済にあたえた打撃は大きかった。筆者らは佐賀農試内で行なっている気象感応試験圃場において台風にともなう被害程度を推定するため,防風極を用いて台風被害回避試験を実施したので,その結果の概要を報告する。