著者
中井 誠一 新矢 博美 芳田 哲也 寄本 明 井上 芳光 森本 武利
出版者
一般社団法人日本体力医学会
雑誌
体力科学 (ISSN:0039906X)
巻号頁・発行日
vol.56, no.4, pp.437-444, 2007-08-01 (Released:2007-09-14)
参考文献数
40
被引用文献数
11 14

The guidelines for the prevention of heat disorders during sports activities were established 13 years ago in Japan. Since then, various studies on preventive measures against heat disorders have been done, yielding new knowledge about its prevention. It has been reported that the incidence of heat disorders is high in children and the elderly, and heat acclimatization and clothing are the factors involved in this disorder. We proposed to lower the WBGT (wet-bulb globe temperature) limit for warning (discontinuation of hard exercise) from “28°C or more” to “25°C or more” (corresponding to an ambient temperature of 28°C) for non-acclimatized persons, children, the elderly, and persons wearing clothes covering the entire body. We also indicated that heat disorders can occur due to unpredictable causes, because the mechanism is very complicated.
著者
坂手 誠治 澤井 睦美 南 和広 寄本 明 星 秋夫
出版者
日本生気象学会
雑誌
日本生気象学会雑誌 (ISSN:03891313)
巻号頁・発行日
vol.49, no.4, pp.157-163, 2013 (Released:2013-01-25)
参考文献数
15
被引用文献数
4

本研究の目的は,大学生の熱中症予防教育に役立てるために,我が国の大学生の熱中症の実態を明らかにすることである.調査は質問紙を用いて実施した.対象は 18 歳から 24 歳の男性 792 名,女性 439 名の 1,231 名(19.1±1.0 歳)であった.熱中症の重症度について,過去のスポーツ活動時に経験した自覚症状より I 度~III 度に判別した.重症度の判別結果は I 度 5.6%,II 度 80.4%,III 度 14.0% であった.男性は女性と比較して III 度の該当率が高かった.体育系学部の学生はそれ以外の学生に比べて III 度の該当率が低かった.熱中症に関しては,90% 以上の学生が正しく認識していた.熱中症に関して正しく認識している者は,そうでない者に比べて III 度の該当率が低かった.WBGT および日本生気象学会,日本体育協会の熱中症に関する予防指針を知っていると回答した者は,知らないと回答した者に比べて,いずれも III 度の該当率が高かった.熱中症の経験があると回答した者は,ないと回答した者に比べて III 度の該当率が高かった.しかし,熱中症の経験がないと回答した者の重症度の内訳では,III 度の該当率は 10% であった.熱中症で病院に搬送されたことがある者は,ない者に比べて III 度の経験が高く,また全員 II 度以上であった.しかし運ばれたことがないと回答した者の重症度の内訳では,III 度の該当率は 12.2% であった.以上より,大学生の熱中症に対する知識は十分ではなく,熱中症による事故を防ぐためにも,より効果的な教育を実施する必要がある.
著者
中井 誠一 寄本 明 森本 武利
出版者
日本体力医学会
雑誌
体力科學 (ISSN:0039906X)
巻号頁・発行日
vol.41, no.5, pp.540-547, 1992-10-01
被引用文献数
18 6

Deaths and morbidity due to heat disorders during physical activity were gleaned from newspaper reports between 1970 and 1990. The environmental temperatures (dry-bulb temperature and relative humidity) recorded at the closest meteorological observatory at the time of occunence were used to calculate the wet-bulb temperature and WBGT (wet-bulb globe temperature), and the relationship between heat disorders and environmental temperature was analyzed. During the 21-year period, 108cases of heat disorders (91 deaths and 477 casualties) were reported in newspapers. Of the 91 deaths, 9 were in females and 82 were in males, and meanages were 23.3years, females and 19.0 years, males. It was possible to record the environmental conditions at the time of the heat disorder in 99 cases. The results indicated that almost all disorders occurred at ranges higher than 25.5℃, dry-bulb temperature, and 20.0℃, wet-bulb temperature, 40% relative humidity, and 24.0℃, WBGT. The mean WBGT was 28℃ at physiological intensities less than 12-RMR (Relative Metabolic Rate) and 25.8℃ at RMR higher than 15. The seasonal distribution was from April to November. In cases observed in April, May and November, abrupt rises in WBGT in the 1.2〜3.4℃ range were observed on the day of occurrence in comparison with the previous day, suggesting that the degree of heat acclimatization is olso an important factor in preventing heat disorders.
著者
中井 誠一 新矢 博美 芳田 哲也 寄本 明 井上 芳光 森本 武利
出版者
日本体力医学会
雑誌
体力科學 (ISSN:0039906X)
巻号頁・発行日
vol.56, no.4, pp.437-444, 2007-08-01
被引用文献数
8 14

従来の運動指針では,WBGT 28℃が厳重警戒(激しい運動は中止)としており,日常生活を含めた予防指針の基準となると考えられる.従って,高温への順化不足,子どもと高齢者および着衣条件について1段階下げる厳しい基準とした.市民マラソンでは1段階下げた基準としていることも参考とした.今回提案する予防指針は,暑熱順化,年齢,着衣条件が伴う場合はWBGT 25℃以上を厳重警戒とする.日本体育協会によるスポーツ活動時の熱中症予防指針を基準にTable 1に示した.熱中症の発生要因はきわめて複雑であり,思わぬ事態で発生があるのも忘れてはならない.また厳しい基準であるので,日常生活も含め積極的に運動を実施する場合の妨げになることが考えられるが,予防対策を十分に取ることにより解消出来ると考えられる.また,初期症状を見逃さないで早期発見による対応が望まれる.また積極的に屋外での活動を日常生活に取り人れることで早期に暑熱順化を獲得することが必要である.
著者
新矢 博美 芳田 哲也 寄本 明 中井 誠一
出版者
京都女子大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2009

年齢階級を考慮した1日の水分摂取基準を算定することを目的として、乳児・幼児や児童および高齢者を対象に体重計測により1日の水分摂取量や発汗と不感蒸泄による水分損失量(ΣS)を夏季および冬季に測定して、若年成人の値と比較した。1日のΣSは環境温度や活動量の上昇に伴い増加したが、高齢者は成人と同様で、児童、乳児、幼児は若年成人に比べて、それぞれ1. 1倍、1. 9倍、2. 0倍であった。これらの倍率を用いることにより、年齢階級を考慮した水分摂取基準を算定することが可能と考えられた。
著者
中井 誠一 星 秋夫 寄本 明 新矢 博美 芳田 哲也
出版者
京都女子大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2008

わが国の運動時熱中症予防指針は発表以来18年を経るに至り,様々な研究成果が積み上げられ,熱中症予防に関する新たな知見が得られたと考えられる。熱中症発生実態では子どもと高齢者に多いこと,暑熱順化や着衣条件が関係することが発生要因として指摘された。そこで,WBGT28℃以上を厳重注意(激しい運動は中止)とし,暑熱順化不足,子どもと高齢者および全身を覆う着衣の場合については従来の基準1 段階下げるWBGT25℃以上(気温では28℃以上)を厳重注意とすることを提案した。
著者
芳田 哲也 中井 誠一 新矢 博美 寄本 明
出版者
京都工芸繊維大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2007

体重計測より測定した成人男女における水分出納の結果について, 季節(環境温度)別に発汗と不感蒸泄による水分損失量(ΣS)と身体活動量(エネルギ消費量)との相関を求めた.この回帰式からに季節別・身体活動レベル別にΣSを算出し, さらに排便・排尿による水分損失量(ΣU)を加えて身体活動レベル毎の水分摂取基準を季節別に示した. また生活現場応用を目的として, 冬季の身体活動レベルが低い(I)時のΣSを基準として, その差分を季節・身体活動レベル別に求めた. その結果, 標準体重を有する普通の活動レベル(II)である日本人では, 冬季の低い活動レベル(I)に比べて夏季では男性1.1kg, 女性0.9kg程度多く水分を摂取する等, 現代日本人(成人男女)における具体的な水分摂取基準を作成・提示できた。