著者
澤岡 詩野
出版者
一般社団法人 社会情報学会
雑誌
社会情報学 (ISSN:21872775)
巻号頁・発行日
vol.10, no.3, pp.1-11, 2022-03-31 (Released:2022-04-20)
参考文献数
24

2020年4月に発出された1回目の緊急事態宣言以来,接触の機会が制限される生活が一年以上も続いている。特に社会関係が元の職場や学生時代を介したつきあいに限定されがちな都市部の高齢男性においては,遠方に住むことの多い他者たちと会う機会が失われた結果,高齢女性よりも深刻な影響を受けていることが予測される。本稿では,都市部の企業退職した高齢男性を対象に,社会生活のなかでのインターネット受容プロセスを明らかにしていく。調査対象は,新型コロナウィルスの感染拡大前からインターネットを使ってきた,東京都と神奈川県在住の70代前半~80代後半の企業退職した男性8人である。2020年6月25日~7月8日に,半構造化インタビューを行った。研究協力者は,コロナ禍の生活が長期化するなかで,【インターネットの限界】や直接に顔をあわせることの良さを再確認しつつも,インターネット上の【使い慣れた手段の掘り起こし】や【新しい手段を試行錯誤】して集いを代替しょうとする動きが加速していた。ただし,社会生活の全てを一つの手段で代替していたわけではなく,【課題に応じた手段の取捨選択】が行われていた。コロナ禍を通じ,交流や社会活動の手段としてのインターネットの可能性に気付いた高齢者は少なくないことが考えられる。今後は,使い方の多様性やこれらの変化を前提にした孤立化の抑止や働きかけのあり方を考えていくことが求められている。
著者
植田 拓也 倉岡 正高 清野 諭 小林 江里香 服部 真治 澤岡 詩野 野藤 悠 本川 佳子 野中 久美子 村山 洋史 藤原 佳典
出版者
日本公衆衛生学会
雑誌
日本公衆衛生雑誌 (ISSN:05461766)
巻号頁・発行日
vol.69, no.7, pp.497-504, 2022-07-15 (Released:2022-07-13)
参考文献数
13

抄録 一般介護予防施策としての「地域づくりによる介護予防」において「通いの場」への支援は自治体にとって主要事業の一つである。「通いの場」の多様性が求められる一方で,行政が把握し,支援・連携すべき「通いの場」の概念や類型は明確ではない。そこで,東京都健康長寿医療センター研究所(東京都介護予防・フレイル予防推進支援センター)と東京都は「通いの場」の概念整理検討委員会を設置し,東京都内62自治体が,一般介護予防施策のPDCAサイクルに沿って「通いの場」を把握し展開する際の目安として概念および主目的による類型を提示した。 「通いの場」の類型は,3つのタイプ(タイプⅠ:趣味活動,他者と一緒に取り組む就労的活動,ボランティア活動の場等の「共通の生きがい・楽しみを主目的」,タイプⅡ:住民組織が運営するサロン,老人クラブ等の「交流(孤立予防)を主目的」,タイプⅢ:住民組織が運営する体操グループ活動等の「心身機能の維持・向上等を主目的」)に分類した。この類型に基づき,地域資源としての「通いの場」を把握することにより,市区町村・生活圏域単位での地域のニーズと照らし合わせた戦略的かつ系統的な「通いの場」づくりの一助となると考えられる。