- 著者
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濱田 有香
- 出版者
- 東京工業大学
- 雑誌
- 特別研究員奨励費
- 巻号頁・発行日
- 2015-04-24
平成28年度は2つの研究を行った.研究1では,咀嚼および味覚に伴う口腔刺激が食事誘発性体熱産生(DIT)に与える影響を検討した.実験は2015年度に行い,データ解析を2016年度に行った.普通体重の健常成人男性に,200 mL(200 kcal)の飲料を一口20mLに分け,3通りの飲み方で5分間かけて摂取させた.すなわち,①対照試行:30秒毎に一気に嚥下する試行,②味覚試行:30秒間口に含んでから嚥下する試行(対照試行に味覚刺激が加わる),③咀嚼試行:1秒に1回の頻度で30秒間咀嚼してから嚥下する試行(対照試行に咀嚼と味覚の刺激が加わる)を行わせた.ガス分析装置にて酸素摂取量を食後90分まで測定し,食後90分間の累計のDITを算出した.味覚試行の累計のDITは対照試行と比べて有意に増大し,咀嚼試行の累計のDITはさらに増大した.咀嚼および味覚の両方の口腔刺激によって,DITが増大することが明らかになった.研究2では,食べる速さが食後長時間にわたるDITに及ぼす影響について検討した.実験は2016年度に行った.普通体重の健常成人男性に,734 kcalの食事(スパゲティ,ヨーグルト,オレンジジュース)をできるだけ速く(早食い試行)あるいはできるだけゆっくりよく噛んで(遅食い試行)摂取させた.ガス分析装置にて酸素摂取量を食後7時間まで測定した.遅食い試行のDITは早食い試行よりも食後2時間まで有意に増大した.食後7時間まで早食い試行と遅食い試行のDITの応答は逆転しないことが確認された.食後7時間の累計のDITは早食い試行よりも遅食い試行の方が有意に増大した.研究2の知見は,ゆっくりよく噛んで食べることが肥満を予防するよい習慣であることの裏づけとなろう.研究実施計画のとおりにおおむね順調に実施できた.今後,研究1および研究2について論文を執筆し,学術ジャーナルに投稿する。