著者
坂手 誠治 澤井 睦美 南 和広 寄本 明 星 秋夫
出版者
日本生気象学会
雑誌
日本生気象学会雑誌 (ISSN:03891313)
巻号頁・発行日
vol.49, no.4, pp.157-163, 2013 (Released:2013-01-25)
参考文献数
15
被引用文献数
4

本研究の目的は,大学生の熱中症予防教育に役立てるために,我が国の大学生の熱中症の実態を明らかにすることである.調査は質問紙を用いて実施した.対象は 18 歳から 24 歳の男性 792 名,女性 439 名の 1,231 名(19.1±1.0 歳)であった.熱中症の重症度について,過去のスポーツ活動時に経験した自覚症状より I 度~III 度に判別した.重症度の判別結果は I 度 5.6%,II 度 80.4%,III 度 14.0% であった.男性は女性と比較して III 度の該当率が高かった.体育系学部の学生はそれ以外の学生に比べて III 度の該当率が低かった.熱中症に関しては,90% 以上の学生が正しく認識していた.熱中症に関して正しく認識している者は,そうでない者に比べて III 度の該当率が低かった.WBGT および日本生気象学会,日本体育協会の熱中症に関する予防指針を知っていると回答した者は,知らないと回答した者に比べて,いずれも III 度の該当率が高かった.熱中症の経験があると回答した者は,ないと回答した者に比べて III 度の該当率が高かった.しかし,熱中症の経験がないと回答した者の重症度の内訳では,III 度の該当率は 10% であった.熱中症で病院に搬送されたことがある者は,ない者に比べて III 度の経験が高く,また全員 II 度以上であった.しかし運ばれたことがないと回答した者の重症度の内訳では,III 度の該当率は 12.2% であった.以上より,大学生の熱中症に対する知識は十分ではなく,熱中症による事故を防ぐためにも,より効果的な教育を実施する必要がある.